妻の遺体を遺棄したとして大阪府警に夫が逮捕された事件で、夫が遺体を遺棄したとされる時期に別の傷害事件で保釈中だったことが判明した。関係者が明らかにした。府警は妻に対する殺害容疑も視野に捜査している。
夫で無職の黒木佳史容疑者(35)は2024年6月5日ごろ、大阪市中央区の自宅から妻いずみさん(当時52歳)の遺体を車で運び、岡山県内かその周辺に遺棄した疑いが持たれている。遺体は見つかっておらず、容疑者は「今は何も話せません」と話しているという。府警は12日、容疑者を死体遺棄容疑で大阪地検に送検した。
関係者によると黒木容疑者は23年、大阪市内の飲食店で妻とは別の女性に暴力を振るってけがをさせたとして傷害容疑で逮捕、起訴された。その後、「証拠隠滅の恐れがない」などとする主張が認められ、この年の12月に保釈が許可された。
いずみさんは傷害事件の公判に情状証人として出廷し、容疑者を監督していくなどと約束していた。しかし、24年6月ごろに連絡が取れなくなったという。
黒木容疑者も行方が分からなくなっていたが、府警が6月24日に岡山県内で発見。覚醒剤を使用していたとして逮捕、起訴された。7月に傷害罪、9月に覚醒剤取締法違反(使用)の罪で実刑判決を受け、服役している。
刑事訴訟法は証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合などを除き、請求があれば保釈しなければならないと定めている。罪を認める供述調書を取るために拘束を続ける捜査機関の手法に「人質司法」との批判が強まったことなどもあり、保釈が認められるケースは増加傾向にある。最高裁などによると、1審判決前に地裁で保釈が許可された割合(保釈率)は23年は31・51%で、20年前の03年から19ポイント近く上昇した。
いずみさんを巡っては親族が24年6月22日に行方不明届を出していた。府警の捜査で、容疑者と30代男性(すでに死亡)とみられる人物が6月5日、自宅から大きな荷物を車に積みこんでいたことが防犯カメラの映像で判明。容疑者の複数の知人から、容疑者らが遺体を岡山のダムに捨てたとする証言が得られ、25年2月10日に死体遺棄容疑での逮捕に踏み切った。【林みづき、斉藤朋恵】