枕崎市の鹿児島水産高校にこの春入学した、鮫島耕児さん。なんと、校内最高齢の69歳です。ニューズナウでは入学時から密着し、学校生活をお伝えしてきました。今回は、1年に1度の釣り実習です。
枕崎港から出航する、1隻の船。鹿児島水産高校の実習船、「拓青」です。
舵をとるこちらの男性は船長・・・ではなく、この春入学した、高校1年生。鮫島耕児さん、69歳です。
(鮫島耕児さん)「物理が途中で分からなくなった。就職して社会人になってからも頭にあって、もう一回勉強してみたかった」
今年4月。学生時代に苦手だった勉強を学び直したいと、1日10時間にもおよぶ受験勉強を経て、高校に再入学しました。50歳以上年の離れたクラスメイトと、切磋琢磨する日々。
(鮫島耕児さん)「休み時間にクラスメイトとわいわいするのが本当に楽しい」
今から50年前。水産高校の漁業科を卒業した鮫島さんは、漁船や研究船の船長としてスペインやカナダなど世界各国をまわってきました。
(鮫島耕児さん)「船員しか見られない景色。夕日が沈むのを見て疲れが取れる」
しかし、海の道を選んだのは、自らの夢ではなく、家族を支えるためでした。
(鮫島耕児さん)「母子家庭できょうだいが4人いた。父は小学校1年生のときに亡くなり、母は苦労していた。すぐに就職をして家庭を助けなければならなかった」
家族のために働き、47年。新たな環境で学ぶ喜びをかみしめます。
(鮫島耕児さん)「(今は)自分が入りたい高校に入れたし、その中で自分がしたい勉強が出来ている。いろいろなことが待っているから、わくわくで楽しみ」
1年に1度の釣り実習の日。ひさしぶりの海に、気合いが入ります。
(鮫島耕児さん)「ひとつ海を知っている男として教えてあげたいなって思いがあった。待っていました、俺の得意分野だと」
実習では、船も操縦。先生の操舵号令に合わせて、生徒は慣れない舵をとります。
「ポートテン10(舵を左に10度)」「ポートは左だね」「逆だ」
(鮫島耕児さん)「(見習い時代を)思い出す。よく怒られていた」
長年、船長として号令を出してきましたが、きょうは号令を受ける側です。舵を握れば、船長の表情に。
釣り場は、枕崎港から20分ほどの沿岸。竿は使わず、釣り糸を手で持ち操作する手釣りです。鮫島さんのお目当ては…
(鮫島耕児さん)「タイがかかればいいな」
すると、早速。
(鮫島耕児さん)「何かつついている」「タイが釣れました、やったぜ」
さすがベテラン、1匹目から狙い通りです。生徒たちにも、釣り方のコツを伝授します。生徒たちにとって、世界中の海を渡ってきた鮫島さんの存在は、生きる教科書です。
(生徒)「クラスのみんなも憧れるし、海になるとやっぱり耕児さん頼りになる」
(実習船「拓青」西村大作船長)「鮫島さんの場合、僕より上級の船舶免許をお持ちで、自分の体験談を子どもたちに話しているので、生徒たちには良い刺激になっていると思う」
(いけすを覗く生徒たち)「えーめっちゃ釣れている」
5時間ほどで、今が旬のマダイやアジなど、およそ50匹が釣れました。釣った魚はその場で刺身に。鮫島さんが包丁を握ります。
(鮫島耕児さん)「ぷりっぷり。この上ない幸せ」
(鮫島耕児さん)「最高だった、きょうも。第二の青春。素晴らしい3年間だったと思えるような1日1日、1時間1時間を大切にしていきたい」
高校生となって出る、2度目の海。人生の新しい1ページとなりました。