シリーズ「かごしまこの1年」、今回は「県警不祥事」です。捜査資料の漏えいや盗撮などで警察関係者4人が逮捕された上、浮かび上がった不祥事隠ぺいの疑惑…。県警に対する信頼が揺らいだこの1年です。
3月。明らかになったのは、捜査資料の漏えいによるおよそ300人分の個人情報の流出でした。
逮捕された曽於警察署の巡査長は、個人情報を福岡のウェブメディアの記者に送ったとされ、公判で「県警の事件捜査に疑問を感じ、情報を漏らした」と主張。判決では「思い込みで県警に疑念や不満を募らせた側面が小さくない」として、懲役1年・執行猶予3年を言い渡されました。
さらに…県警本部公安課の警部が不同意わいせつの疑いで逮捕。また、枕崎署の巡査部長が女子トイレで盗撮したとして逮捕。
そして、急展開を迎えます。
定年退職した県警の前の生活安全部長・本田尚志被告が、警察の内部情報を記者に郵送したとして逮捕される事態に。
本田被告は裁判手続きで、枕崎警察署の巡査部長による盗撮事件を挙げ、「野川本部長が隠蔽しようとしたため、記者に情報を送った」と主張しました。
(記者)「本部長ひとことお願いします」
当初は沈黙を貫き…会見を開くも詳細を語らず。
(県警・野川明輝本部長/当時)「本田被告の主張は事件の捜査の中で必要な確認を行う」
野川本部長は、その後、隠蔽を否定したものの…
(街の人)「(本田被告の主張が)本当であればすごい勇気」
(街の人)「何らかの説明をして安心させてほしい」
本田被告から文書を受け取った北海道の記者です。文書には、県警の不祥事のほか、一般人や前の刑事部長の個人情報も含まれていました。
(北方ジャーナル 小笠原淳記者)「『闇を暴いてください』と書いてあって、内部告発や公益通報の訴えだろうと理解した」
組織の不正を告発する公益通報にあたるのでないか?との声に、県警は…
(県警・野川明輝本部長/当時)「文書の内容から見て公益通報にはあたらない」
そして…
(記者)「本田被告が出てきました。勾留されていた鹿児島中央署から姿を見せました」
本田被告は記者の問いかけに無言…詳細は語らず。
県警トップに浮上した不祥事隠ぺいの疑惑。県議からも厳しい声が。
(鶴薗真佐彦県議)「言語道断。県警トップのワンツースリーと言っても過言でない人たち」
強い調査権限を持つ百条委員会の設置が議論されたものの…
(県議会・松里保廣議長)「決議案は否決されました」
最大会派の自民党が反対し、設置には至らず。
一方、警察庁は野川本部長を長官訓戒処分とし、不祥事の経緯などを検証する「特別監察」に乗り出しました。
県警内部で過去に「組織的にプラスにならない」として捜査書類の廃棄を促す文書が配布されていたことも明らかになった中、一連の不祥事は「職責と倫理観の欠如」などが原因だったと結論づけました。
県警は、本部長に直接、組織上の問題を提言できる警部補以下のチームを立ち上げるなど、再発防止策を掲げました。
しかし、その3か月後…。
(県警・野川明輝本部長/当時)「県民に疑念が残っていると認識していて、在任期間中にそれを晴らすまでに至らず大変申し訳ない」
「疑念」を残したまま警察庁へ異動。
また県警は、捜査で不適切な対応があったとして36人を処分。詐欺被害を訴えたものの、被害届が受理されなかったという女性は…
(女性)「被害者本人が蚊帳の外。被害者に謝罪するのが一番大事だと思う」
揺らいだ県警への信頼。これ以上の不祥事を防ぎ、隠蔽の真相も明らかになるのか注目されます。