来週12月2日から紙やプラスチックの健康保険証が廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用するマイナ保険証に一本化されます。
マイナ保険証はマイナンバーカードを、医療機関や薬局のカードリーダーやスマホ・パソコンの「マイナポータル」セブン銀行のATMで、登録しひもづければマイナ保険証として利用できます。
登録することで国は、「医療機関や薬局などでの受付がスムーズに行え薬や健診の情報が共有され、より正確な診療や薬の提供が行われるなどのメリットがあり医療のレベル向上も期待できる」としています。
健康保険証からマイナ保険証への本格移行を前に対応を進める自治体や医療関係者らの現状そして課題を取材しました。
鹿児島市役所のマイナンバーカード特設会場です。カードの更新または新規発行で27日は40分待ちとなっていました。
(市民)
「(マイナ保険証は)トラブルがいろいろあった。どうしようかと思っていた。前の保険証で良いと思うのだけれど」
「(マイナンバーカードの)再交付で来た。今後ひもづけて紙じゃないほうで使っていきたい」「薬の管理もできるみたいなので、そこはポジティブにとらえている」
(鹿児島市・市民課 塘正平課長)「利便性が上がっていけばいくほどマイナンバーカードの需要が高まる。まちがいなく交付をしていくように体制を整えていく」
12月2日で健康保険証が新たに発行されなくなり、マイナンバーカードを使ったマイナ保険証を基本とする仕組みに変わります。
ただし、有効期限内で最大1年間はいまの健康保険証が使えるほか、マイナ保険証を持っていない人には「資格確認書」が無償で交付され、これまでと同じく保険診療を受けることができます。
現在、マイナンバーカードを持っている人は全国で75.7パーセント。鹿児島県は80.5パーセントで、宮崎に次ぎ2位です。
一方、マイナンバーカードをマイナ保険証としてつかうために登録し利用しているのは、全国で15.67パーセントに留まっています。鹿児島は全国7位ではあるものの、20.04パーセントにすぎません。
医療現場を訪ねました。薩摩川内市の大海クリニックです。今月に入ってマイナ保険証を利用する患者は全体の3割に上っています。
(外来患者)「どこの病院でも情報を共有してもらえるのが便利かなと思っている」
国はマイナ保険証では「お薬手帳」を持参しなくても、使っている薬や、また健診記録を共有できるのがメリットとしています。
受付では・・・。
(医療事務 中間数代サブリーダー)「いままで手入力で入力をしていた情報などが自動で取り込むことができるので、負担短縮にもつながり、間違いの防止にもなっている」
一方で課題も・・・。
(医療事務 中間数代サブリーダー)「やはり機械のネットワーク不良とか機械が止まってしまうことが結構ある。課題になっている」
クリニックでは、先週マイナ保険証を読み取るカードリーダーの不具合で、午前中いっぱい使えなくなるトラブルも発生し、もう1台導入することを決めました。
県の医師会副会長でもある大西浩之医師は・・・。
(大海クリニック・理事長 大西浩之医師)
「期待もあるし不安もいっぱい。(マイナ保険証で)期限切れが確認できなかったとか、引っ越しで情報が更新されず無効になったとか、結局元々の保険証を使う例が多かったので、発行されないということになるとどうしたものか」
「IT大国では目の虹彩でのぞくとそのまま電子カルテが立ち上がるとか、会計ものぞくだけで自動的にひもづけられたりとかする国がある。日本はずっと遅れている段階なので、今回のマイナ保険証が1歩目なんだろうなと思いながら進むしかない。ただ混乱はする」
すでに去年、保険医療機関や薬局ではマイナ保険証の受け付けが原則義務化されていましたが、この12月から新たに義務化される施設が、接骨院やはり・きゅう、マッサージなどです。
鹿児島市下荒田の鍼灸整骨院でも来週に向け、システムの最終確認を進めていました。
(鍼灸整骨院nagasaki 長崎智之代表)「マイナンバーカードを置きます。こういった形でできる」
しかし・・・。
(鍼灸整骨院nagasaki 長崎智之代表)「実は住所や電話番号がひもづけされていないので、結論から言うとここから手打ちになる」
(鍼灸整骨院nagasaki 長崎智之代表)「今のところ問題はなかった。マイナ保険証で来た人をしっかり(受け付け)できるように心構えと準備はしたい」
システムの不具合はもとより停電や災害現場などサーバーにアクセスできない時にどうなるのか?
デジタルに一本化された場合の課題も指摘される中、専門家は・・・。
(国立情報学研究所・情報学 佐藤一郎教授)
「マイナンバーカードの中には保険の名前や番号は書かれていない。管理しているデータセンターにアクセスしに行ってつないでいる。やはり手間がかかる。見た目で入っている保険と番号がわかったほうが、おそらく事務処理は楽になる」
2023年度の補正予算だけで887億円も投入されたマイナ保険証導入の背景には問題があったと指摘するとともに、国民一人ひとりが「デジタル化」の意味を改めて考える必要があると佐藤教授は訴えます。
(国立情報学研究所・情報学 佐藤一郎教授)
「本来は厚生労働省がやるべきことだった。デジタル庁主導で進んでしまったために医療側の事情が正しく反映されたかどうか、今後検証する必要がある」
「国・自治体・予算も人員が減ってくる。ある程度のデジタル化を進めないと回らないというのが現実。ただデジタル化をすれば、すべからく便利になるというものではない。お金もかかる。何をデジタル化すべきかどうかというのは国や企業に任せずに国民一人ひとりが考えていくということがまず大切」
来週に迫ったマイナ保険証の本格導入。デジタル化のあり方も問われる中、国の保健医療は新たな一歩を踏み出します。