北陸地方を襲った能登半島地震から間もなく1年です。MBCでは能登半島地震についてお伝えしています。
地震と9月の豪雨、二重の災害に苦しみながらも有機野菜をつくり続けている鹿児島出身の女性を取材しました。
石川県七尾市能登島。2000人余りが暮らすのどかな島です。
姶良市出身の高博子さん(54)です。福岡の広告会社に勤めていた20代のときに石川県出身の夫・利充さんと出会い、25年ほど前に2人とも会社を辞め能登島に移り住みました。
食べることが好きだったこともあり、赤土が特徴の能登島で野菜づくりを始めました。
(高農園 高博子さん)「『伝統とモダン』がテーマで、伝統野菜と新しくイタリア野菜とかフランスの野菜とかを取り入れながら、レストランとかホテルに提案している」
畑の面積は15ヘクタール=東京ドーム3個分の広さで、根菜類を中心に300種類以上の野菜を育てています。すべて、農薬を使わない有機野菜です。その味と鮮やかな色が人気で、全国の星付きレストランやホテルから注文が入ります。
野菜づくりが軌道にのっていた今年の元日、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生しました。
能登島で震度6強を観測し農園では崩落や地割れが発生。自宅兼作業場も損壊し、1500万円以上の被害が出ました。
(利充さん)「(地面が)割れているんで気をつけて」
(博子さん)「ここにうちの畑があるが行けない」
今も畑全体の2割ほどが使えない状態です。
(高農園 夫・利充さん)「絶望しかない、やっていけるのか。やめなくちゃいけないのかな」
国の担当者が2月に来た際、被害を受けた畑について「国の予算で修繕するのでそのままにしておいてほしい」と話していたということですが、10か月たった今も連絡はないままです。
取引先の飲食店関係者が駆けつけ、事務所の片付けや収穫を手伝ってくれて、畑も徐々に回復してきた9月、今度は豪雨が襲いました。
(博子さん)「ここから流された」
畑の一部が冠水し新芽が出たばかりのカブやダイコンなどが流されました。
(博子さん)「地震から続けて(豪雨災害)だから、しんどい」
状況を知った鹿児島市の飲食店が手を差し伸べました。高さんが、姶良市で一人で暮らす父・和雄さんと訪れたことのあるレストランです。
農園から仕入れたニンジンやタマネギなどを使い料理を提供するチャリティーランチ会を企画しました。売上は高さんや能登の被災者に寄付する計画です。
(イルチプレッソ 古畑圭一朗さん)「きれいに育てられているのがよくわかる」
チャリティーランチ会は日置市で開かれました。前菜の盛り合わせ、野菜のスープなどが提供され、60人の客は被災地を思いながら能登でつくられた野菜を味わいました。
(客)「能登の野菜は食べる機会はないが、高農園のことが気になり続ける、きょう来ている客が」
(イルチプレッソ 古畑好恵さん)「鹿児島の人が(野菜を)つくっている、しかも被災している。誰かがそばにいると感じられることが一番の支援」
高農園では今、赤カブやカリフローレが収穫の時期を迎えています。
(高農園 高博子さん)「私たち、こんなに(鹿児島と)離れているのに支援してもらっていいのかな。私たちの元気の源になっている、頑張って復興させなきゃいけない、頑張って農業しようと思える元気をもらっている」
高さんの今の楽しみは姶良市に一人で暮らす父親に会うため2月に帰省することです。
能登島では今シーズン初めて雪が降りました。高さんの野菜作りはきょうも続いています。