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CO2回収事業がカナダで本格稼働

ニューズウィーク日本版 2014年10月2日 18時29分

 商業ベースでは世界初の炭素回収貯留(CCS)事業がカナダの石炭火力発電所で本格稼動を開始した。140億ドルをかけたこの事業によって、CCS技術の今後の発展に大きな一歩が刻まれたことになる。CCSは化石燃料の燃焼による地球温暖化の進行に待ったをかける技術として期待されている。

 カナダの大手電力会社サスクパワーは10月2日、サスカチワン州にある傘下の発電所バウンダリーダム(発電容量110メガワット)にCCS施設の稼動を指示した。

 バウンダリーダムのCCS施設は隣接する発電施設から出る二酸化炭素(CO2)の約90%を回収し、近くの油田に圧入することで石油生産の増加に活用する。小規模の試験的なCCS事業は世界各地ですでに始まっているが、バウンダリーダムの事業はこれまでの最大規模で、サスクパワーによると、カナダの年間のCO2排出量のおよそ0.2%に当たる年間100万トン前後のCO2を回収する能力がある。

 国際エネルギー機関(IEA)はこの事業をCCS技術の普及に「弾みをつける一歩」と評価している。「化石燃料の消費は今後も数十年続く見込みで、CCSの普及は必須だ」と、マリア・ファンデルフーフェンIEA事務局長は1日に発表された声明で述べている。「CCSは化石燃料を継続的な消費を可能にし、エネルギー部門の炭素排出を削減する唯一の既知の技術だ」

 IEAの試算では、壊滅的な気候変動を回避するために2050年までに世界が達成すべき排出削減のうち、およそ17%は発電所や天然ガス処理、鉄鋼、肥料製造などのプラントにCCSを導入することで削減できるという。CCSを導入しない場合は、化石燃料の確認埋蔵量のざっと7割を地中に残したままにしなければ、海面上昇や自然災害の頻発・大型化など地球温暖化の最悪の影響を避けられないと、IEAは警告している。



 世界各地の発電所で20数件のCCS事業が試験的に稼動中で、アメリカでは既存の3カ所に加え、ミシシッピ州とテキサス州で新施設の建設が進んでいる。しかし計画の遅れやコスト超過で、これらの事業のほとんどが苦戦を強いられている。

 エネルギー企業や政府は化石燃料を燃やし続けるためにCCSに多額の予算を投入しているが、再生可能エネルギー開発に注力するほうが賢明だという声もある。

 CCSはエネルギー効率の改善や再生可能エネルギー開発に投入すべき「重要な資金の無駄遣い」になると、自然保護団体シエラクラブのカナダ支部の責任者ジョン・ベネットは批判する。「化石燃料からの脱皮にはつながらない。化石燃料は使用を減らすだけではなく、『脱・化石燃料』の技術開発を進めるべきだ」

 一方、米科学者団体「憂慮する科学者同盟」は、電力部門のCO2排出を削減する技術の1つとして、CCSの有効性を認めている。しかし、最近発表した報告書では、CCSに大きく依存した削減策は長期的には「エネルギー効率改善と再生可能エネルギー利用を柱とする削減策よりも高くつく」と結論づけている。

 バウンダリーダム事業が実績を上げれば、こうした批判も収まると推進派は期待する。「バウンダリ―ダムは批判派への反証となる」と、イギリス最大のCCS研究機関スコティッシュ・カーボン・キャプチャー&ストレージのスチュアート・ヘーゼルダイン所長は言う。「補助金なしでも本格的な商業稼働が可能となれば、世界中で導入に拍車がかかるだろう」

マリア・ガルーチ

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