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水害に強いミニEVがBOP市場を席巻する日

ニューズウィーク日本版 2014年3月7日 14時30分

 水害が多い東南アジアの地域特性に着目した電気自動車(EV)を、日本の小さなメーカーが開発した。スズキ自動車出身の鶴巻日出夫が率いる小型EVベンチャーが共同開発した「フォム」だ。タイで現地生産し、来年10月から販売を始める。

 フォムは、ガソリン換算で1リットル当たり燃費96.7キロの4人乗り超小型EV。モーターを2つの前輪に組み込み、スクーターと同じバーハンドルを取り入れ、ブレーキペダルとアクセルペダルをなくして簡単に運転できる設計にした。

 水害が多い東南アジアでは自動車の水没が珍しくなく、1度水没すればかなりの割合で廃車になる。フォムは車体をボートのような浮きやすい形にデザイン。24時間までなら水に浮くことができ、ジェット水流発生装置で移動もできる。エンジンと違い、酸素を必要としないモーター駆動だからできた設計だ。

 EVの課題であるバッテリーは、家庭でも充電できるカセット式を採用。3時間の充電で約100キロを連続走行できる。販売価格は当初は100万円未満、ゆくゆくは50万円以下にしたいと鶴巻は語っている。

 低所得層を狙って新市場開拓を目指すBOPビジネスの成功のためには、製品の安さだけでなく複数の方法で現地に価値を提供する必要がある。その点フォムは安いだけでなく環境に負荷のかからないEVで、しかも地域を悩ます洪水にも強い。

 東南アジアで浮上できれば、いずれ先進国のメインストリートを走る日も来るかもしれない。

[2014.3. 4号掲載]
安藤智彦(本誌記者)

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