来日観光客向けのビジネスとして「カジノ」を含めた「統合型リゾート」というものが検討されているようです。安倍首相は、シンガポールのアジア安全保障会議に出席して、サンズ運営の「マリーナ・ベイ・サンズ」とゲンティンが所有する「リゾート・ワールド・セントーサ」を訪問して、こうしたビジネスを高く評価していました。
ですが、私はあまりウキウキするような感じは持てないのです。というのは、こうした「統合型リゾート」というものが、果たして「日本にわざわざ観光に来る」層にアピールするのか疑問だからです。
そもそも「統合型リゾート」というのは何なのでしょう? それは、一旦チェックインしたら、何から何までそのリゾート内で遊んで満足できるような「全部入り」のリゾートということであり、要するに「空港からそのリゾートに来て、その滞在だけで満足できる」という作りになっているわけです。
遊びだけでなく、例えば「インセンティブ旅行を兼ねた会議」とか「バケーションを兼ねた来場者を想定した見本市」などという半分仕事のツアーの場合でも、「コンベンション・センター」とホテル、カジノ、レストラン、プールやフィットネス、ショー観劇といった機能が統合されていれば、「その施設だけ」で全てが完結するわけです。
では、どうして統合型にするのかというと、運営企業としては単なる宿泊だけでなく、料飲部門やカジノを含むエンターテインメント部門の売上を含めた、パッケージとして収益を稼ぐことができるからです。これはビジネスの側の事情です。
一方で、観光客の場合はどうかというと、便利だということがあります。とにかく、その施設だけで全てが完結するのですから、面倒ではないし、例えば治安や交通に問題があるとか、その施設以外にはロクな飲食店やエンターテインメントがないという場合は、その統合型リゾートで満足できるということになります。
ですから、例えばバハマ諸島やケイマン、ジャマイカ、セント・トーマスといったカリブ海のリゾート地、大都市から離れたフロリダのリゾート、メキシコのリゾート、ワイキキ以外のハワイのリゾートなどは、そうした作りになっているわけです。こうしたロケーションには、豊かな自然はある代わりに、カルチャーに関するアピール度は弱いからです。
では、東京の場合はどうでしょう?
その前に他の成熟国の大都市を考えてみることにしましょう。例えば、ニューヨークにはありません。ロンドンにも、パリにもありません。こうした成熟国の大都市には、どうして統合型のリゾートがないのでしょうか?
必要がないからです。こうした都市の場合、外国からの観光客が期待するのは「その都市ならではの経験」です。つまりカルチャーの力であり、具体的には極めて高度なパフォーマンス芸術、美術館・博物館、高いレベルもしくはお国柄を反映した食文化、そして買い物、更には都市の中の散策、地元の人との交流といった経験です。
仮にサンズか何かが、パリに「統合型リゾート」なるものを作って、その中で「全てが完結」するようにしたとします。ホテルがあり、カジノがあって、後は観光客向けのフランス料理屋があり、観光客向けの例えばですがレビュー・ショーの観劇があり、土産物屋がありというような施設です。
全く魅力はないと思います。観光客がわざわざ高い飛行機代を払ってパリに行くのは、本物のカルチャーの経験をしたいからです。地元のパリの人が行く路地裏のレストランに行き、オペラ座に行き、コンサートを聞きに行き、そしてパリの色々なホンモノの老舗で買い物がしたいからです。
東京の場合も全く同じだと思います。例えば、サンズが経営する「サンズ・トウキョウ・サムライ・リゾート」なるものがお台場にできたとして、そこには多少和風のコンセプトの内装にしたホテルがあり、カジノがあり、二流の歌舞伎まがいのショーが見られ、着物まがいのインチキな浴衣などを売る土産物屋があり、「なんちゃって日本食」のレストランがありというようなコンセプトでは、お客は来るでしょうか?
来ないと思います。
そうではなくて、外国人観光客は、それこそ「すきやばし次郎」のような「ホンモノの寿司店」に行って、地元の日本人と同じように「黙って儀式のように寿司が食べてみたい」し、秋葉原や原宿の街歩きをして現在の日本を経験し、歌舞伎座に行って最高の舞台を見て、更には築地市場を見学したり、鎌倉の寺社を拝観してこの国の長い歴史を実感したりしたいのです。新宿や渋谷のネオンきらめく雑踏へ足を踏み入れて、日本のカルチャーの「聖地巡礼」がしたいのです。そのために大枚をはたいて、家族揃って10時間以上もかけてやって来るのです。
統合型リゾートは、東京のような成熟国の大都市には向きません。まして、カルチャーを前面に出して十分に勝負のできる東京には必要ないと思います。その代わり、もっともっと街中で英語が通じるようにするとか、飲食店や小売店がもっと外国人向けの配慮をする、そのための具体的な工夫を街を挙げて研究するといった地道な努力を積み重ねる方が、はるかに効果はあると思います。
ですが、私はあまりウキウキするような感じは持てないのです。というのは、こうした「統合型リゾート」というものが、果たして「日本にわざわざ観光に来る」層にアピールするのか疑問だからです。
そもそも「統合型リゾート」というのは何なのでしょう? それは、一旦チェックインしたら、何から何までそのリゾート内で遊んで満足できるような「全部入り」のリゾートということであり、要するに「空港からそのリゾートに来て、その滞在だけで満足できる」という作りになっているわけです。
遊びだけでなく、例えば「インセンティブ旅行を兼ねた会議」とか「バケーションを兼ねた来場者を想定した見本市」などという半分仕事のツアーの場合でも、「コンベンション・センター」とホテル、カジノ、レストラン、プールやフィットネス、ショー観劇といった機能が統合されていれば、「その施設だけ」で全てが完結するわけです。
では、どうして統合型にするのかというと、運営企業としては単なる宿泊だけでなく、料飲部門やカジノを含むエンターテインメント部門の売上を含めた、パッケージとして収益を稼ぐことができるからです。これはビジネスの側の事情です。
一方で、観光客の場合はどうかというと、便利だということがあります。とにかく、その施設だけで全てが完結するのですから、面倒ではないし、例えば治安や交通に問題があるとか、その施設以外にはロクな飲食店やエンターテインメントがないという場合は、その統合型リゾートで満足できるということになります。
ですから、例えばバハマ諸島やケイマン、ジャマイカ、セント・トーマスといったカリブ海のリゾート地、大都市から離れたフロリダのリゾート、メキシコのリゾート、ワイキキ以外のハワイのリゾートなどは、そうした作りになっているわけです。こうしたロケーションには、豊かな自然はある代わりに、カルチャーに関するアピール度は弱いからです。
では、東京の場合はどうでしょう?
その前に他の成熟国の大都市を考えてみることにしましょう。例えば、ニューヨークにはありません。ロンドンにも、パリにもありません。こうした成熟国の大都市には、どうして統合型のリゾートがないのでしょうか?
必要がないからです。こうした都市の場合、外国からの観光客が期待するのは「その都市ならではの経験」です。つまりカルチャーの力であり、具体的には極めて高度なパフォーマンス芸術、美術館・博物館、高いレベルもしくはお国柄を反映した食文化、そして買い物、更には都市の中の散策、地元の人との交流といった経験です。
仮にサンズか何かが、パリに「統合型リゾート」なるものを作って、その中で「全てが完結」するようにしたとします。ホテルがあり、カジノがあって、後は観光客向けのフランス料理屋があり、観光客向けの例えばですがレビュー・ショーの観劇があり、土産物屋がありというような施設です。
全く魅力はないと思います。観光客がわざわざ高い飛行機代を払ってパリに行くのは、本物のカルチャーの経験をしたいからです。地元のパリの人が行く路地裏のレストランに行き、オペラ座に行き、コンサートを聞きに行き、そしてパリの色々なホンモノの老舗で買い物がしたいからです。
東京の場合も全く同じだと思います。例えば、サンズが経営する「サンズ・トウキョウ・サムライ・リゾート」なるものがお台場にできたとして、そこには多少和風のコンセプトの内装にしたホテルがあり、カジノがあり、二流の歌舞伎まがいのショーが見られ、着物まがいのインチキな浴衣などを売る土産物屋があり、「なんちゃって日本食」のレストランがありというようなコンセプトでは、お客は来るでしょうか?
来ないと思います。
そうではなくて、外国人観光客は、それこそ「すきやばし次郎」のような「ホンモノの寿司店」に行って、地元の日本人と同じように「黙って儀式のように寿司が食べてみたい」し、秋葉原や原宿の街歩きをして現在の日本を経験し、歌舞伎座に行って最高の舞台を見て、更には築地市場を見学したり、鎌倉の寺社を拝観してこの国の長い歴史を実感したりしたいのです。新宿や渋谷のネオンきらめく雑踏へ足を踏み入れて、日本のカルチャーの「聖地巡礼」がしたいのです。そのために大枚をはたいて、家族揃って10時間以上もかけてやって来るのです。
統合型リゾートは、東京のような成熟国の大都市には向きません。まして、カルチャーを前面に出して十分に勝負のできる東京には必要ないと思います。その代わり、もっともっと街中で英語が通じるようにするとか、飲食店や小売店がもっと外国人向けの配慮をする、そのための具体的な工夫を街を挙げて研究するといった地道な努力を積み重ねる方が、はるかに効果はあると思います。