4月下旬のアジア歴訪の一環として、オバマ大統領の来日がほぼ確定したようです。昨年末の安倍首相の靖国神社参拝以来、日米関係はかなり「こじれた」感じになってきていますが、そうした文脈から考えると、今回の首脳会談では目に見える成果としての関係改善が求められます。
これは、オバマ大統領に取っては非常に大きな問題です。現在、アメリカの外交は、スノーデン事件で欧州では「イメージダウン」を余儀なくされる中、シリアやウクライナ問題では「行き詰まり感」が顕著となっています。その一方で「自分が力を入れる」と宣言してきたアジア外交まで行き詰まるようですと、大統領の威信は大きく低下する可能性があるからです。
では、日米関係の改善という場合、この2014年の3~4月の時点では具体的に何をすれば「改善」ということになるのでしょうか? 2つ大きなテーマがあると思います。
1つは、日中関係です。
昨年末の安倍首相の靖国参拝に始まって、同じく安倍首相のダボス会議での「第一次大戦直前」との不用意な比較論発言、CNNの単独インタビューを受けた安倍首相の「中国は20年間ずっと拡張主義だった」という発言、そしてNHKの籾井会長の発言に、今回の衛藤晟一首相補佐官の「アメリカの『失望』発言には失望」という発言など、一連の「右傾化の兆候」は、明らかに「中国を利する」ことになっています。
それは、安倍首相並びに周囲の言動により、中国は「日本は依然として枢軸国家であり、連合国並びに国際連合の敵」だと批判することが可能となっているからです。結果として、中国があたかも「自分が連合国の戦勝と第二次大戦の戦後の平和な世界」という「レガシー(遺産、正統性)」を持っているかのように振る舞っています。
これはアメリカにとっては到底容認できないことです。アメリカは自ら血を流し、日本も血を流す中で太平洋の平和が実現し、戦後の日米の良好な関係ができているわけです。一方で中国というのは、国連の創設メンバーではないし、戦後は長い間冷戦を戦う中で、アメリカの仮想敵であったわけです。その中国がまるで国連=連合国を代表して日本を枢軸国だと罵倒するような「口実」を与えるということは、太平洋の戦後体制を根幹から揺るがすことになるのです。
日中関係に関しては、少なくともこうした負のスパイラルを止めること、そのためにも日本側でこれ以上の事態悪化を招くような言動は止めること、これが大きなテーマになると思います。
もう1つは、日韓関係です。
こちらは日中よりも切迫していると思います。日韓関係には顕著な改善が見られることがどうしても必要です。
まず日米韓の3国の連携に「スキ」がないこと、これが北朝鮮に対して暴発を許さない軍事外交上の抑止力を維持するための前提であるはずです。現状は、そこに乱れが生じているわけです。それどころか、日韓関係の悪化に伴って中韓がこれ以上接近するようなことがあっては、仮に北朝鮮の政権が急速に崩壊した場合に、「統一に伴う経済的、社会的な痛み」を乗り越える求心力に「反日」というスローガンが使用され、朝鮮半島が丸々中国圏に行ってしまう危険もあるわけです。
年初の世界を震撼させた金正恩政権による「親中派の粛清」という事件は、おそらくはこうした情勢の中で「北朝鮮が韓国と中国に挟み撃ちに遭う」ことへの危機回避本能があったのではないか、そのように見ることも可能です。いずれにしても、日韓関係の悪化による中国、北朝鮮情勢への影響には、アメリカは神経を尖らせていると思います。
そうした意味で、今回オバマ大統領は、当初は予定になかった韓国訪問を日程に組み込む模様です。仮に駆け足で日本と韓国を訪問するということならば、日韓関係の改善という「成果」がなければ、オバマは本国で大きな批判を浴びることになると思われます。
勿論、首脳外交というのは事務方の折衝が完了することを前提に、最後のセレモニー的なものとして行われるわけです。その意味では、4月のオバマ来日へ向けて、3月には色々な動きが出てくるものと思われます。
例えば、3月の下旬には、オランダのハーグで「核セキュリティ・サミット」が開かれますが、ここでは「北朝鮮の核問題」への対応が相当の真剣味を持って語られるはずです。ですが、このサミットというのは、それこそ首脳外交になるわけで、これも事前に事務方の折衝で会議の方向性を作っておかねばなりません。そう考えると、もう余り時間がないわけです。事態を悪化させるような「言動」は今回の首相補佐官を最後にして、以降は積極的な関係改善への動きが何としても必要だと思います。
これは、オバマ大統領に取っては非常に大きな問題です。現在、アメリカの外交は、スノーデン事件で欧州では「イメージダウン」を余儀なくされる中、シリアやウクライナ問題では「行き詰まり感」が顕著となっています。その一方で「自分が力を入れる」と宣言してきたアジア外交まで行き詰まるようですと、大統領の威信は大きく低下する可能性があるからです。
では、日米関係の改善という場合、この2014年の3~4月の時点では具体的に何をすれば「改善」ということになるのでしょうか? 2つ大きなテーマがあると思います。
1つは、日中関係です。
昨年末の安倍首相の靖国参拝に始まって、同じく安倍首相のダボス会議での「第一次大戦直前」との不用意な比較論発言、CNNの単独インタビューを受けた安倍首相の「中国は20年間ずっと拡張主義だった」という発言、そしてNHKの籾井会長の発言に、今回の衛藤晟一首相補佐官の「アメリカの『失望』発言には失望」という発言など、一連の「右傾化の兆候」は、明らかに「中国を利する」ことになっています。
それは、安倍首相並びに周囲の言動により、中国は「日本は依然として枢軸国家であり、連合国並びに国際連合の敵」だと批判することが可能となっているからです。結果として、中国があたかも「自分が連合国の戦勝と第二次大戦の戦後の平和な世界」という「レガシー(遺産、正統性)」を持っているかのように振る舞っています。
これはアメリカにとっては到底容認できないことです。アメリカは自ら血を流し、日本も血を流す中で太平洋の平和が実現し、戦後の日米の良好な関係ができているわけです。一方で中国というのは、国連の創設メンバーではないし、戦後は長い間冷戦を戦う中で、アメリカの仮想敵であったわけです。その中国がまるで国連=連合国を代表して日本を枢軸国だと罵倒するような「口実」を与えるということは、太平洋の戦後体制を根幹から揺るがすことになるのです。
日中関係に関しては、少なくともこうした負のスパイラルを止めること、そのためにも日本側でこれ以上の事態悪化を招くような言動は止めること、これが大きなテーマになると思います。
もう1つは、日韓関係です。
こちらは日中よりも切迫していると思います。日韓関係には顕著な改善が見られることがどうしても必要です。
まず日米韓の3国の連携に「スキ」がないこと、これが北朝鮮に対して暴発を許さない軍事外交上の抑止力を維持するための前提であるはずです。現状は、そこに乱れが生じているわけです。それどころか、日韓関係の悪化に伴って中韓がこれ以上接近するようなことがあっては、仮に北朝鮮の政権が急速に崩壊した場合に、「統一に伴う経済的、社会的な痛み」を乗り越える求心力に「反日」というスローガンが使用され、朝鮮半島が丸々中国圏に行ってしまう危険もあるわけです。
年初の世界を震撼させた金正恩政権による「親中派の粛清」という事件は、おそらくはこうした情勢の中で「北朝鮮が韓国と中国に挟み撃ちに遭う」ことへの危機回避本能があったのではないか、そのように見ることも可能です。いずれにしても、日韓関係の悪化による中国、北朝鮮情勢への影響には、アメリカは神経を尖らせていると思います。
そうした意味で、今回オバマ大統領は、当初は予定になかった韓国訪問を日程に組み込む模様です。仮に駆け足で日本と韓国を訪問するということならば、日韓関係の改善という「成果」がなければ、オバマは本国で大きな批判を浴びることになると思われます。
勿論、首脳外交というのは事務方の折衝が完了することを前提に、最後のセレモニー的なものとして行われるわけです。その意味では、4月のオバマ来日へ向けて、3月には色々な動きが出てくるものと思われます。
例えば、3月の下旬には、オランダのハーグで「核セキュリティ・サミット」が開かれますが、ここでは「北朝鮮の核問題」への対応が相当の真剣味を持って語られるはずです。ですが、このサミットというのは、それこそ首脳外交になるわけで、これも事前に事務方の折衝で会議の方向性を作っておかねばなりません。そう考えると、もう余り時間がないわけです。事態を悪化させるような「言動」は今回の首相補佐官を最後にして、以降は積極的な関係改善への動きが何としても必要だと思います。