2024年に警察が認知した特殊詐欺の被害額は前年の1・6倍の721億5000万円(暫定値)に上った。統計のある04年以降で最多だった14年の565億5000万円を大幅に上回り、過去最悪となった。警察庁が6日発表した。
認知件数は前年比10・2%増の2万987件で過去3番目に多かった。被害額は3年連続で増加。認知件数は4年連続で増加した。
被害額の増加の背景には、送金の上限額を高く設定できるインターネットバンキングが使われた被害が目立つことが一因としてあげられるという。
被害額が500万円以上のうち、金融機関に現金を振り込む手口では、ネットバンキング利用が7割に上った。ネットバンキングによる被害は、それ以外と比べて金額が大きく、被害額を引き上げたという。
手口別では、息子や孫になりすます「オレオレ詐欺」が前年の3・4倍の452億8000万円で6割を占めた。警察官をかたって電話し、通信アプリに誘導して「逮捕状が出ている」とうそを言い、捜査名目などで現金をだまし取るケースが急増している。
使われた電話番号のうち59%が国際電話だった。米国やカナダの国番号「1」が最初に付く番号が3万8642件と最多で、英国の「44」が1140件で続いた。国際電話の悪用は23年夏ごろから急増している。
摘発件数は前年比8・6%減の6595件で、3年ぶりに減少した。逮捕・書類送検した2320人のうち、首謀者やグループリーダーは58人(前年比9人増)。うち暴力団関係者は20人(同6人減)だった。
海外拠点については、ベトナム、フィリピン、カンボジア、タイの4カ国で10カ所を摘発し、50人を逮捕した。【山崎征克】