どうやら、今回の「解散風」はホンモノのようです。確かに、一部調査によれば国民の70%が「消費税率10%アップの先送り」を支持しているという環境下では、「先送りのための法改正について民意を問う」というのは、大義名分になります。
また仮に「1年半の先送り」をするという「公約」を与党が掲げた場合には、目先の勝利の可能性は高いと思います。ですが、仮に勝ったとしても、安倍内閣としては以降の政権運営がラクになるとは限りません。そこには、大きな問題があるからです。
それは、経済が不調だということです。いわゆる「アベノミクス」の狙った「円安」と「株高」は「黒田バズーカ砲」に再度依存しつつ、とりあえず実現しています。ですが、肝心の成長率がアップしません。また産業構造の転換も、そのための構造改革もほとんど進捗していません。この点で結果が出なければ来年半ば以降の政権は苦労するでしょう。しかも「1年半の先送り」をしたとして、2017年4月の経済は「10%」に耐えられるようにしなくてはならないのです。
では、野党にチャンスはあるのでしょうか?
仮に今回は自民党が優勢となるにしても、その「次」の政局では野党にチャンスがあるのでしょうか? 難しいと思います。現実問題として、野党が勢力を伸ばす可能性は大きくはありません。
もちろん、分裂した野党の結集が難しいという問題があります。その結果として小選挙区制における対立の「軸」ができないのです。「軸」が形成できない中では、結局は与党への批判票をバラバラに分け合うだけで勝負になりません。
では、現時点で日本の政治における「軸」とは何なのでしょうか? 政権交代は望めないにしても、仮に選挙があったとして、どんな「軸」を考えながら投票したらいいのでしょうか?
まず軍事や外交におけるイデオロギーはどうでしょう? 安倍内閣の発足以来、この問題では色々な論争がありました。ですが、現時点では「主要な争点」にはなりにくいと思います。
というのは、日中首脳会談が実現し米中の関係も改善する中で、安倍政権の右傾化であるとか、ナショナリズムを押すのか引くのかといった「イデオロギー論争」の重要性は軽減されているからです。もちろん、仮に沖縄県知事選で翁長氏が勝った場合に、その結果を総選挙で「上書き」していいのかとか、いわゆる「安保国会」における集団的自衛権の関連法に関する賛否という問題はありますが、主要な争点にはできないでしょう。
では、今回の「消費税率アップの先送り」そのものに関してはどうでしょう? 景気への影響、あるいは「先送りは国際公約違反」だとして「日本国債の暴落を招く」といった懸念など、賛否両論の立場はあり得ます。ですが、人間の本性としての増税への忌避感ということを考えると、この消費税問題そのものの賛否を問う選挙戦というのは難しいと思います。
では、具体的に何を争点として「軸」を形成していったらいいのでしょうか?
(1)まず、地方の問題があります。現在のところでは、地方の問題に関しては「強度のバラマキ」(生活)、「中度のバラマキ」(自民)、「バラマキの抑制」(民主)、「バラマキへの反対」(維新)という差があるように見えます。ですが、このままでは地理的な利害をそれぞれに代表するだけで、理念的なものは見えてきません。「地方が経済的に自立」しつつ「人口減少を緩和する」立場を、どこかで作っていかなければなりません。
(2)更には世代間の矛盾を調整しなければなりません。例えば消費税アップを先送りにした場合は、自動的に「社会保障の一体改革」の財源に問題が生じます。これに対して、給付を下げて負担を上げるという対策は高齢者の利害に反します。一方で、消費税以外の負担増ということになると現役世代の利害に反します。教育や子育てへの分配も受益者は限られた世代になります。
(3)何よりも構造改革を進めなくてはなりません。ですが、個人にしても所属企業や従事している産業が「国際市場での競争力がない」場合には、既得権の死守に走ることになります。一方で「競争力がある」側は「その競争力をいかせない」という規制への反発や、「ない」側を養うコスト負担の問題があるわけです。また国内の規制が改革できない場合は、競争力のある個人や企業はどんどん国外へ出て行くことになります。その結果として、国内のGDPは縮小し、人口も流入を制限する中で流出超過トレンドが続きます。そうした「海外移転」をどう抑制するか、あるいは海外に移転しても課税できる道を模索するのか、ある意味では構造改革と表裏一体の問題があります。
こうしたテーマは、それぞれの有権者の属性と密接不可分ですが、うまく「自分のポジションに合った組み合わせ」がないと、政治的な無関心を呼びがちです。自民党が現在強いのは、こうした3つの軸を束ねて「やや短期的利害に基づく功利主義」をバラまいているからです。
これに対しては、その自民党の軸に「対抗する組み合わせ」は現在のところはありません。ですが、少なくとも、年末に予想される総選挙ではそうした「軸」を意識しながら各党の言動をよく見ていくことが大切だと思います。
また仮に「1年半の先送り」をするという「公約」を与党が掲げた場合には、目先の勝利の可能性は高いと思います。ですが、仮に勝ったとしても、安倍内閣としては以降の政権運営がラクになるとは限りません。そこには、大きな問題があるからです。
それは、経済が不調だということです。いわゆる「アベノミクス」の狙った「円安」と「株高」は「黒田バズーカ砲」に再度依存しつつ、とりあえず実現しています。ですが、肝心の成長率がアップしません。また産業構造の転換も、そのための構造改革もほとんど進捗していません。この点で結果が出なければ来年半ば以降の政権は苦労するでしょう。しかも「1年半の先送り」をしたとして、2017年4月の経済は「10%」に耐えられるようにしなくてはならないのです。
では、野党にチャンスはあるのでしょうか?
仮に今回は自民党が優勢となるにしても、その「次」の政局では野党にチャンスがあるのでしょうか? 難しいと思います。現実問題として、野党が勢力を伸ばす可能性は大きくはありません。
もちろん、分裂した野党の結集が難しいという問題があります。その結果として小選挙区制における対立の「軸」ができないのです。「軸」が形成できない中では、結局は与党への批判票をバラバラに分け合うだけで勝負になりません。
では、現時点で日本の政治における「軸」とは何なのでしょうか? 政権交代は望めないにしても、仮に選挙があったとして、どんな「軸」を考えながら投票したらいいのでしょうか?
まず軍事や外交におけるイデオロギーはどうでしょう? 安倍内閣の発足以来、この問題では色々な論争がありました。ですが、現時点では「主要な争点」にはなりにくいと思います。
というのは、日中首脳会談が実現し米中の関係も改善する中で、安倍政権の右傾化であるとか、ナショナリズムを押すのか引くのかといった「イデオロギー論争」の重要性は軽減されているからです。もちろん、仮に沖縄県知事選で翁長氏が勝った場合に、その結果を総選挙で「上書き」していいのかとか、いわゆる「安保国会」における集団的自衛権の関連法に関する賛否という問題はありますが、主要な争点にはできないでしょう。
では、今回の「消費税率アップの先送り」そのものに関してはどうでしょう? 景気への影響、あるいは「先送りは国際公約違反」だとして「日本国債の暴落を招く」といった懸念など、賛否両論の立場はあり得ます。ですが、人間の本性としての増税への忌避感ということを考えると、この消費税問題そのものの賛否を問う選挙戦というのは難しいと思います。
では、具体的に何を争点として「軸」を形成していったらいいのでしょうか?
(1)まず、地方の問題があります。現在のところでは、地方の問題に関しては「強度のバラマキ」(生活)、「中度のバラマキ」(自民)、「バラマキの抑制」(民主)、「バラマキへの反対」(維新)という差があるように見えます。ですが、このままでは地理的な利害をそれぞれに代表するだけで、理念的なものは見えてきません。「地方が経済的に自立」しつつ「人口減少を緩和する」立場を、どこかで作っていかなければなりません。
(2)更には世代間の矛盾を調整しなければなりません。例えば消費税アップを先送りにした場合は、自動的に「社会保障の一体改革」の財源に問題が生じます。これに対して、給付を下げて負担を上げるという対策は高齢者の利害に反します。一方で、消費税以外の負担増ということになると現役世代の利害に反します。教育や子育てへの分配も受益者は限られた世代になります。
(3)何よりも構造改革を進めなくてはなりません。ですが、個人にしても所属企業や従事している産業が「国際市場での競争力がない」場合には、既得権の死守に走ることになります。一方で「競争力がある」側は「その競争力をいかせない」という規制への反発や、「ない」側を養うコスト負担の問題があるわけです。また国内の規制が改革できない場合は、競争力のある個人や企業はどんどん国外へ出て行くことになります。その結果として、国内のGDPは縮小し、人口も流入を制限する中で流出超過トレンドが続きます。そうした「海外移転」をどう抑制するか、あるいは海外に移転しても課税できる道を模索するのか、ある意味では構造改革と表裏一体の問題があります。
こうしたテーマは、それぞれの有権者の属性と密接不可分ですが、うまく「自分のポジションに合った組み合わせ」がないと、政治的な無関心を呼びがちです。自民党が現在強いのは、こうした3つの軸を束ねて「やや短期的利害に基づく功利主義」をバラまいているからです。
これに対しては、その自民党の軸に「対抗する組み合わせ」は現在のところはありません。ですが、少なくとも、年末に予想される総選挙ではそうした「軸」を意識しながら各党の言動をよく見ていくことが大切だと思います。