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ICT活用で変わる子どもの学び方・先生の働き方 桜島・桜峰小学校

MBC南日本放送 2024年7月23日 19時28分

教育現場で、ICT=情報通信技術を活用した学習が広がる中、児童の学び方や教員の働き方も、今、変化しています。変わりつつある教育現場を取材しました。

鹿児島市の桜島にある全校児童28人の桜峰小学校です。

(記者)「こちらの学校では、ほとんどの授業でタブレットを使っています。高学年の算数の授業です。児童が学んだことをタブレットを使ってプレゼンをしています」

鹿児島市は2020年度から、各小学校に1人1台タブレット端末を整備しています。桜峰小でも日々の授業でICTを積極的に活用しています。

タブレットを使うのは教室での座学だけではありません。水泳の授業では、プールにタブレットを持ち込み、児童同士で泳ぐ姿を撮影。泳ぎ終わると、すぐに動画を見てフォームを確認します。

(児童)「あ~荒れてる。片腕を回すときに、もう片方の腕も動いているから、手を合わせたときに腕を回すようにしたほうが良いと気付いた」

こどもたちが自分で課題に気づき、解決する学びに繋げています。

(大迫誠校長)「10年先、20年先の子どもたちを我々は見ていかなくてはならない。ある程度、手を離して目を離さない姿勢も大切」

宿題もタブレットです。

(児童)「予習はこのアプリを使っている。きょうの予習はこれ」

多くの小学校では、授業で学んだ内容を宿題で「復習」するのが一般的ですが、桜峰小の宿題は、次の日の授業の「予習」です。

前の日に、翌日学ぶ学習内容のヒントをもらった上で、家に帰ってタブレットで予習し、先生に送信。授業では、予習してきた内容をほかの児童に説明します。先生は子どもたちの理解度や、つまずきやすい点を事前に把握したうえで、授業で重点的に教える仕組みです。

学習の流れを従来と逆にしたこの「反転学習」は、「対面」と「オンライン」を組み合わせたハイブリット型授業として、コロナ禍をきっかけに高校や大学で普及が進みつつありますが、小学校ではまだ少ないのが現状です。

持ち帰ったタブレットや、ネット環境がない家庭に貸し出しているルーターを「学習以外に使わない」というルールの徹底などが難しいことから、家庭学習でタブレットの運用を見送っている学校もあります。

Q.プリントとタブレット、どちらが良い?
(児童)「タブレット」「(タブレットを使って)説明しているときに楽しさがわいてくる。飽きない」

桜峰小学校が児童に行ったアンケートでは、去年から今年にかけて「進んで学習に取り組んでいる」とこたえた子どもが3倍に増えたほか、標準学力調査での偏差値は去年までの3年間で8ポイント上昇しました。

さらに先生の働き方にも変化がありました。手作りしていたプリントなどは、AI機能を搭載したデジタルドリルに。自動で出題、採点をしてくれるうえ、児童の苦手な問題の傾向を学習し、類似問題を出します。

(高橋愛梨教諭)「夏休みの宿題を作る時間はだいぶ無くなった。とても簡単で、印刷もしなくて良いので」

夏休み前に宿題の作成に追われる負担が軽減されたほか、児童がドリルに取り組んだ時間や達成度はデータ化されるため、通知表をつける際の参考にすることもできます。

文科省によりますと、公立小学校の教員の時間外在校等時間の平均は1か月およそ41時間ですが、桜峰小では26.6時間と、4割ほど短くなっています。

(高橋愛梨教諭)「心の余裕がないと子どもと上手く話しができず、反省点が多い毎日を過ごしていたが、タブレットが導入されてからは、休めて早く帰れて、自分の心にも余裕ができた。子どもとの接し方も自分のありたい先生像でいられるようになった」

桜峰小学校は来年度末に閉校し、2026年春、桜島横山町に開校予定の義務教育学校「桜島学校」に統合されます。学校でのICT活用事例を広く発信し、今後の教育現場でも役立ててほしいといいます。

(大迫誠校長)「教員不足とかいろいろと言われているが、学校はすごく楽しいところ。桜峰小学校の先生はいきいきしている、桜峰小学校はみんな明るいと発信していきたい」

学校は取り組みの成果などをとりまとめ、今年秋に県内の各学校向けに発表する予定です。

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