木々の葉が落ちて見通しがよい冬の野山は野鳥の観察に適している。長野県安曇野市の犀川流域ではコハクチョウやカモ類の群れが越冬している。松本市の里山ではシジュウカラやヤマガラなどが過ごしている。いずれも食べ物が乏しい冬を越すのに懸命だ。
「アルプス白鳥の会」(安曇野市)によると、犀川流域で越冬するコハクチョウの数は2月初め時点で170羽前後と、例年よりかなり少ない。会田仁代表(75)は「日本海側の新潟や山形で餌が得られるようで、安曇野まで南下する群れが少ない」と話す。
それでも、姿が優美なコハクチョウの群れがいるだけで水辺は華やぎ、観察に訪れる人を喜ばせている。越冬地では白鳥の会が給餌をしており、マガモやオナガガモなどのカモ類もおこぼれにあずかろうと集まる。
松本市の里山にあるアルプス公園は遊歩道が整備され、カメラや双眼鏡を持つ愛鳥家が訪れる。「ルリビタキがいましたよ」などと情報交換しながら探鳥を楽しんでいる。
公園で多いのは通年で生息する留鳥のシジュウカラやヤマガラで、木の実などの食べ物を探す場面が見られる。ルリビタキは季節的な移動をする小鳥で、夏は高い山で繁殖し、冬は低地で過ごす。雄は頭部や背中の青い羽毛が美しく、愛鳥家の人気が高い。
冬枯れの野山や水辺でたくましく生きる鳥たち。無事に冬を越すと、コハクチョウやカモ類は北へ帰り、多くの野鳥が春には繁殖期を迎える。【武田博仁】