レストランや小売店などについて、われわれが日常的に参考にしている評価サイトは多い。そして、その中にやらせのレビューが含まれていることも、それなりに了解しているだろう。
そうしたやらせのレビューが今後、違法行為としてみなされることになりそうだ。
というのも、ニューヨーク州司法長官が先頃、人気の評価サイトであるイェルプ、シティーサーチ、グーグル・ローカルなどに偽レビューを多数投稿していたマーケティング会社や店など19社を摘発、合計で35万ドルの罰金を科したからである。
これらマーケティング会社は、外部のフリーランス・ライターらに頼んでクライアント企業の好評価を投稿させていたが、その手口はなかなかに巧みだ。いくつもの異なったアカウントを取得させたり、同一のIPアドレスであることをわからなくするような手立てを取ったりしていた。司法局がニューヨーク市内のヨーグルト・ショップのふりをし、「店の評判が悪いのをどうにかしてほしい」とそうした会社に持ちかけたところ、やらせのレビューの実態が把握できたという。同局は1年をかけて調査を行い、今回の摘発に持ち込んだ。
こうしたやらせは、英語では「astroturfing(人工芝行為)」と呼ばれている。偽物で美しく見せかけるという意味だ。評価サイトでのやらせレビューは現在、全体の15〜20%にも上るという調査結果もある。かなりの数だ。
今回摘発されたことで、やらせレビューのこっけいな舞台裏がうかがえる。たとえばある貸し切りバスの業者は、それまで「予約したはずのバスが来ない」とか、「旅行が台無しになった」といった最低のレビューしかなかったのに、外部のライターや社員に「この会社は最高だ」などという新たなレビューを書かせて、5つ星を満載させた。
また、あるマーケティング会社は、「いろいろな表現を使うこと」とか「パーソナルな雰囲気を出すこと」などと、細かくやらせレビューの書き方を指導していたという。
やらせレビューは、消費者保護に抵触する行為。それが、今回の摘発の位置づけである。過剰広告やだましの類いである。胸がすくような思いだ。各社はその行いを認めてはいないものの、罰金の支払いには同意している。払う罰金は、2500ドルから10万ドルまでと開きはあるが、これまで野放しにされてきたこうした行いに、何らかのケジメが付けられたことは歓迎だ。
しかし、だからと言って、やらせレビューがなくなることはないだろう。何でもイェルプのレビューで星の数がひとつ増えると、その店の売上は5〜9%上がるそうだ。また、ホテルの評価では5点満点で1点ポイントが上がると、宿泊料が最大11.2%値上がりしても、客はそのホテルを選ぶという。つまり、レビューの星の数はそのまま売上に直結しているわけで、何としても評価を上げたいという心理は消えないだろう。
そうなると、勝負のしどころは、われわれユーザー側の見る目を養うことだ。ネット上には、偽レビューにだまされないようにする指南がいろいろあるが、参考になるものをいくつか挙げておこう。
・最高と最低のレビューは、あまり参考にしないこと。偽の好レビューと共に偽の低レビューもある。いずれの方向にも極端なレビューは敬遠すべし。
・文章がヘンなレビューには注意。マーケティング会社は、偽レビュー作成について1本あたり1〜10ドルを支払っているという。ライターはせっせと稼ごうと大量生産に走り、そのため文法や綴りの確認がおろそかになる。
・レビュアーの履歴を確認。いつごろからアカウントを持っているのか、他にどんなものをレビューしているのかからも、怪しさの加減がわかる。
・ひとつの評価サイトに頼らないこと。縦横にチェックすることが必要。
・レビュアーの数が多く、それでもまだ評価が高いものは信頼できる。
ところで、よく知られていないが、「やってはいけないレビュー」もある。
たとえば、ウィキペディアで自分のことを書くのはルール違反だ。自己紹介だと思って自分の項目を設けている人もいるかもしれないが、同サイトは自分や自分が関わっている事業などについて、自身で投稿してはいけないと定めている。それは、「自分のプロモーション」になり、客観性を欠くからである。したがって、もし何か間違った記載がされていても、黙って耐え、誰か心ある編集者が訂正してくれるのを待つしかない。
また、ルールはないものの、ひどく評判を落とすのは、アマゾンなどで著者が自著を褒め讃えるというケース。ここ数年で、有名作家が「天才的な作家」などと言って自著に5つ星を与えて自画自賛し、同時にライバル作家の著書をこきおろしていた事実が何件か明るみに出た。衝動はわかるが、不名誉な結果になることは間違いない。
そうしたやらせのレビューが今後、違法行為としてみなされることになりそうだ。
というのも、ニューヨーク州司法長官が先頃、人気の評価サイトであるイェルプ、シティーサーチ、グーグル・ローカルなどに偽レビューを多数投稿していたマーケティング会社や店など19社を摘発、合計で35万ドルの罰金を科したからである。
これらマーケティング会社は、外部のフリーランス・ライターらに頼んでクライアント企業の好評価を投稿させていたが、その手口はなかなかに巧みだ。いくつもの異なったアカウントを取得させたり、同一のIPアドレスであることをわからなくするような手立てを取ったりしていた。司法局がニューヨーク市内のヨーグルト・ショップのふりをし、「店の評判が悪いのをどうにかしてほしい」とそうした会社に持ちかけたところ、やらせのレビューの実態が把握できたという。同局は1年をかけて調査を行い、今回の摘発に持ち込んだ。
こうしたやらせは、英語では「astroturfing(人工芝行為)」と呼ばれている。偽物で美しく見せかけるという意味だ。評価サイトでのやらせレビューは現在、全体の15〜20%にも上るという調査結果もある。かなりの数だ。
今回摘発されたことで、やらせレビューのこっけいな舞台裏がうかがえる。たとえばある貸し切りバスの業者は、それまで「予約したはずのバスが来ない」とか、「旅行が台無しになった」といった最低のレビューしかなかったのに、外部のライターや社員に「この会社は最高だ」などという新たなレビューを書かせて、5つ星を満載させた。
また、あるマーケティング会社は、「いろいろな表現を使うこと」とか「パーソナルな雰囲気を出すこと」などと、細かくやらせレビューの書き方を指導していたという。
やらせレビューは、消費者保護に抵触する行為。それが、今回の摘発の位置づけである。過剰広告やだましの類いである。胸がすくような思いだ。各社はその行いを認めてはいないものの、罰金の支払いには同意している。払う罰金は、2500ドルから10万ドルまでと開きはあるが、これまで野放しにされてきたこうした行いに、何らかのケジメが付けられたことは歓迎だ。
しかし、だからと言って、やらせレビューがなくなることはないだろう。何でもイェルプのレビューで星の数がひとつ増えると、その店の売上は5〜9%上がるそうだ。また、ホテルの評価では5点満点で1点ポイントが上がると、宿泊料が最大11.2%値上がりしても、客はそのホテルを選ぶという。つまり、レビューの星の数はそのまま売上に直結しているわけで、何としても評価を上げたいという心理は消えないだろう。
そうなると、勝負のしどころは、われわれユーザー側の見る目を養うことだ。ネット上には、偽レビューにだまされないようにする指南がいろいろあるが、参考になるものをいくつか挙げておこう。
・最高と最低のレビューは、あまり参考にしないこと。偽の好レビューと共に偽の低レビューもある。いずれの方向にも極端なレビューは敬遠すべし。
・文章がヘンなレビューには注意。マーケティング会社は、偽レビュー作成について1本あたり1〜10ドルを支払っているという。ライターはせっせと稼ごうと大量生産に走り、そのため文法や綴りの確認がおろそかになる。
・レビュアーの履歴を確認。いつごろからアカウントを持っているのか、他にどんなものをレビューしているのかからも、怪しさの加減がわかる。
・ひとつの評価サイトに頼らないこと。縦横にチェックすることが必要。
・レビュアーの数が多く、それでもまだ評価が高いものは信頼できる。
ところで、よく知られていないが、「やってはいけないレビュー」もある。
たとえば、ウィキペディアで自分のことを書くのはルール違反だ。自己紹介だと思って自分の項目を設けている人もいるかもしれないが、同サイトは自分や自分が関わっている事業などについて、自身で投稿してはいけないと定めている。それは、「自分のプロモーション」になり、客観性を欠くからである。したがって、もし何か間違った記載がされていても、黙って耐え、誰か心ある編集者が訂正してくれるのを待つしかない。
また、ルールはないものの、ひどく評判を落とすのは、アマゾンなどで著者が自著を褒め讃えるというケース。ここ数年で、有名作家が「天才的な作家」などと言って自著に5つ星を与えて自画自賛し、同時にライバル作家の著書をこきおろしていた事実が何件か明るみに出た。衝動はわかるが、不名誉な結果になることは間違いない。