鹿児島県霧島市のみやまコンセールで今、パイプオルガンの設置が進んでいます。県出身者からの寄付金で、開館から30年以上たって設置となりました。ヨーロッパから部品が届き、今、組み立て作業の真っ最中です。
「うわぁ。すごい、うわー」「うわーいいねぇ」
みやまコンセールのホールを訪れた人の目の前に現れたのは、組み立て途中のパイプオルガン。舞台後方の2階のバルコニーに設置が進んでいます。
県が1994年に総工費35億7600万円をかけて、霧島市牧園町に整備した霧島国際音楽ホール。みやまコンセールの愛称で親しまれています。当初からメインホール2階部分にパイプオルガンが設置できるように造られていました。
今月16日、開館から30年以上経ったみやまコンセールに届いたのは、コンテナ4つ分の荷物。
中身は、ルクセンブルクとドイツで作られたパイプオルガンの材料で、大小合わせて、1万5000のパーツがあります。職人ら専門のスタッフによって、全て手作業でホール内に運ばれました。
教会に鳴り響く重厚で荘厳な音色。パイプオルガンは、パイプに風を通すことで音を出す鍵盤楽器で「最も大きい楽器」と言われています。
(鹿児島加治屋町教会・礼拝奏楽者 松本かおりさん)「いにしえの音楽の奥深さに触れることができるところに魅力をすごく感じています。ひとりの演奏者でさまざまな表現ができるところがすばらしい楽器だと思います」
県内では、鹿児島市の加治屋町教会やザビエル教会などに設置されていて、教会の礼拝などで演奏されていますが、みやまコンセールには費用の関係でこれまで設置されていませんでした。
しかし、2021年に東京在住の県出身者から「鹿児島県の音楽活動交流のさらなる発展のために」と県に2億円の寄付がありました。
県によると、寄付した人はその後亡くなったということですが、「パイプオルガンが設置されることで、さらに多くの人に訪れてほしい」と話していたということです。
パイプオルガンが県内の公共のホールで設置されるのは初めてで、ヤマハが代理店を務め、ルクセンブルクのトマ社とドイツのクライス社が共同で製作します。
(県文化振興課 田中陽子さん)「待ちに待ったみやまコンセールでの組み立て作業。このパイプオルガンが県民のみなさんに愛される楽器になればと思っている」
おととしルクセンブルクとドイツで製作が始まり、去年、仮組立てと試演奏までが完了。その後、いったん解体し、海上輸送でおよそ2か月かけて鹿児島に届けられました。そして…
(記者)「なかなか直に見る機会がないパイプオルガンの製作現場。見学会参加者も興味深そうに見つめています」
今月25日、県は事前申し込みで先着100人に見学会を開き、パイプオルガンの組み立ての様子を初めて公開しました。
使われるパイプは金属製と木製があり、あわせておよそ1800本あります。重さはおよそ15トン。高さ7.5メートル、幅8.8メートル、奥行きは3.2メートルです。
どの音を鳴らすかを選ぶストップと呼ばれる装置は43あり、鍵盤は手元に3段、足元に1段設置されます。
(ヤマハ・パイプオルガン担当 加藤裕太さんの説明)「両脇に穴が空いていますが、そこに大きいパイプが入ります。そこはペダル部と言って足鍵盤で演奏する部分になります」
見学会は整備までの経緯や楽器の特徴、内部を映像で映して音が出る仕組みなどの説明があったほか、ルクセンブルクから訪れている4人の製作者も紹介しました。
(参加者の親子)「思ったより大きかった」
「こんな仕組みで音が鳴るんだなと知ることができた」
(Q.音が気になるのでは?)「気になりますね。娘も聴きに来たいと言っていたのでぜひ聴けたらと」
(参加者)「(組み立ての様子は)見ることないので、とてもうれしい。すごく期待をしていた」
(参加者)「これからも、ますます音楽を発展させていただければありがたい」
今回、日本での整備は初めてとなるルクセンブルクのトマ社のサムエル社長も「心に響く、感動する音を届けたい」と話します。
(製作者トマ社 サムエル・トマ社長)「私たちの仕事の目的は、人々と出会い、私たち製作した楽器からの音楽で感動を与えることです」
パイプオルガンは全て組み立てられたあとに音の調節を行い、5月末に完成する予定で、この調節作業も後日、見学会を開くということです。