日置市の吹上浜で46年前に起きた北朝鮮による拉致事件。発生日と同じ日に生まれた鹿児島市の高校生が拉致をテーマにした全国作文コンクールで最優秀賞を受賞しました。
高校生と拉致問題をつないだのは、海外の放送も聞けるラジオでした。
拉致問題をテーマにした政府主催の作文コンクール。今年、全国3251人の応募の中から、県内から中高生4人が上位に入賞しました。
高校生部門で最優秀賞に選ばれた鹿児島市の甲南高校1年・福留豪希さん(16)。取り上げたのは、1978年、吹上浜で拉致された市川修一さんと増元るみ子さんです。
(甲南高校1年 福留豪希さん)「日々穏やかに過ごしていた家族を突然奪われる悲しみや苦しみは、どれほどのものか。そして家族を奪われたまま46年の月日が流れ」
46年前の出来事に、関心を持ったきっかけ。その1つが、小学生の時に両親が買ってくれた短波ラジオの受信機です。
短波ラジオは電波が届く範囲が広く、海外の放送も聴くことができます。
北朝鮮の海外向けラジオ放送「朝鮮の声」です。いろんな国の放送を聴く中、北朝鮮の音楽や文化に触れるうちに、現地の人々に思いをはせるようになったといいます。
(甲南高校1年 福留豪希さん)「拉致やミサイル開発をしているので、ひどい国だなとは思っていたが、朝鮮人民は普通の生活を送っているだけ。そういう(拉致)問題を解決して、日本と北朝鮮が仲良くできたら良いなと」
さらに、市川さんと増元さんが拉致された日は、46年前の8月12日。奇しくもその日は、福留さんの誕生日でした。
(甲南高校1年 福留豪希さん)「僕にとって8月12日は、誕生日だからおめでたい日だ。だが、拉致事件を知ってからは、被害者に思いをはせる日にもなっている」
去年夏、福留さんは鹿児島の拉致被害者、市川修一さんの兄、健一さんと妻・龍子さんに直接、話を聞き、その内容を学校で発表しました。
しかし、その時に同級生およそ70人に拉致問題を知っているかをアンケートしたところ、回答が得られたのは4人だけ。関心の薄さに危機感を覚え、今年3月、学校に市川さん夫婦を招いて講演会も開きました。
福留さんは今月、指宿市で市川さん夫婦とともに署名活動を行いました。かたわらには、同じ作文コンクールで優秀賞を受賞した川内高校1年・羽島奈穂さんの姿もありました。
(市川修一さんの兄 健一さん・79)「人権問題に熱心に取り組むということは、素晴らしいこと、できないこと。これを生かしてこれからの人生をしっかり歩いてもらえばうれしい」
拉致問題にもっと関心を持ってもらうには?福留さんは、ノーベル平和賞授賞式のニュースを見て、1つのヒントを得ました。
(甲南高校1年 福留豪希さん)「被爆者の団体がノーベル平和賞をもらい、高校生などが一緒に活動をサポートしていた。それと同じ。若い世代がサポートしていくことによって、さらに活動の幅を広げられる」
被害者、家族ともに高齢化が進み、風化が懸念される拉致問題。若い世代も模索を続けています。