第二次世界大戦末期の沖縄戦から今年で80年となるのに合わせ、ひめゆり平和祈念資料館(沖縄県糸満市)や対馬丸記念館(那覇市)など沖縄県内で戦争や平和、人権に関する資料を展示する8施設が9日、「沖縄・平和と人権博物館ネットワーク」を設立した。住民を巻き込んだ地上戦や、戦後の米国統治の圧政の経験を基に、命の尊さや人権の大切さを連携して発信する。2025年度はシンポジウムや8施設を巡るバスツアーなどを企画する。
この日は8施設の一つ、同県南風原(はえばる)町の町立南風原文化センターで初会合が開かれ、会則や事務局の設置について話し合った。丸木位里、俊夫妻が制作した大作「沖縄戦の図」を展示する佐喜眞(さきま)美術館(宜野湾市)の佐喜眞道夫館長は「沖縄県内でも佐喜眞美術館の存在を知らない人は多いので、連携して発信力を高めたい。『平和を訴えても戦争は止められない』と絶望している今の若い方たちに希望を与える取り組みにしたい」と力を込めた。
ネットワークは、ひめゆり平和祈念資料館と対馬丸記念館の呼びかけで設立した。背景には、近年の国際情勢を踏まえ、若い世代を中心に「平和を守るために軍事力を強化すべきだ」とする考え方が強まっていることへの危機感がある。
ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳(ちょうけい)館長は「軍事に頼らない平和への道筋を考えたい」とする一方で、「平和のために軍備増強が必要とする考え方を否定するのではなく、そう考えるに至った若い方の切実な危機意識にも真剣に向き合いたい」と強調する。
沖縄県もネットワークの事業を財政支援する方針で、25年度当初予算案に1062万円を計上した。
平和事業の推進や情報交換を目的にした国内の博物館ネットワークとしては、1994年に結成され、広島市と長崎市にある原爆資料館やひめゆり平和祈念資料館など全国10館が参加する「日本平和博物館会議」などがある。【比嘉洋】