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原子力規制委の屋内退避見直し案、5県が「懸念」 立地道県アンケ

毎日新聞 2025年2月5日 14時30分

 原子力規制委員会の検討チームによる、原発事故時に5~30キロ圏内の住民が建物内にとどまる「屋内退避」のあり方を見直す案について、原発が立地する5県が、原発事故と自然災害が同時に起きる「複合災害」への備えが不十分などとして懸念を示していることが、毎日新聞のアンケート調査でわかった。

 能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)が被災したが、道路が寸断され建物が倒壊するなど、屋内退避が困難になる問題が浮上した。自治体内で懸念が払拭(ふっしょく)されていない現状が明らかになった。

 検討チームは5日、昨年10月に公表した「中間まとめ」をほぼ踏襲する最終的な報告書案をまとめた。住民の物資の備蓄が最低3日分あることを理由に、屋内退避する期間の目安を3日間とし、放射性物質の放出を抑えるなどの重大事故対策が奏功した場合はそれを待たずに一斉解除できる――などが柱だ。

 一方、複合災害への備えは「政府全体で備えを強化することが重要」などと言及したものの、具体的な対策は示さなかった。

 毎日新聞は今年1月、原発が立地する13道県に、検討チームの中間まとめに対する評価をアンケート調査し、屋内退避の期間や複合災害への対応について聞いた。

 その結果、青森、宮城の2県が、複合災害への備えに疑問を示した。青森県は「自然災害を前提とした議論について今後検討してほしい」と要望した。

 屋内退避を3日間に限っていることについては、宮城▽茨城▽静岡▽島根の4県が意見を寄せた。島根県は「備蓄による3日間の目安にとらわれずに屋内退避が必要な期間継続できるよう、国として物資の調達や供給、人的な支援が必要」と、国による支援を求めた。

 検討チームは、重大事故対策が奏功すれば被ばく線量がどの程度低減されるかを調べるシミュレーションをして、屋内退避の範囲を30キロ圏から縮小できるか検討した。

 実際に被ばく線量が従来より小さくなるという結果が出たが、「事故の進展を予測することは困難」と判断してシミュレーションの活用を見送り、範囲を30キロ圏全域のままにした経緯がある。

 このシミュレーションについて尋ねたところ、静岡県が「住民の負担を早く軽減する情報として活用したいが、丁寧な説明が必要」と回答。新潟県は「回答を控える」としたが、その後の取材に「住民への説明に活用する」と答えた。

 福井県は、屋内退避の範囲を30キロ圏全域のままとしたことに「(事故予測の)判断が困難と性急に結論付けず、議論を続けてほしい」と回答した。検討チームと一部の自治体に、活用を巡る温度差があることも浮き彫りになった。【木許はるみ】

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