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女性議員92人 授乳室でき、県外視察に息子(2)同行も許されたけれど… 議会の多様性の今後は 鹿児島県

MBC南日本放送 2024年7月30日 20時0分

去年の鹿児島県議選、今年4月の鹿児島市議選では、ともに過去最多の女性議員が当選するなど、県内の女性議員の数は現在、92人になりました。

多様性が求められる中、女性議員が増えたことで何が変わったのか。去年、初当選した2人の女性議員を取材しました。

大崎町議会議員の藤田香澄さん(29)です。去年4月の町議選で、最多の957票を獲得してトップ当選しました。女性議員の誕生は、町では初めてのことでした。

(藤田香澄さんの選挙演説)「女性や若者の声を聞かずして、大崎町が持続的に発展していくことはありえないと感じた」

選挙戦で訴えたことは、「女性や若者の声を町政に反映すること」です。

リサイクル率日本一の大崎町で循環型社会の実現に取り組もうと、3年前、神奈川県から移住。地域課題の解決には、女性や若者の視点が重要だと考えたからでした。

(藤田香澄さん)「本日はパートナーシップ制度、ファミリーシップ制度の導入と、インクルーシブ公園の設置について質問します」

この日の一般質問では、同性カップルに対して自治体が婚姻と同等の関係を認める「パートナーシップ制度」の導入を取り上げました。

(大崎町 東靖弘町長)「差別や偏見の解消、当事者の暮らしやすさの向上につながることが期待される。町としては検討すべき課題と捉えている」

町長から前向きな発言を引き出すことができました。

(藤田香澄さん)「検討課題は広くて大変だとは思うが、1個1個言っていけば、取り入れないとと考えてもらえる町だと思う」

町民の声を吸い上げるため、藤田さんはSNSを使って相談を受け付けています。

町内でヘアサロンを経営する吉岡美香さん。今年初め、藤田さんに有機農業をテーマにした映画の上映を相談したところ、先月、町主催での上映会開催が実現しました。

(ヘアサロン経営 吉岡美香さん)「最初、議員さんって関われないという勝手なイメージがあったが、香澄さんと関わって、人間みんな一緒だと。女性にしか共感できないこととか、(女性議員だと)一番相談しやすい」

初の女性議員誕生に同僚議員は。

(鷲東慎一議員(52)2期目)「雰囲気が変わった。(藤田さんは)女性や子育て世代の人とつながりを持つように積極的にしている。波及効果は出てくるのではないか」

(中山美幸議員(71)6期目)「(変化は)あまり感じない。私自身も子どもや主婦の意見を取り入れて発言したり質問したりしている。多様性は認めます」

藤田さんは議員のかたわら、まちづくりの合同会社も運営。地域の小さな声を対話を通じて吸い上げようと、先月、住民同士が語り合えるカフェなどを備えた交流拠点をオープンさせました。

(大崎町民40代)「ママが癒されて、子どもが遊べるイベントをしたい」

(藤田香澄さん)「(今までは)地域のリーダーが聞いて行政に伝える一方向だったが、対話してアップデートしていく。もっと多様でブラッシュアップされた意見が反映されていく。それをやっていきたい」

(藤田香澄さん)「住民主権のあり方で良い事例を作っていくのに、(大崎町は)すごく良い場所。良い事例をほかの地域に広げていって、日本全体でも採用される流れになっていけば」

県議会議員の宇都恵子さん(41)です。去年4月の県議選の鹿児島市・郡区で、選挙初挑戦ながら3位で当選しました。

改選時は定数51のうち女性議員が過去最多の11人となり、倍増。その割合は21.6%と、全国の都道府県議会で5番目に高くなりました。

宇都さんは事実婚の夫が大阪市にいるため、2歳の息子を1人で育てながら議員活動をしています。この日は、近くに住む母親に息子を預けてから県議会に向かいました。

(宇都恵子さん)「この間は6月議会で一般質問だったが、通告締切の時期に母がいなくて、かつ息子が熱を出して。(忙しくて)記憶にないくらい」

県議会庁舎では今年3月、傍聴席がある7階に授乳スペースが設けられ、トイレには、男女ともにおむつ交換台が設置されました。宇都さんの県への働きかけがきっかけで実現しました。

(宇都恵子さん)「(傍聴した時には)ひとつもおむつ交換台もないし、授乳室もありませんと当時言われた。ショックを受けた。解消してもらえたのはありがたい」

去年、男女共同参画などのために滋賀県や岐阜県に視察に行った際、自費で息子と母親を同行させることを認められましたが、女性議員を取り巻く現状は厳しいままだと話します。

(宇都恵子さん)「子どもを理由にしたところは、すごく許してもらっているが、一方でなかなか許されないケースも見聞きはしている。やはり(女性が)2割いるというのは心強い。ただ一方で、(周りを)見渡すと2割しかいないなと思う。圧倒的少数者だとは思う」

県内の女性議員有志でつくる「女性議員を100人にする会」によりますと、今年4月時点で、県内の女性議員は92人となり、100人まで8人となりました。しかし、離島を中心に依然、10の町村で女性議員がいない現状が続いています。

(平神純子さん)「カウントダウン(の段階)です。100人にする会の名前の通り、あと8人、100人になること。あとは残された(女性議員の)ゼロ議会がすべて無くなること(が目標)。もうそろそろ自分の町が最後になりそうだという危機感をもってほしい」

女性議員の増加で社会に変化が出始めている一方、女性議員がいない議会も依然残されている鹿児島。議会の多様性の実現は道半ばです。

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