今月24日に投開票される鹿児島市長選挙。届け出順に、新人で元鹿児島市議会議員の桂田美智子さん(71)と、現職で2期目を目指す下鶴隆央さん(44)の2人が立候補しています。
ニューズナウではシリーズで市長選の争点について考えます。1回目は、候補地が2度白紙となり迷走する市のサッカースタジアム整備計画です。
(県ラグビーフットボール協会 渡辺丈会長)「現状として、白波スタジアムが使いたい時に使えないことが起こっている」
「白波スタジアムが使えない」。こう話すのは、県ラグビーフットボール協会の渡辺丈会長です。
高校生ラガーマンの聖地、花園を目指して今月10日に行われた全国高校ラグビー県予選の決勝。雨が降る中、屋根がない県立サッカー・ラグビー場での開催となりました。
(県ラグビーフットボール協会 渡辺丈会長)「大会をスタジアムですることが、高校生ラガーマンの経験としては大事なことだと思う」
当日、白波スタジアムで開かれていたのは、鹿児島ユナイテッドFCのシーズン最終戦でした。ユナイテッドFCが、もともと陸上競技場だった白波スタジアムをホームスタジアムとしたのは、J3に参入した2016年。今では週末を中心に、年間20試合を開催しています。
陸上、ラグビーにサッカーが加わり、白波スタジアムの会場確保が難しくなる中、浮上したのが、新たなサッカースタジアムの整備計画でした。
おととし11月、鹿児島市は候補地として、県有地の本港区・ドルフィンポート跡地を「最適」と判断しましたが、7か月後に断念。その後、同じ本港区の「北ふ頭」を挙げましたが、県などとの調整が難航し、今年2月に再び白紙となりました。
(県ラグビーフットボール協会 渡辺丈会長)「1日でも早く実現していただければと思う」
将来、J1昇格を目標とするユナイテッドFCも新たなスタジアムを必要としていて、渡辺会長は県サッカー協会とともに速やかな整備を県と市に求めてきました。
(県ラグビーフットボール協会 渡辺丈会長)「鹿児島でプロの試合を見ることができないし、本当に大きな損失。競技者を増やすためにも、素晴らしい環境の下でラグビーをしたり、触れたりすることを一番熱望」
候補地を巡って迷走する中、今、新たな可能性として浮上しているのが、与次郎の鹿児島サンロイヤルホテルが移転した場合の跡地です。市と県は、いずれも「候補地になり得る」との認識を示しています。
二転三転するスタジアム計画に、鹿児島市民は?
(20代)「つくることは良いことだと思う。県がもっと栄えてくれるのであれば」
(70代)「私はつくるべきだと思う。叶えた方が選手も頑張るんじゃないか」
(60代)「つくらない方が良い。土地の(見つからない)問題もある」
(70代)「財政も圧迫する。それより子育て世代の方(の支援)。すごく(価格が)上がっている、食料にしても」
候補地が定まらない中、新たな懸念材料となりつつあるのが、整備費です。立候補者は2人とも整備には賛成の立場ですが、人手不足や資材価格が上昇する中、費用負担のあり方については主張が分かれます。
(桂田美智子候補(71)無・新)「サッカースタジアム建設は、市主導、自治体主導ではなくて、民間の方々が主導して、そこに市が後方支援する。多くの企業のみなさんがそこに参画をして、まちづくりと合わせてしていくことは大きなメリットだと思う」
(下鶴隆央候補(44)無・現(1))「このスタジアム検討にあたっては、オール鹿児島の枠組みで、前の森市長の時代から検討が進められてきた。これからも引き続き、県、市、民間、オール鹿児島の体制で、スタジアムの実現に向けて取り組んでいきたい」
一方、九州では先月、長崎市に、民間主導で整備したサッカースタジアムを中核とする「長崎スタジアムシティ」が完成しました。
地方自治に詳しい鹿児島大学の宇那木正寛教授です。長崎のような「民設・民営」のスタジアムは、自治体の財政支出がないメリットがある一方で、「安定的な運営」が課題になるといいます。
(鹿児島大学 宇那木正寛教授)「金銭面でも多くの自治体は、民間の資本で設置してもらって、民間で経営してもらうのが理想。(民間企業が)40年、50年先もずっと今のままの体制で経営できるかは非常に難しいと思う。安定的に施設を管理していく意味では、行政が主導権を持って管理するのは大きなメリット」
その上で、自治体が関わって整備する場合、整備のプロセスや財政負担について、市民への丁寧な説明が必要だと話します。
(鹿児島大学 宇那木正寛教授)「設置までの基本プロセスを明確にする。もう1点は、財政的不安を持っている方が住民にいると思うので、トータルコストを市民に示すことが必要」
スタジアム整備費は?市民の理解をどう得るか?活発な議論が求められます。