先週末、3月14日(金)にアメリカの株式市場はかなり下げました。週末に行われるクリミア半島帰属問題での住民投票を前にして、ウクライナ情勢全般への悲観論が広がったからです。その住民投票では、97%がロシアへの帰属に賛成票を投じたと発表されました。いよいよ、ウクライナの一部であるクリミア半島が、ロシア領になっていくプロセスがスタートしたのです。
ところが、この住民投票のニュースはアメリカでは実に小さな扱いでした。この週末の間、各局は延々とマレーシア航空機の行方不明事件を報じており、例えば30分のニュース番組の場合ですと、最初の15分がこのマレーシア航空機のニュースで、ウクライナ問題はその後の「今日のその他のニュース」で取り上げるという扱いがほとんどだったのです。
住民投票の結果を受けた週明け、3月17日のNY市場の反応も意外でした。前週とは打って変わって大幅高となったのです。ダウは181ドル強(1・1%)上げて前週末の下げの相当部分を戻した格好になります。
先週は、12日の水曜日に、首都キエフに置かれたウクライナの暫定政権のヤツェニュク首相が訪米して、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談しています。そのTVでの扱いは「まあまあ」でしたが、私が驚いたのは、アメリカはこの首相訪米にあたって、追加の金融支援のオファーは一切していないのです。
それどころか、その前週にケリー国務長官がキエフに行って約束した10億ドル(約1000億円)という融資保証について、オバマは「もったいぶって」恩を売るような発言をし、ヤツェニュク首相はこれに謝意を表明しというセレモニー的なやり取りがあったのですが、それと同時並行で議会共和党は「そんな怪しいカネは出すな」という反対論をブッていたのです。
以前にもこの欄に書きましたが、今現在、ロシアは150億ドルの援助の大部分をストップして代わりに戦車を派遣しています。一方でEUは110~130億の援助を「口に」はしています。一方で、ウクライナの対外債務は1500億ドルあり、一説によれば今年中に返済期限が来る債務は100~120億ドルあるようで、6月末に大口の償還があると言われています。
その中で10億ドルというカネしか出さないアメリカ、しかも首相が来ている最中にその融資枠設定への反対論が公然と出るというのはどういうことなのでしょう? 反対しているのは共和党で、基本的には反ロシア、オバマはプーチンに甘いという非難を繰り返しているグループが、10億ドルの拠出に難色を示しているのです。西側が思い切りカネを出して、プーチンを追い払えという意味での「強硬論」は今のところ、アメリカにはありません。
そんな中での、NY市場の180ドル高というのは何なのでしょう? このアメリカの「ポーカーフェース」ぶりをどう理解したら良いのでしょうか?
それは、この問題の当事者はロシアであり、EUだという認識です。そしてカネの面で言えば、まずロシアが相当額を出し、次いでロシアにエネルギーの依存度を高めているドイツが相当の負担をすればいいというスタンスです。
更に言えば、非常に自己中心的な姿勢ではありますが、アメリカとしては(1)ウクライナが最悪の場合にデフォルトになっても困らない、また(2)この地の混乱により化石エネルギーの価格が上昇してもシェールガスも出るので以前ほどには困らない、というスタンスがあるようです。
更に言えば、ロシアの金融事情は厳しいものがあるのです。現在のロシアの株価指数MICEXは、3月3日に大暴落した水準をウロウロしており、年初から15%下げた状況が続いています。ロシアの通貨ルーブルも、対ドルの水準ではダラダラと下げが続いています。
そんな中、オバマは「長期戦」で構わないというスタンスを取りつつあるようです。以前にも書きましたが、困っているのはロシアであり、ウクライナが破綻して連鎖倒産するのは困る、とりあえず借金の担保にクリミアを切り取る構えで西側を怒らせてカネを出させようとしたが乗ってこない、そうこうするうちに、株も通貨も下げが止まらない......強気のウラでプーチンは困り果てている、恐らくアメリカはそのように読んでいるのではと思います。
月曜日の市場の大幅高を見て、経済ニュース局CNBCのジム・クレマーは「要するにクリミア問題というのは、キプロス問題にちょっと毛が生えた程度の話さ」などと軽口を叩く始末ですが、その背景にはアメリカとして、ウクライナ情勢全般に関して、極めて冷淡な姿勢があるとも言えるでしょう。株高の解説としては「住民投票の結果は織り込み済み」であり、「混乱なく投票が実施された」ことで、危機はやや緩んだ、というものもありました。
オバマとしては、追い詰められたロシアがまずはEUに泣き付き、さらにどうしようもなくなって債権の一部放棄などに応じるように持っていく、そんな考えでいると思われます。「長期戦」というのはそういうことです。
ところが、この住民投票のニュースはアメリカでは実に小さな扱いでした。この週末の間、各局は延々とマレーシア航空機の行方不明事件を報じており、例えば30分のニュース番組の場合ですと、最初の15分がこのマレーシア航空機のニュースで、ウクライナ問題はその後の「今日のその他のニュース」で取り上げるという扱いがほとんどだったのです。
住民投票の結果を受けた週明け、3月17日のNY市場の反応も意外でした。前週とは打って変わって大幅高となったのです。ダウは181ドル強(1・1%)上げて前週末の下げの相当部分を戻した格好になります。
先週は、12日の水曜日に、首都キエフに置かれたウクライナの暫定政権のヤツェニュク首相が訪米して、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談しています。そのTVでの扱いは「まあまあ」でしたが、私が驚いたのは、アメリカはこの首相訪米にあたって、追加の金融支援のオファーは一切していないのです。
それどころか、その前週にケリー国務長官がキエフに行って約束した10億ドル(約1000億円)という融資保証について、オバマは「もったいぶって」恩を売るような発言をし、ヤツェニュク首相はこれに謝意を表明しというセレモニー的なやり取りがあったのですが、それと同時並行で議会共和党は「そんな怪しいカネは出すな」という反対論をブッていたのです。
以前にもこの欄に書きましたが、今現在、ロシアは150億ドルの援助の大部分をストップして代わりに戦車を派遣しています。一方でEUは110~130億の援助を「口に」はしています。一方で、ウクライナの対外債務は1500億ドルあり、一説によれば今年中に返済期限が来る債務は100~120億ドルあるようで、6月末に大口の償還があると言われています。
その中で10億ドルというカネしか出さないアメリカ、しかも首相が来ている最中にその融資枠設定への反対論が公然と出るというのはどういうことなのでしょう? 反対しているのは共和党で、基本的には反ロシア、オバマはプーチンに甘いという非難を繰り返しているグループが、10億ドルの拠出に難色を示しているのです。西側が思い切りカネを出して、プーチンを追い払えという意味での「強硬論」は今のところ、アメリカにはありません。
そんな中での、NY市場の180ドル高というのは何なのでしょう? このアメリカの「ポーカーフェース」ぶりをどう理解したら良いのでしょうか?
それは、この問題の当事者はロシアであり、EUだという認識です。そしてカネの面で言えば、まずロシアが相当額を出し、次いでロシアにエネルギーの依存度を高めているドイツが相当の負担をすればいいというスタンスです。
更に言えば、非常に自己中心的な姿勢ではありますが、アメリカとしては(1)ウクライナが最悪の場合にデフォルトになっても困らない、また(2)この地の混乱により化石エネルギーの価格が上昇してもシェールガスも出るので以前ほどには困らない、というスタンスがあるようです。
更に言えば、ロシアの金融事情は厳しいものがあるのです。現在のロシアの株価指数MICEXは、3月3日に大暴落した水準をウロウロしており、年初から15%下げた状況が続いています。ロシアの通貨ルーブルも、対ドルの水準ではダラダラと下げが続いています。
そんな中、オバマは「長期戦」で構わないというスタンスを取りつつあるようです。以前にも書きましたが、困っているのはロシアであり、ウクライナが破綻して連鎖倒産するのは困る、とりあえず借金の担保にクリミアを切り取る構えで西側を怒らせてカネを出させようとしたが乗ってこない、そうこうするうちに、株も通貨も下げが止まらない......強気のウラでプーチンは困り果てている、恐らくアメリカはそのように読んでいるのではと思います。
月曜日の市場の大幅高を見て、経済ニュース局CNBCのジム・クレマーは「要するにクリミア問題というのは、キプロス問題にちょっと毛が生えた程度の話さ」などと軽口を叩く始末ですが、その背景にはアメリカとして、ウクライナ情勢全般に関して、極めて冷淡な姿勢があるとも言えるでしょう。株高の解説としては「住民投票の結果は織り込み済み」であり、「混乱なく投票が実施された」ことで、危機はやや緩んだ、というものもありました。
オバマとしては、追い詰められたロシアがまずはEUに泣き付き、さらにどうしようもなくなって債権の一部放棄などに応じるように持っていく、そんな考えでいると思われます。「長期戦」というのはそういうことです。