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鴨池ダイエーからイオン鹿児島鴨池店…49年の歴史に幕 開店当時の味を守り続ける店も

MBC南日本放送 2024年8月27日 19時29分

以前は「鴨池ダイエー」と呼ばれ、多くの人に親しまれたイオン鹿児島鴨池店が今月末で閉店します。鴨池動物園の跡地に建てられ49年。その歴史とこれからを取材しました。

(喜田治男アナ)「私が今立っておりますのは、鹿児島市鴨池動物園跡地にできましたスーパーダイエー鹿児島店の前です」

1975年7月、今のイオン鹿児島鴨池店の前身・ダイエー鹿児島ショッパーズプラザがオープンしました。開店初日は建物を取り囲むように大勢の客が列を作りました。

鴨池動物園が現在の平川動物公園に移転し、その跡地に建てられたもので、総工費50億円、当時の売り場面積はおよそ1万2000平方メートルで現在の6割ほど。食料品や日用品のほか、専門店街には流行のファッションが並びました。

(喜田治男アナ)Q.きょうはどういう目的で?
(客)「ただブラブラです」
(喜田治男アナ)Q.どういうところが楽しい?
(客)「やっぱり広いことでしょうか」

開放的な吹き抜けがある建物中央の広場です。以前は椅子が設けられ、アイスクリームを食べながら、休憩や待ち合わせをする人の姿が見られました。

また、外国の文化を紹介するイベントや、球団・ダイエーホークスが初の日本一に輝いたときには観戦会が開かれました。

野球だけでなく、一時は、小売業界の売上“日本一”を達成したダイエーでしたが、経営多角化の失敗で2004年に産業再生機構の支援が決定。2015年、イオンがダイエーを完全子会社化し、店名のダイエーは“イオン”に変わります。

そして今年、イオン九州は老朽化を理由に今月末で閉店することを決めました。

現在の食料品売り場の入口にあるイオン直営の生花店です。パート従業員の女性は、「実家が近く友人とよく遊んだ」と当時を振り返ります。

(生花店の従業員・59歳)「小学校から帰ってきて、集合場所が動物のモニュメントだったので、しばらく動物に乗ったりして遊んで、短大のときは休講になったらみんなでバーガーショップで話をするのが日課だった」

この女性を含む従業員およそ260人のうち7割が、市内のイオングループの店舗で働くことが決まっています。

(記者)「閉店まで残りわずか。店内には『閉店うりつくし』や『半額から10%オフ』奥には『最終処分』と書かれ、客の入りも増えているということです」

店内では、閉店する31日まで売りつくしセールが行われ、取材した日は平日にも関わらず、クレープ店に長い行列ができていました。

49年間、営業を続けてきたこちらのお店。開店当時は珍しかったドリアやグラタンが看板メニューです。

(客)「夫が子どもの頃から来ているので、懐かしくてたまに来たり」

(客)「(閉店は)けっこう寂しくて…夏休み中にもっといっぱい来たかった」

店の代表、山川拓郎さん(51)です。4年前、この店を引き継ぎました。

(山川拓郎代表)「グラタンそのものが僕好きですし、小さい頃からご馳走といえばグラタンという時代だった」

前の店主、重信信義さんです。49年前、ダイエーのオープンに合わせて会社員を辞め、店を立ち上げました。4年前、77歳のときに体力の不安もあって閉店を決めました。

店の向い側でオムライスの店を経営している山川さん。店を閉めると聞き、重信さんに声をかけました。

(山川拓郎代表)「このまま(店を)なくすのはもったいない。『ぜひ僕にやらせてください』と直談判して譲っていただいた」

コロナ禍で大変なとき、店に食べに来て励ましてくれたという重信さん。閉店を見届けることなく、今年2月に81歳で亡くなりました。

山川さんは閉店後の今年の秋に、2つの店のメニューが味わえる店を鹿児島市の騎射場にオープンする予定です。

(山川拓郎代表)「ずっと客に愛されてきた両店なので、味を変えることなく、『何年たって食べに来ても変わらない味』と言われるような店を作っていきたい」

館内では2か月前から、客からのメッセージが掲載されています。閉店を惜しむ内容や再開発に期待する声など、これまでに3000通のメッセージが寄せられました。

(薩摩川内市から)「『ダイエー大好き』と書いてあるから、そうだなって思い(ボードを)見ていた。残念、なくなるのが」

(鹿児島市から)「なくなるということで寂しいなと思って、買い物と食事にきた」

(イオン鹿児島鴨池店 中村武店長)「悲しいというか寂しい限り。(客が)長年本当にこの店を愛してくれたんだなと思うと、うれしい気持ちでいっぱい」

建物は今後解体され、跡地にイオングループがショッピングセンターを建設する予定です。

あの日、家族や大切な人たちと過ごした時間や思い出の味…。客や従業員、それぞれの思いが詰まった店は、今月31日の午後7時に最後のセレモニーを行い、49年の歴史に幕を閉じます。

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