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焼酎もカツオも…関係人口増のカギはファン獲得 耕作放棄地から焼酎プロジェクト始動 鹿児島

MBC南日本放送 2024年6月27日 19時7分

ニューズナウでは「ふるさと新時代」と題して、地域の今を見つめる特集をお送りしています。今回の舞台は枕崎市です。

「関係人口」という言葉をご存知でしょうか。この言葉は、その地域に住んでいなくても、その場所や住民と関わる人たちのことをさす言葉で、「観光以上、定住未満」とも言われています。

人口減少が進む中、この関係人口を増やし、活力を呼び込もうと、あるプロジェクトが動き出しました。

Q.きょうはどこから?
(東京・羽田から 会社員20代)「羽田から」
Q.枕崎市に来るのは?
「今回が初めて」

Q.大きな荷物を抱えて?
(鹿児島市から 公務員40代)「きょうの宿泊用」
Q.どこから?
「鹿児島市内。枕崎市に泊まることはほとんどない」

枕崎市に今月8日、県内外の20代から70代まで50人が集まりました。大学生に公務員、自営業、会社員など職業は、さまざまです。その目的地は…

枕崎市唯一の焼酎メーカー「薩摩酒造」の側にある2000平方メートルの土地です。

(参加者)
「思っていた以上に草が生えている」
「身長以上」

5年ほど前までサツマイモが植えられていましたが、土地の所有者が農業をやめたため、手つかずのまま、「耕作放棄地」になっていました。

市の基幹産業の一つ・焼酎の製造には原料のサツマイモを作る農家の存在が欠かせません。

ただ、問題があります。1980年、3万人だった枕崎市の人口はその後の40年間で、2万1000人に減りました。一方、枕崎市で農業を営む人は3000人から700人まで減少しました。

市全体の人口が3割減ったのに対し、農業人口の減少率は8割近くで、市の人口減の勢い以上にペースが速くなっています。

(こめ農家・70)「若い人はあまり農業をしない、慣れないから」

農家の高齢化が進んだうえ、鳥獣被害の増加などで荒れた農地では、新たな耕作者を確保することが難しいといわれています。

こうした現状に危機感を感じ、耕作放棄地を農地として再生しようと、新たなプロジェクトが立ち上がりました。

(枕崎市 前田祝成市長)「東京一極集中が進んでいる状況で、人口減少、少子化を解決できていない。焼酎造りを通じて幅広い人たちを巻き込んでいきたい」

立ち上がったのは3つの企業と行政。

地元枕崎にある薩摩酒造と地域振興を掲げている航空会社のソラシドエア、枕崎市でゲストハウスなどを運営する商社、そして市です。

耕作放棄地を耕してサツマイモを育て、特産の焼酎を造ろうというこの試み。

鹿児島から羽田、名古屋、那覇に就航しているソラシドエアは機内やオンラインショップで焼酎を販売し、商社と枕崎市はPRのためイベントを開きます。

「悩みの種」だった耕作放棄地がプロジェクトの舞台に。

第一弾の活動となった今回はそれぞれの企業や団体の社員が枕崎市に集まり、草刈りをすることになりました。

(記者)「高さ2メートルを超える雑草などで覆われた休耕地。どのようによみがえる?」

県内各地で草刈りをしながら観光や地域住民との交流を行っているボランティア団体「草刈りツーリズム」からもおよそ20人が参加。作業に慣れない初心者も楽しく汗を流します。

(会社員)「日ごろ運動していないから、へばった」

雑草を刈り取っては集め、集めては刈り取る作業を繰り返すこと3時間。次第に地面が姿を現し、見違えるほどきれいになりました。ここにサツマイモを植えます。

今後は参加者を拡大させ再来年までに4トンのサツマイモを収穫することが目標です。一升瓶で2000本の販売を目指しています。

(薩摩酒造 本坊直也取締役)「畑からつくることが大変だということをあらためて感じた。これからもイモに感謝して仕事したい」

(プロジェクトを企画・地域商社推進機構 大橋佑輔さん)「知ってもらって来てもらって、枕崎のファンが増えたらいい」

(説明するスタッフ)「左手のボトルが100年前。明治時代の焼酎の復元」

草刈りの参加者は芋焼酎の蔵を見学し、製造工程も学びました。

焼酎の飲み比べも楽しみの一つ。初めて飲んだという芋焼酎を早速、購入。この蔵でしか販売していない限定品です。

(ソラシドエア客室乗務員)「試飲したものを買った。おいしかったので親と一緒に飲む」

(ソラシドエア 高橋宏輔社長)「ここでしか買えないものに弱い」

草刈りに参加した50人のほとんどが枕崎市に泊まりました。

枕崎と言えば「カツオ」。交流会には名物の「わら焼き」も登場しました。

(水産会社経営 板敷祐弥社長)「枕崎のカツオは鮮度が命なので、地元で食べるのが一番うまい」

あっという間に打ち解ける人も。

耕作放棄地の再生から走り出したプロジェクト。焼酎が完成したあともさまざまな人を巻き込み、人を呼び込みたいと話します。

(ソラシドエア 高橋宏輔社長)「最近は二拠点居住やワーケーションとかいろいろな動きが出ているが、航空会社にとってもすごく大事なこと。乗ってもらうことが増える」

(枕崎市 前田祝成市長)「関わる人が増えてくるのは我々にとっても非常にプラス。新たな化学反応に期待したい」

人口減少に歯止めがかからない中、注目される関係人口。

今後は出来上がった焼酎をふるさと納税の返礼品にすることや、焼酎造りを通した滞在型の観光体験ツアーも計画されていて、広がりが期待されています。

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