将棋の8冠再制覇を目指す藤井聡太名人(22)は12日、東京都渋谷区の将棋会館で第10期叡王戦(不二家主催)の本戦2回戦に臨み、戸辺誠七段(38)に82手で勝って準決勝に進出した。あと2勝すれば伊藤匠叡王(22)への挑戦者となり、前期に奪われたタイトル奪還の舞台へ上がることになる。
藤井名人は2024年6月、伊藤叡王にタイトルを奪われて7冠に後退した後、4冠を防衛。永瀬拓矢九段(32)の挑戦を受ける王将戦七番勝負では3連勝で4連覇に王手をかけ、増田康宏八段(27)を挑戦者に迎えた棋王戦五番勝負では初戦で白星を挙げた。タイトル奪還を期した今期叡王戦は初戦を突破し本局に臨んだ。
戸辺七段は攻める振り飛車が持ち味の中堅棋士で、これまで藤井名人との対局がなかった。この日、戸辺七段は得意の中飛車で積極的に攻め掛かったが、藤井名人が冷静に受け止めて反撃に転じ、そのまま押し切った。
終局後、藤井名人は「準決勝だとまだ挑戦を意識する感じではないので、次の一局にもしっかり集中して臨めればと思う」と気を引き締めた。
戸辺七段は「自分の得意な形で精いっぱい戦えた。(藤井名人とは)なかなか当たることができないので、また当たれるように精進したい」と語った。【丸山進】