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災害時にペットと避難 能登入りもした団体代表に聞く現状と備え

毎日新聞 2025年2月6日 8時15分

 毎年のように国内各地で起きる災害。いざという時、家族同然に暮らすイヌやネコなどのペットと避難したいと願う人は少なくない。「ペットの命を助けることは人の命を助けること」と話す市民団体「災害時ペット捜索・救助チームうーにゃん」代表のうささん(57)に現状と課題を聞いた。

 ――2024年元日の能登半島地震でも現地に行きましたね。

 ◆地震で家屋が倒壊するとペットが逃げてしまうので時間との勝負なんです。1月2日に千葉を出てSNS(ネット交流サービス)で「今、能登に向かいますので救助や捜索を必要とする人は連絡ください」と発信すると、メールや電話が次々と来ました。最初は全壊の家からイヌを救出。ネコは人がいると出て来ないので、エサ入りの捕獲器を使います。80件ほどの依頼があり、うち4分の3は見つかりました。

 ――チームを作ったきっかけは?

 ◆東日本大震災の時にペットを失った被災者の心の傷を少しでも癒やせたらと、絵本作家として犠牲になったペットの絵をプレゼントする活動をしました。それらの絵を集めて「災害で消えた小さな命展」として全国を巡回しました。一方でペットを受け入れない避難所がある状況を知り、16年の熊本地震では、ペットや飼い主を助けるために現地へ行きました。そこで、同じ思いを持つ人たちと「チームうーにゃん」を結成しました。

 ――飼い主とペットが共に過ごす「同室避難」を訴えています。

 ◆東日本大震災では避難所に連れて行けなかったペットが野生化するなどの問題が起き、国は飼い主が避難所までペットを連れてくる「同行避難」や、同じ避難所で生活する「同伴避難」を推進しています。でも同じスペースに入れないため、ペットも飼い主も不安やストレスがたまります。それは(ペットと一緒の避難者の)動線をはっきりさせることで解決できます。大きな避難所なら部屋を分けるだけでいいので、普段から防災訓練の中に取り入れてほしい。動物アレルギーの人も安心できます。

 ――「人命優先」という声も聞きます。

 ◆避難所に行かなければ、物資は行き渡らず、壊れかかった自宅や屋外などで過ごす人が増えます。東日本や能登などの震災では、避難所にたどり着いても「人命優先」と言われ、自宅に戻って津波や家屋の倒壊、火災で亡くなった人もいます。同室避難をしていれば助かっていた命です。

 ――普段から、飼い主が備えておくことは?

 ◆避難所の場所や持ち物の確認、寄生虫の駆除、混合ワクチンや狂犬病予防の接種、はぐれた時のためのマイクロチップの装着も大切です。そして、普段から同室避難できる場所を作ってほしいと声を上げること。その街に住む人たちの声が一番強いですから。【石塚孝志】

うささん

 本名、田中麻紀。愛知県犬山市出身。絵本作家、劇作家、演出家、劇団代表などの活動を総称して創作家と名乗り、国内外で活躍。災害時に限らず動物たちの保護活動をしている。

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