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中国密漁船を破壊せよ インドネシアの選択

ニューズウィーク日本版 2015年1月6日 15時20分

 インドネシアの領海内で違法操業している中国の船を発見した場合、沈没させることも考えている──。今月上旬、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の外交政策アドバイザーが訪米中に明らかにした。

「最近ベトナムの漁船を沈めた。次は中国の漁船かもしれない」と、ジャカルタの戦略国際研究センターのリザル・スクマ所長は、ワシントンのインドネシア大使館で聴衆を前に語った。

 インドネシアでは今月初め、同国の領海内で違法に操業していたベトナム漁船3隻を軍が拿捕。乗組員を拘束した後、無人の船を爆破して沈没させた。違法操業のせいでインドネシアは毎年240億ドル以上の損失を被っており、その抑止に乗り出したわけだ。ベトナム船の爆破後に別の海域で拿捕した中国漁船22隻についても、中国側の反発を覚悟で沈没させるのかどうかが注目を集めている。
 
 中国船の拿捕を受けて、スシ・プジアストゥティ海洋水産相は、外務省からインドネシアの中国大使館に抗議し対応を協議するようルトノ・マルスディ外相に要請したと語った。しかしその一方で、大統領が許可すれば拿捕した船を破壊することも検討しているという。

 中国外務省の報道官は、インドネシア当局と協力して詳しい状況を確認中で、インドネシア側に「中国人乗組員の安全および法的権利の確保と適切な対応」を求めていると語った。

 インドネシアが中国船を沈めれば、当然中国との関係悪化につながりかねない。中国はインドネシアにとって最大の貿易相手国であり、インドネシアを訪れる外国人観光客は中国人が最も多い。中国からの投資は拡大しており、昨年秋に習近平(シー・チンピン)国家主席が就任後初めて同国を訪問した際は、両国の関係を包括的戦略パートナーシップに格上げすることで合意した。

 両国の蜜月ムードは高まる一方だ。インドネシアは中国主導のアジアインフラ投資銀行への参加を正式表明し、ジャカルタに本部を置くことを提案。中国からの観光客倍増も目指している。ジョコ政権は重要な海洋開発構想でも中国と密接に協力していく構えだ。



「手加減するな」との声も

 ただ違法操業に対しては、各国からの要請にもかかわらず、インドネシア当局は今のところ厳罰で臨む方針を変えていない。違法操業する外国船に対して監視・捜査当局が沈没を含む厳罰で臨むことは09年の漁業法で定めている、と一貫して主張している。ジョコ自身は諸外国の抗議に対し、「純粋な刑事事件」であって「周辺国との関係には影響しない」と説明するよう外相に要請済みだと弁解した。

 インドネシア国内でも、有効な抑止策にするためには、どの国の船であろうと沈没させるべきだという声が上がっている。インドネシア防衛大学のサリム・サイド教授は、政府は「違法操業する船に対して手加減すべきではない。インドネシアの領海に侵入する余地を二度と与えてはならない」と発言した。

 相手は中国船だけではない。先月上旬に西カリマンタン州付近の海域で拿捕したタイの漁船5隻についても、リザルは沈没させる可能性を示唆した。スシも近日中に再び外国の漁船を沈没させると発言したが、詳細についてはコメントを避けた。

 インドネシアが拿捕した外国船は先週の時点で150隻を超えているとみられている。ジョコによれば、領海内で違法操業する船は、ベトナム、フィリピン、マレーシア、中国の漁船を中心に毎日およそ5400隻。蜜月の終わりを覚悟してでも強硬策を模索するという、難しいかじ取りを強いられている。

[2014.12.23号掲載]
プラシャント・パラメスワラン

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