イタリア・ナポリ大などの研究チームは6日、流体力学のシミュレーションを使い、「完璧な」ゆで卵の作り方を見つけたと、英科学誌ネイチャー姉妹誌に発表した。白身と黄身がバランス良く調理され、栄養価も高いゆで卵に仕上がったという。
鶏卵は、黄身の適切な調理温度が「65度」であるのに対し、白身は「85度」と異なるという。このため、沸騰した湯で調理する一般的な方法では黄身が固まりすぎる。一方、真空包装した卵を60~70度の湯に1時間つける真空調理と呼ばれる方法では、白身が固まりきらないという難点があった。
理想としては卵を割ることなく、二つの異なる領域に、それぞれ適切な温度を加える必要がある。そこで研究チームは、流体力学のシミュレーションを使い、組成の異なる黄身と白身のどちらも適度に調理された「完璧な」ゆで卵を作る方法を探った。
その結果、100度と30度の湯を用意し、2分ごとに卵を移し替え、それぞれの湯に交互に8回ずつ計32分間入れる方法が最適と分かったという。調理の間は二つの湯の温度を一定に保つ必要がある。
この手法で、黄身の温度は67度に保たれた。白身は高温の湯に入れるタイミングで87~100度になり、ほどよく固まったという。また、黄身の栄養価を調べたところ、他のゆで方に比べてポリフェノールが多く含まれていることが期待できるという。
「完璧な」ゆで卵について、研究チームは「柔らかい黄身の周りに、真空調理した卵と半熟卵の中間くらいの白身がある」と評した。
この手法は調理だけでなく、材料の熱処理によって引き起こされる硬化や結晶化、構造化を予測したり、最適な温度や時間を算出したりすることに応用できる可能性もあるという。
成果は英科学誌コミュニケーションズ・エンジニアリング(https://doi.org/10.1038/s44172-024-00334-w)に掲載された。【渡辺諒】