広島、長崎への原爆投下から80年を迎える中、「核兵器をなくす国際市民フォーラム」が8日、東京都渋谷区の聖心女子大で開かれた。ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳(てるみ)代表委員(92)は「日本政府が核兵器禁止条約に署名も批准もしていない状況を変えるため、締約国会議にせめてオブザーバーとして出て発言するという空気を盛り上げていこうと企画した。核兵器が使われたらどんな悲惨な状態が起きるか知ってほしい」と訴えた。
フォーラムは一般社団法人「核兵器をなくす日本キャンペーン」が主催。9日までの2日間に国内外の専門家ら約90人が登壇し、議論を踏まえて提言書にまとめ、3月に米ニューヨークで開かれる核禁条約の第3回締約国会議に提出する。
8日は全体会があり、田中さんは開会セッションで「被爆80年は日本だけではなく世界中の政府や国民が核兵器をなくさなくてはいけないという運動を作り上げる年にしていってほしい」とあいさつした。その後、核禁条約をどう広げていくかなどのテーマでパネル討論があった。
政府は締約国会議のオブザーバー参加を見送る方向で調整中とされ、自民党の森山裕幹事長は自民議員を派遣しない考えを示している。
第1回締約国会議で議長を務めたオーストリアの外交官、アレクサンダー・クメント氏は「核兵器のリスクは以前考えられていたより深刻だ。広島、長崎の破壊から80年を迎える今、グローバルな対話は緊急に必要」と指摘した。
その上で、核保有国などに核禁条約を広げていくためには「核兵器の安全保障上の必要性を訴える意見にも耳を傾けなければならない」とし、「より多くの国が条約に参加すべきだ。核禁条約が大事にしている価値を広げていくことが(核兵器廃絶への)圧力になる。多国間主義や国際法の重要性を改めて強調する動きが大事だ」と述べた。
9日は核軍縮を巡る国連の近年の動向や、次世代への継承などをテーマにした分科会があり、一部を除いて無料でオンライン視聴できる。詳細はウェブサイト(https://2025forum.nuclearabolitionjpn.com)に掲載している。【椋田佳代、竹内麻子、宇城昇】