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迷走続くアメリカ政治、打開のカギは共和党にあり

ニューズウィーク日本版 2015年1月9日 12時55分

 今年のアメリカの民主主義に誰も多大な期待はしていない。アメリカ人ならなおさらだ。13年には債務上限引き上げをめぐって協議が難航、一部政府機関が閉鎖される事態に陥った。長引く膠着状態に国民の政治不信は膨れ上がっている。

 米ギャラップの世論調査では、政府機関閉鎖に陥った直後の13年11月、議会支持率は1974年の調査開始以来最低の9%に低下。昨年11月の中間選挙直前も14%と低迷が続いた。過去10年近く有権者の大部分が政府に不満があると回答し、74年のニクソン大統領辞任につながったウォーターゲート事件当時を上回ることも珍しくない。

 オバマ大統領の好感度についても同じことが言える。昨年の中間選挙では、オバマの政策に対する有権者の不満を反映し、上院でも共和党が多数派になった。この分では膠着状態も当分打開できそうにない。

 その後もオバマ政権と議会共和党の協力と歩み寄りを期待する人々にとっては、あまり明るい兆しは見られなかった。

 共和党はオバマが政策を強行すれば宣戦布告と受け取ると牽制。一方のオバマは対決姿勢を鮮明にし、移民制度改革で大統領令を発令し、気候変動対策などでもその権限を行使する構えだ。共和党も上院の承認を必要とする任命人事を承認せず、オバマの目玉法案を潰し、政権運営を難しくしてやると応戦。一方、共和党議員が大喜びしそうな法案にはオバマが拒否権を行使するのは必至だ。

 それでもいくつかの理由で、今年はやや改善が望めるかもしれない。共和党と民主党が建設的に協力するとは考えにくいが、かすかな希望はある。手を組むことが双方のプラスになる千載一遇のチャンスだからだ。

 オバマにしてみれば、その図式はかなり分かりやすい。任期が残すところ2年となって、歴代の大統領と同様、確実な遺産づくりに余念がない。非常に党派色の強い中で舵取りを迫られてきただけになおさらだ。



厳格な保守路線は不可能

 共和党のほうがより複雑で、来年の連邦議会選挙も視野に入れなければならない。同選挙で再選を目指す上院議員は民主党の10人に対し、共和党は24人。こうした共和党上院議員の多くが、民主党支持者の多い州や両党の支持者が拮抗する州で票を争うことになる。

 共和党は、08年と12年の大統領選でオバマが勝利した7州で議席を守らなければならない。民主党の支持基盤が強固な地域のため、多くの共和党議員は厳格な保守路線を取るわけにはいかないだろう。来年までイデオロギー色の強い議会運営を続ければ再選は不可能だ。そのためここ数年とは違って、現実に結果を出さなければならない共和党議員が存在する。つまり、必要とあれば党派を超えて民主党議員と協力しなければならないわけだ。

 共和党のマコネル上院院内総務も膠着打開のカギを握る。上院トップで守旧派のマコネルは、超党派合意を目指す実務肌の交渉屋だ。13年の政府機関閉鎖を招いた共和党議員を批判し、高リスクの政治戦略に走れば共和党の支持率も低下すると考えている。

 マコネルは早くも通商や税制改革や大規模インフラ投資の一部で、オバマ政権との合意が可能という見方を示している。同時に、本来は民主党が強い選挙区で再選を目指す共和党上院議員がいることも忘れてはいない。何しろ一定数の議員が再選を果たせなければ、彼自身が上院トップの座を追われるのだから。

 そのためにはもちろん、マコネルら共和党幹部が党内をまとめなければならない。草の根保守派連合ティーパーティーは、ほとんどの法案で党内と協力する気がない。民主党議員はもとより、共和党穏健派とさえ協力しているとみられるのは汚点だと、彼らは考えている。共和党議員の中にも上院の多数派になった以上はまとまりを示したいという意見はあるが、中間選挙でティーパーティー系の強硬派議員が増えたのも事実だ。

 今年のアメリカ政治がどの方向に向かうかはオバマではなく、共和党幹部がどの程度リーダーシップを発揮できるかに懸かっているのかもしれない。

[2015.1.13号掲載]
ウィリアム・ドブソン(本誌コラムニスト)

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