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ソチ五輪、腐敗度では文句なしの金メダル

ニューズウィーク日本版 2014年2月14日 11時46分

 いよいよ始まる冬季五輪ソチ大会。その開催費用が史上最高を更新することは間違いないだろう。その背景にはプーチン大統領の格闘技仲間も関係しているようだ。

 50年ほど前、まだ小学生だった「暴れん坊」のプーチンはサンボ(初期のソ連軍が訓練用に考案した格闘技)にのめり込んだ。当時からプーチンの練習相手だったアルカージイとボリスのローテンバーグ兄弟は、今もプーチンの取り巻き中の取り巻きで、ソチ五輪関連では途方もない額の契約を勝ち取っている。

 今のプーチンはサンボより柔道に熱心だから、柔道人脈も五輪で潤っている。プーチン自身が名誉会長を務める某柔道クラブは、エネルギー関連企業の大富豪でプーチンの盟友でもあるゲンナジー・ティムチェンコとローテンバーグ兄弟が98年に設立したものだ。

 ロシア政府の汚職問題を追及している活動家で弁護士のアレクセイ・ナワルニーによれば、ローテンバーグ兄弟とティムチェンコ、プーチンの友人で、国有のロシア鉄道を牛耳るウラジーミル・ヤクーニンは、ソチ五輪のインフラ整備等で150億ドル分の契約を結んだ複数企業の株主に名を連ねている。

 プーチンは国内のテレビでソチ五輪の総費用は70億ドル程度と説明した。だが150億ドルはその2倍以上。これだけでロンドン五輪の総費用139億ドルをも上回る。ナワルニーの試算では総額はざっと460億ドルだ(500億ドルとの予想もある)。

F1サーキットも経費で

 なぜこれほど莫大な金が投じられたのか。その答えは、急激に富を増やしているプーチンの取り巻き連中を見れば分かる。プーチンの親しい友人たちが結んださまざまな請負契約を子細に調べたナワルニーの報告では、その大半が当初予算を大幅に超過していたという。

 ローテンバーグ兄弟が初めて財を成したのは鉄鋼会社で、ロシアの天然ガス事業を独占する国営企業ガスプロムにパイプラインを供給してきた。ここ数年で兄アルカージイの個人資産は11億ドルから33億ドルへと膨らんでおり、ソチ五輪では70億ドル以上の契約を受注している。



 アルカージイが経営するエネルギー企業も、五輪会場への電力供給を強化するために8億5630万ドルでガス供給網の建設を受注している。だがナワルニーの分析によれば当初予算のほぼ2倍。彼が共同経営する大手建設会社は五輪会場まで約50キロの道路建設を87億ドルで受注しているが、4年前のバンクーバー五輪の総費用が約90億ドルであったことを考えると桁外れの額だ。

 さらに、アルカージイの別の会社はソチ五輪の会場付近にF1専用サーキットを建設中だ。費用の4億ドルはオリンピック予算から出ているが、このサーキットが五輪で使用されることはない。

「友情が人を傷つけることはない」と、アルカージイはかつてプーチンについて語ったことがある。「私は彼を大変尊敬しているし、神がこの国に遣わした人間だと考えている」

 ロシア社会が汚職まみれなのは今に始まったことではない。12年のウラジオストクでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の会場建設費は200億ドルで開催地のルースキー島には10億ドルを掛けて世界最長のつり橋が架けられた。だが島の人口は5000人に満たない。

 ソチ五輪はAPECよりずっと壮大なプロジェクト。ロシア事情に詳しいニューヨーク大学のマーク・ガレオッティ教授に言わせると、プーチンとその一味が「こぞって公金を横領するには理想的な環境」のようだ。

[2014.2.11号掲載]
ゾーイ・シュランガー

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