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子供も自由に参加 バイリンガル集団「劇団バナナ」小樽で公演へ

毎日新聞 2025年2月7日 8時15分

 日英バイリンガルで子供向けプログラムを提供している「劇団バナナ」が14、15日、小樽芸術村(北海道小樽市)の中庭で、最新作「てぶくろをかいに」を上演する。街中にキャンドルの灯がともるイベント「小樽雪あかりの路」(8~15日)に合わせた企画で、幻想的な雪景色の中で名作絵本の世界観を楽しむことができる。

 雪の降る夜、山で暮らす子ギツネが街に下り、帽子屋さんで手袋を買い求める――。そんな冬にぴったりの物語を、朗読▽コンテンポラリーダンス▽プロジェクションマッピング▽ピアノ演奏――の融合で公演する。1回20分。会場は観光客の往来も見込まれるため、日本語版、英語版のほかに韓国語版も用意している。

 劇団バナナは2012年、ニューヨーク(NY)で設立された。きっかけは、夫のNY駐在に同行していた草野七瀬さん(44)が生後9カ月の長女を育児中、楽しみにしていたブロードウェー作品を「6歳以下お断り」の年齢制限で見られなかったことにある。

 「ならば自分で!」。中高時代の演劇部、国際基督教大時代に自ら創設した宅配型ミュージカル劇団を経て、演劇とアートを愛する草野さんが、0歳から楽しめる劇作品の制作を始めた。

 旧友や現地で知り合ったアーティストら約20人の俳優陣にはバイリンガルが多く、企画に応じて、観客の母国語で上演したり、複数言語を織り交ぜたりしている。役者の本業は、ダンサー、大手IT企業、玩具メーカー、児童書出版社勤務など。16年の草野さんの帰国で日本に拠点を移してからは「楽しみながら英語が学べる」と、子育て世代から教育面でも支持を受けている。

 劇団のもう一つの特長は、子供が自由に劇に参加できる点にある。「想像力を刺激されて自発的にアクションを起こすのは、子供のすてきなところ」。そんな思いから、公演中に立ち上がったり、声を上げたりしてもオーケー。草野さんは、全12あるオリジナル作の脚本と演出を手がけているが、子供たちが最後まで飽きずに楽しめるよう、自然に劇の進行に参加できる仕掛けや、五感を使って好奇心をくすぐる趣向を凝らしている。

 今作でも、子ギツネがコインを受け取る場面で子供たちにコインが配布され、一緒にストーリーの中に入ってもらう演出がある。

 米国で多様なパフォーマンスを目にしてきた草野さん。「日本でも、(劇団四季のような)商業的な大規模劇団と、東京・下北沢に代表されるアングラ劇団の2択だけではなく、もっとキッズフレンドリーでポップでおしゃれな劇団を展開させていきたい」と話す。

 24年春、夫の転勤に伴い、東京から札幌に拠点を移した。夢は「劇団バナナのラッピングカーで全道を巡ること」。小さな村にも、子供向けの劇を届けに行きたいという。

 公演は両日とも午後5時から。観覧無料。予約不要。詳細は「劇団バナナ」のホームページで。【伊藤遥】

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