鹿児島市長選には、届け出順に、新人で元鹿児島市議会議員の桂田美智子さん(71)と、現職で2期目を目指す下鶴隆央さん(44)の2人が立候補しています。
市長選の争点、2回目は鹿児島市と旧5町の合併から20年。地域の課題や活性化についてです。
鹿児島市石谷町で洋菓子店を経営する二俣武志さん(47)です。石谷町のある旧松元町は2004年、二俣さんが27歳の時に鹿児島市と合併しました。
(ジャニス洋菓子店 二俣武志さん)「育ったまちの名前がなくなるので、少し寂しかった記憶はある」
二俣さんは高校卒業後に地元を離れ、関西の建築関係の会社で働いていましたが、39歳のとき、生まれ育った松元に洋菓子店をオープン。地元出身の妻と、妻の両親、小学2年の娘と5人で暮らしています。
高速道路のインターやJRの駅のある松元地区は合併後も人口は増加していて、周りには子育て世帯が多く、住みやすさも感じています。
(ジャニス洋菓子店 二俣武志さん)「人が増えてにぎやかになるのは、とてもありがたい。地域一体となって子どもを守るネットワークができている、心強い」
一方で、行政には自分のように「地域で新しい事業を始める人たちへの支援を増やしてほしい」と話します。
(ジャニス洋菓子店 二俣武志さん)「中心部にインフラもお金も集中しているイメージがあるけど、郊外でも人が楽しく暮らせるまちづくりをしてもらいたい」
1999年から全国で進められた平成の大合併。鹿児島市に吉田町、郡山町、松元町、桜島町、喜入町が編入し、2004年11月、現在の鹿児島市が誕生しました。面積はおよそ2倍、人口も60万人を超えました。
しかし、旧5町の人口は松元は42%増加しているのに対し、桜島は44%、郡山は20%、吉田と喜入は18%減りました。旧5町の住民からはインフラの整備や地域の人が集う場所が欲しいといった声が聞かれます。
(60代)「あいばすや乗合タクシーをもう少し充実させないとお年寄りの一人暮らしは大変。薬局や図書館の施設があってもいい」
(70代)「グラウンドゴルフなど楽しみが遠くまで行かないとない。趣味ができない」
(80代)「目の前のことをよく言うけど、50年先のことを考えてから目の前のことをもっと深く考えた方がいい」
(池山泰正さん)「当事者としては厳しい状況の中でやむを得ない面もあった」
鹿児島市油須木町に住む池山泰正さん(84)です。旧郡山町長を1995年から2004年まで3期務めました。退任した2004年は鹿児島市と合併した年。郡山町、最後の町長です。
就任1年目だった1995年、町は事業費177億円の区画整理事業を開始。完了時期は2029年で、事業費の半分の5割が国の補助、2割を旧郡山町、残りの3割は合併後に鹿児島市の予算があてられます。
(池山泰正さん)「とにかく町時代にやれることは全部やるんだと、大型事業を実施するには助かった」
「当時、町長として合併に不安も抱えていた」と話す池山さん。財政面での恩恵は受けましたが、この20年で人口は2割減少。ふるさとの景色は変わってしまったと話します。
(池山泰正さん)「合併そのものがどういうものか、じかに理解していなかったと思う。田んぼとして活用されていたんですけど、今はこういう形で荒れ放題になっている。こういうところが郡山各地で見られる」
鹿児島市全体の耕作放棄地は昨年度1137ヘクタールでこの20年で倍に増えています。池山さんは以前に比べ、市政に住民の声が反映されづらくなったと感じています。
(池山泰正さん)「昔は気軽に役場に出向いて、顔見知りのみなさんばかりで、相談事もできていたけど、(住民の)生の声が行政に反映されづらくなるのは事実、周りの状況も少し配慮してほしい」
合併から20年、今後の対策について鹿児島市長選の候補者は…
(桂田美智子候補(71) 無・新)「食料供給基地としての5町の存在、畑も田んぼもいっぱいある。若い人が希望を持って農業をやる、循環していく、まちの特徴を生かした取り組みが必要ではないかと思う」
(下鶴隆央候補(44) 無・現(1))「5地域の振興予算枠をつくることを約束し、実行に移してきました。これからも地域のみなさまとともに、それぞれの地域にまずはやってきてもらう、物を買ってもらう。交流人口を増やし、さらには住んでいただく。定住人口の増へとつなげる取り組みを強力に推進してまいりたい」
市民の生の声を聞き地域をどう活性化させるのか対応が求められています。