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「朝型勤務」で仕事の効率は上がるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 2015年2月6日 12時36分

 報道によると、日本政府が長時間労働の見直しに向けて「朝型勤務」を普及させる意向だそうです。この「朝型勤務」ですが、すでに伊藤忠商事などが実施していて、伊藤忠のホームページには「効率化が実現した」という報告が掲載されています。

 伊藤忠の場合は2013年10月から2014年3月までを「トライアル期間」として「22時以降の深夜勤務は禁止」、「20時以降の残業も原則禁止」とする一方、「午前5~8時の時間帯」に「150%の割り増し賃金」をつける形で「朝型勤務」へと誘導したそうです。

 結果としては、総合職の1カ月の残業時間が導入前は「49時間11分」だったのが、「45時間20分」と約4時間減になったということで、「第三者保証業務」を行う大手会計事務所の系列法人による保証書が示されています。

 この4時間の「効率化」ですが、理由としては次のような要素が考えられます。

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(1)仕事を大きく「対面型」と「個人作業型」に分けるのであれば、「対面型」は主として9時から5時の「定時」に行われる可能性が高い。その場合に「個人作業型」の業務を、一日の仕事で疲労した更に後に行うよりも、疲労から回復した早朝に行う方が効率が上がる可能性はある。

(2)「対面型」が「残業時間帯」に食い込んだ場合には「個人作業型」の作業が断続的になったり、深夜に追いやられたりすることがある。早朝の場合はそうした「邪魔」が入らない。

(3)「個人作業型」の中には翌日の会議や営業活動のための「資料作り」があるが、「下手をすれば終電でもいいや」という「時間の余裕」があるよりも、「当日の朝で、本番まで残り数時間」という切羽詰まった状態の方が集中力とスピードが出る。

 そんなところでしょうか? そう考えると、この「朝型勤務」を試す価値はありそうです。実際に最近東京の通勤電車では、早朝時間帯の混雑が増しているようにも感じますから、伊藤忠だけでなく、似たような事例が多くなってきているのだと思います。

 では、この「朝型勤務」は「ワーク・ライフ・バランス」の改善や、「成長戦略」になるのでしょうか?



 違うと思います。それは、仮に伊藤忠の例が意味のある実験だったとすると、「誰にも邪魔されない」時間帯というのが「午前5~8時」という早朝の時間帯しかない、つまり、そのぐらい「定時」から「宵の口」というのは「対面型業務」に時間を取られていると証明したことでしょう。

 日本のオフィスワークが非効率なのは、この「対面型コミュニケーション」に異常なまでに時間を割かなければならない点で、ここにメスが入らなければ生産性の向上も難しいし、ましてや外国人などの多様な人材を加えてチームワークを作って行くことは困難です。

 この「朝型勤務」のメリットとして、北米のオフィスの午後の遅い時間と重なるので、対面型コミュニケーションが取りやすいという点を挙げる向きもあります。ですが、現地採用社員が幹部クラスも含めてそろそろ帰宅準備に入る午後4時台などにテレビ会議を増やしたからといって、日本のオフィスと北米オフィスの連携が向上して効率化できるとは、一般論として思えません。

 つまり「朝型勤務」にすると効率が上がるということ、それ自体が「日中の働き方」がいかに非効率かということの証明になっている、この点に気付いて業務の改善をしていかなければ「成長戦略」にも「ワーク・ライフ・バランス」の改善にもならないと思います。

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