2015年3月に開業予定の北陸新幹線金沢延伸は、新型車両の「E7系・W7系」も含めて話題になっています。その一方で、その1年先、つまり2016年春開業予定と言われている「北海道新幹線」の新青森=新函館(仮称)間に関しては、全国的にはまだ良く知られていないようです。
この「北海道新幹線」については、JR北海道の一連の不祥事を受けて、「北海道側の新造車両」に関する発表が遅れていました。そのために、この間、色々な憶測が出ていたのも事実です。例えば、JR北海道には「新幹線運行の免許が下りないのではないか」とか、そのために、現在の津軽海峡線の「交流2万ボルト」をフル新幹線規格の「2万5千ボルト」に上げる昇圧を「見送る」、そうすれば青函トンネル以北は法的には新幹線ではなく「スーパー特急」になるので免許が不要だ、などという説まで地元では流れていました。
反対に、地元では、そんな妥協案でもいいから「2016年3月開業」だけは実現して欲しいという、悲痛な思いがあったということも言えます。
ですが、そうした懸念の霧は少しずつ晴れてきました。まず、青函トンネル区間というのは、全国屈指の「貨物列車の大動脈」なのですが、その区間の電圧アップに対応するために、JR貨物はEH800型という2万5千ボルト対応の可変電圧式の新型機関車を既に発注、第一号機は完成しているという事実があります。
また、当初から新幹線規格で作られている青函トンネル内を「標準軌・狭軌」の両方の車両が通過できるように「三線軌条化」する工事も進んでいます。更に、津軽半島内の工事、そして北海道側の工事も予定通り進捗しているのです。これに伴って、津軽海峡線の知内、吉岡海底、竜飛海底の三駅は廃止になりました。やがて新函館(仮称)になる現在の渡島大野駅の工事も相当に進み、その隣には車両基地も姿を表しています。
そんな中、4月15日にはようやくJR北海道から「北海道新幹線車両」の発表がありました。内容は、至極妥当なもので、現在東北新幹線「はやぶさ」の車両として、どんどん新造が進んでいる営業最高速度320キロのE5系を、ほぼそのままJR北海道も4編成発注するというのです。
但し、内装色には多少の独自性を出すのと、緑と白の基本的なカラーは同一であるものの、JR東日本のE5系ではピンク色だったアクセントのストライプが、北海道仕様では紫になり、名前も「H5系」となりました。ちなみに、紫というのはラベンダーやライラックの色ということだそうです。
北を表すNでも良かったのかもしれませんが、新幹線の「N」というのは東海・西日本・九州に「N700系」があるので紛らわしい、そこでホッカイドウの「H」となったのだと思います。では、これで2016年3月へ向けて新函館(仮称)開業への問題はクリアされたのでしょうか? そうでもないのです。まだまだ難問が沢山あるのです。
まず、今回の「H5系」の発表にあたっても伝えられたように、在来線との共用部分(要するに青函トンネル区間)の速度は当面140キロに抑えられてしまう、この問題があります。青函トンネルというのは実に長大で全長が54キロもあるわけで、その前後を加えると共用部分は80キロぐらいあるわけです。新青森以北の今回開通区間が148キロですから、その半分以上を「新幹線でないスピード」で行かなくてはならないというのは大きなハンデになります。
というのも、一日に50本以上という貨物の大動脈であるこの区間で時速260キロを出してしまうと、貨物列車とのすれ違い時に「風」の影響で安全性が保てないとか、純粋に新幹線にしてしまうと法律上午前0時から6時までは運行を止めて点検しなくてはならないので貨物が通せなくなるとか、あるいは新幹線と在来線が混在する場合は法律も含めて信号システムをどうするか、と言った問題があるのです。
一部には、朝夕の1時間ずつを「速達型列車の専用タイム」として貨物列車とのすれ違いが起きないようなダイヤにして、その時間帯だけ260キロで走らせるという構想もあるのですが、上記の信号や法律の問題は依然としてクリアしていません。
更に厳冬期対策の問題があります。青函を出て少しの間はトンネル区間があるのですが、その先の木古内駅(仮称)から新函館駅(仮称)の間にはかなりの明かり区間があります。この区間は、新幹線史上例のない「寒冷地」になります。大雪が降っても、気温が低いので融雪システムが使えません。線路の凍結や、車両の着氷問題も本州とは全く次元の違う「未体験ゾーン」になります。現在試験走行が進んでいる北陸新幹線の豪雪対策などとは異次元の技術が必要になるのです。
更には新幹線に押される中で、何とか貨物列車のダイヤを組むとなると、夜行寝台列車が果たして割り込む余地があるのかという問題があります。昇圧対応をした機関車を新造できるのかという問題もあります。JR人気の豪華寝台列車「北斗星」「カシオペア」「トワイライト・エキスプレス」に関しては、果たして2016年3月以降も残せるのか、一部には廃止という報道もある中、気になるところです。
これに加えて、函館の駅名問題があります。建設中の新駅は実は函館市ではなく北斗市にあるので、地元では「新函館」ではなく「函館北斗」、いやこの際だから「北斗函館」にして欲しいという声があり調整がついていません。新函館(仮称)と函館市内のアクセスをちゃんとしないと、せっかく新幹線が来ても観光客が函館市内にスムーズに誘導できないとか、新函館(仮称)接続の札幌など道内各地向けの特急列車をどうするか(新造車両は間に合いそうもありません)などといった問題もあるのです。
そうは言っても、過疎高齢化の中で経済的苦境の続く北海道にとっては、新幹線は悲願です。様々な問題を乗り越えてまず、第一ステップである新函館(仮称)延伸を成功させて欲しいと思います。
この「北海道新幹線」については、JR北海道の一連の不祥事を受けて、「北海道側の新造車両」に関する発表が遅れていました。そのために、この間、色々な憶測が出ていたのも事実です。例えば、JR北海道には「新幹線運行の免許が下りないのではないか」とか、そのために、現在の津軽海峡線の「交流2万ボルト」をフル新幹線規格の「2万5千ボルト」に上げる昇圧を「見送る」、そうすれば青函トンネル以北は法的には新幹線ではなく「スーパー特急」になるので免許が不要だ、などという説まで地元では流れていました。
反対に、地元では、そんな妥協案でもいいから「2016年3月開業」だけは実現して欲しいという、悲痛な思いがあったということも言えます。
ですが、そうした懸念の霧は少しずつ晴れてきました。まず、青函トンネル区間というのは、全国屈指の「貨物列車の大動脈」なのですが、その区間の電圧アップに対応するために、JR貨物はEH800型という2万5千ボルト対応の可変電圧式の新型機関車を既に発注、第一号機は完成しているという事実があります。
また、当初から新幹線規格で作られている青函トンネル内を「標準軌・狭軌」の両方の車両が通過できるように「三線軌条化」する工事も進んでいます。更に、津軽半島内の工事、そして北海道側の工事も予定通り進捗しているのです。これに伴って、津軽海峡線の知内、吉岡海底、竜飛海底の三駅は廃止になりました。やがて新函館(仮称)になる現在の渡島大野駅の工事も相当に進み、その隣には車両基地も姿を表しています。
そんな中、4月15日にはようやくJR北海道から「北海道新幹線車両」の発表がありました。内容は、至極妥当なもので、現在東北新幹線「はやぶさ」の車両として、どんどん新造が進んでいる営業最高速度320キロのE5系を、ほぼそのままJR北海道も4編成発注するというのです。
但し、内装色には多少の独自性を出すのと、緑と白の基本的なカラーは同一であるものの、JR東日本のE5系ではピンク色だったアクセントのストライプが、北海道仕様では紫になり、名前も「H5系」となりました。ちなみに、紫というのはラベンダーやライラックの色ということだそうです。
北を表すNでも良かったのかもしれませんが、新幹線の「N」というのは東海・西日本・九州に「N700系」があるので紛らわしい、そこでホッカイドウの「H」となったのだと思います。では、これで2016年3月へ向けて新函館(仮称)開業への問題はクリアされたのでしょうか? そうでもないのです。まだまだ難問が沢山あるのです。
まず、今回の「H5系」の発表にあたっても伝えられたように、在来線との共用部分(要するに青函トンネル区間)の速度は当面140キロに抑えられてしまう、この問題があります。青函トンネルというのは実に長大で全長が54キロもあるわけで、その前後を加えると共用部分は80キロぐらいあるわけです。新青森以北の今回開通区間が148キロですから、その半分以上を「新幹線でないスピード」で行かなくてはならないというのは大きなハンデになります。
というのも、一日に50本以上という貨物の大動脈であるこの区間で時速260キロを出してしまうと、貨物列車とのすれ違い時に「風」の影響で安全性が保てないとか、純粋に新幹線にしてしまうと法律上午前0時から6時までは運行を止めて点検しなくてはならないので貨物が通せなくなるとか、あるいは新幹線と在来線が混在する場合は法律も含めて信号システムをどうするか、と言った問題があるのです。
一部には、朝夕の1時間ずつを「速達型列車の専用タイム」として貨物列車とのすれ違いが起きないようなダイヤにして、その時間帯だけ260キロで走らせるという構想もあるのですが、上記の信号や法律の問題は依然としてクリアしていません。
更に厳冬期対策の問題があります。青函を出て少しの間はトンネル区間があるのですが、その先の木古内駅(仮称)から新函館駅(仮称)の間にはかなりの明かり区間があります。この区間は、新幹線史上例のない「寒冷地」になります。大雪が降っても、気温が低いので融雪システムが使えません。線路の凍結や、車両の着氷問題も本州とは全く次元の違う「未体験ゾーン」になります。現在試験走行が進んでいる北陸新幹線の豪雪対策などとは異次元の技術が必要になるのです。
更には新幹線に押される中で、何とか貨物列車のダイヤを組むとなると、夜行寝台列車が果たして割り込む余地があるのかという問題があります。昇圧対応をした機関車を新造できるのかという問題もあります。JR人気の豪華寝台列車「北斗星」「カシオペア」「トワイライト・エキスプレス」に関しては、果たして2016年3月以降も残せるのか、一部には廃止という報道もある中、気になるところです。
これに加えて、函館の駅名問題があります。建設中の新駅は実は函館市ではなく北斗市にあるので、地元では「新函館」ではなく「函館北斗」、いやこの際だから「北斗函館」にして欲しいという声があり調整がついていません。新函館(仮称)と函館市内のアクセスをちゃんとしないと、せっかく新幹線が来ても観光客が函館市内にスムーズに誘導できないとか、新函館(仮称)接続の札幌など道内各地向けの特急列車をどうするか(新造車両は間に合いそうもありません)などといった問題もあるのです。
そうは言っても、過疎高齢化の中で経済的苦境の続く北海道にとっては、新幹線は悲願です。様々な問題を乗り越えてまず、第一ステップである新函館(仮称)延伸を成功させて欲しいと思います。