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岸田氏襲撃「誰でも逃げられると思った」 被告が事件前に爆破実験

毎日新聞 2025年2月6日 20時0分

 和歌山市で2023年4月、選挙演説に訪れた岸田文雄前首相らにパイプ爆弾を投げつけたとして、殺人未遂などの罪に問われている木村隆二被告(25)の被告人質問が6日、和歌山地裁であった。被告は事件の動機について「総理大臣のような有名人の近くで大きな音を出せば、注目が集まると思った」と述べ、「けがをさせるつもりはなかった。申し訳ない」と謝罪した。事件2日前にも岸田氏の襲撃を計画していたと明らかにした。

 被告は現行犯逮捕されて以降、一貫して黙秘を続けた。4日の初公判では「殺意はありません」と述べ、起訴内容の大半を否認。これに対し、検察側は「現職首相を狙い、周囲を無差別に巻き込んだテロ行為だ」と指摘していた。

 この日の被告人質問では事件に至った経緯などが明かされた。

 被告は高校卒業後、栄養士になろうとして調理の専門学校へ。その後は教師を目指して20年から大学の通信課程で学んでいた。勉強していくうちに子供たちの栄養不足に関心を持つようになり、政治家を目指したと語った。

 しかし、年齢制限などで22年7月の参院選に立候補できなかったことから、選挙制度に不満を持ち、国に損害賠償を求める訴訟を起こした。被告は、1審で敗訴した直後の同年12月ごろから、爆発物で岸田氏を襲撃することを考え始めたと供述。「世間の関心を集めるためには、こういうことをしないとどうしようもないと思った」と話した。

 被告が自作した爆弾は鋼管に密造した黒色火薬を詰め込み、両端をふたで閉じた構造だった。インターネットなどで製造方法を調べ、23年3月中旬に自宅近くの山林で爆破実験を行ったという。「(部品の)鉄パイプがマンションの2階ぐらいの高さに飛んだが、危険性はないと思った」と振り返った。爆発までに時間がかかるように作ったとし、「煙がたくさん出て、1分あれば誰でも逃げられると思った」と岸田氏らに危害を加えるつもりはなかったと主張した。

 被告は事件2日前の23年4月13日、大阪・関西万博の起工式に出席する岸田氏を狙うため、爆弾2個を用意し、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)近くの駅まで行ったと説明。ただ、岸田氏がどこにいるか分からなかったため襲撃を断念したという。

 その後、インターネットで岸田氏が4月15日に和歌山市を訪れることを知り、計画を実行に移したと語った。ただ、岸田氏が衆院和歌山1区補選の応援演説で訪れたことについては「知らなかった」と述べた。

 この日は弁護側の証人として被告の母親が出廷し、「大きな事件になってしまい、いろんな方にご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪した。

 起訴状によると、被告は4月15日午前11時25分ごろ、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港で、岸田氏のそばに爆弾を投げ込んで爆発させ、演説会の実施を妨害したとされる。岸田氏は逃げて無事だったが、聴衆ら2人が軽傷を負った。【藤木俊治、安西李姫】

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