海洋深層水は、水深200メートルより深い海からくみ上げた水のことです。深海は太陽の光が届きにくく、植物プランクトンの活動が抑えられるため、その栄養源となるミネラルなどが消費されず、多く残っていると言われています。
鹿児島県内でも海洋深層水の活用が進められていますが、先月、研究者や自治体が活用策を話し合うサミットが高知ではじめて開かれました。
太平洋に面し、四国の南東の端に位置する高知県室戸市。室戸市で活用が進むのが…
(室戸市担当者)「1分間に3トンの水をくみ上げています」
(記者)「室戸市の取水施設です。私はいま海抜0メートルに来ていて、このパイプが300メートル海底にのびて水をくみ上げています」
室戸市では1989年に海洋深層水を日本で初めて取水し、現在も1日およそ4000トンの水をくみ上げ、地元企業で飲料水や化粧品などの製造、魚の養殖などに利用されています。
室戸市で先月開かれたのが「海洋深層水サミット」です。海洋資源の研究者などでつくる海洋深層水利用学会や、全国で取水施設のある6つの自治体などが参加し、今年初めて開催され、鹿児島県も参加しました。
海洋深層水を深海からくみ上げる施設は全国19か所あり、県内では薩摩川内市甑島で2003年に全国で7番目に整備され、現在は飲料水やセッケンなどの商品に活用されています。
(海洋深層水利用学会 大塚耕司会長)「全国で一致団結してというのが、もうひとつ進んでいなかった。今回のサミットをきっかけにして、各取水施設の自治体がスクラムを組んで、全国で海洋深層水の名を社会に広めていくきっかけになってほしい」
サミットでは学会での研究発表や取水施設のある自治体によるパネルセッションが開かれ、沖縄県久米島で実証試験が進む「海面に近い海水と温度の低い海洋深層水の温度差をいかした発電システム」など、それぞれの自治体が取り組みを発表しました。
(東京大学大気海洋研究所 今田千秋客員教授)「あまりみなさんが調べていない、無尽蔵に宝探しができるだろうと考えて、深層水の微生物(の研究)を始めるきっかけになった」
サミットに参加した東京大学大気海洋研究所の今田千秋客員教授です。海の微生物の研究が専門で、全国の取水施設で微生物を採取していて、今年8月からは甑島の海洋深層水の研究を開始。
今後、深海の太陽光が届きにくく、水圧が高い厳しい環境でも生存できるなど、独自の生態をもつ新たな細菌や酵母を見つけ、食品や医薬品開発への応用につなげたいと話します。
(東京大学大気海洋研究所 今田千秋客員教授)「私がやっているのは海の微生物の宝探し。そういう微生物が見つかるかどうかではなくて、見つけるという意志を持ってやっていこうと思っている。この甑島も必ず有用な微生物がいるんだと信じて、信念を持って(微生物の)分離を続けていきたい」
全国で海洋深層水の取水施設がある自治体でつくる協議会は、来年は甑島で開催される予定です。