シリーズでお伝えしている「かごしまこの1年」。今回は、南西諸島で進む防衛強化の最前線となりつつある鹿児島の安全保障を振り返ります。
屋久島で先月開かれた慰霊祭。海岸の慰霊碑には1年前、オスプレイに乗っていた8人の名前が。
去年11月、屋久島沖でアメリカ軍のオスプレイが墜落した事故で、アメリカ軍は乗員8人全員の死亡を認定し、今年1月、機体の引き揚げを終了しました。
(地元漁業者)「(漁の自粛要請が)なくなるのはいいが、(乗員の)1人が見つかっていないのは残念」
事故を受けて、オスプレイの運用が日米で停止する中…
(木原防衛大臣/当時)「米側から日本国内のオスプレイの運用再開のタイムラインについて、今後具体的に調整を行っていきたい旨の連絡があった」
(塩田知事)「飛行再開の日程ありきではなく、情報提供を含めてしっかり説明してほしい」
事故原因が明らかにされず、住民からは「早すぎる」という声もあがる中、3月にオスプレイの飛行が再開。
アメリカ空軍は原因について「プロペラを動かすためのギアの壊滅的な故障」などとする調査結果をまとめましたが、先月、奄美空港に緊急着陸するなど、その後もトラブルは相次いでいます。
鹿児島県内では今年度、アメリカ軍機とみられる低空飛行の目撃情報が先月までに81件確認されていて、墜落事故以降も不安は払しょくされていません。
3月、離島の防衛を想定した日米共同訓練が九州・沖縄であり、県内では沖永良部島で初めて行われました。知名町では米軍が地域と交流する場面も…
(アメリカ軍兵士)「沖永良部島はいい場所。ここに来ることができて幸せ」
(70代住民)「戦後生まれで、気がついたら米軍がいた。攻撃するのはどうかと思うが、防衛面では(日米訓練は)いい」
離島での訓練の背景にあるのが、海洋進出を活発化させる中国の存在です。
今年6月には中国軍の偵察・攻撃型無人機が奄美大島沖を初めて飛行するなど、今年も中国の偵察機や艦艇が南西諸島で確認されました。
防衛拠点の強化は本土でも…。
さつま町にある標高およそ650メートルの中岳で、自衛隊の弾薬庫整備へ向けた調査を開始。2019年以降、町は防衛施設の誘致を続けていたものの、説明会では住民からさまざまな意見が出ました。
(出席者)「中岳内部の水脈・水源も調査対象にしてほしい」
(出席者)「弾薬庫が攻撃されても弾薬庫は大丈夫だ、でも私たちは死んでしまうという気持ちを抱いた。だから反対」
(防衛省担当者)「武力攻撃を受けるようなことがあった場合の国民の避難誘導・災害対応については、備えられるところは備えていく」
6月、海上自衛隊の大型無人偵察機「シーガーディアン」が鹿屋基地で試験飛行。中国を念頭にした東シナ海の警戒・監視を無人機でできないか検証するためです。
(鹿屋市民)「当然防衛のためにしているので、よいのではないか」
(鹿屋市民)「オスプレイ事故もあったので、ちょっと心配なところがある」
南西諸島の空白地帯で進む基地整備は難航しています。
(記者)「早ければ来年度には運用が開始されるとみられていましたが、現在も多くの部分が土で覆われ、滑走路の造成に時間がかかっているものとみられます」
馬毛島で進む自衛隊基地整備について、防衛省は当初、工事期間を4年程度と見込んでいましたが、人手や資材の不足で完成予定は3年遅れの2030年に延期されました。
中国の海洋進出に伴い、混迷を極める南西諸島の安全保障環境。安全対策などへの住民らの懸念も残る一方で、鹿児島は離島防衛の最前線となりつつあります。