ウクライナ東部で親ロシア派勢力がどこまで支配地域を広げるのかという問題に世界中が目を奪われている間に、ロシアは新たな領土拡大計画を着々と進めているかもしれない。
ターゲットは、90年代前半にグルジアから実質的な分離独立を果たしたアブハジア自治共和国と南オセチア自治州だ。ロシアは08年、国際社会の反対を押し切って両地域の独立を一方的に承認。通貨ルーブルの使用を認め、安全保障や政治面で支援してきたが、ここにきて実効支配を一段と強めようとしている。
ロシアは昨年11月、アブハジアと軍事面や経済面の連携を深める協定を結び、先週には南オセチアとも包括的な協定を締結。親欧米路線を取るグルジア政府は、ロシアが両地域の併合に踏み切る兆しではないかと不安を募らせている。米外交政策研究所のマイケル・セシールも、ロシアの支配権を強化する一連の協定は「併合に非常に近い」と指摘する。
ウクライナ問題をめぐる欧米からの経済制裁と原油価格の暴落によって、ロシア財政は火の車だ。にもかかわらず、このタイミングで両地域への経済支援を強化する背景には、旧ソ連圏の国々が欧州陣営に取り込まれるのを阻止するという長期的な戦略を最優先する判断があったとみられる。
ウクライナ東部の親ロシア派勢力をたきつけたり、ロシア系住民が多いモルドバ東部の沿ドニエストル地域の独立運動を支援しているのも、その一環だろう。ウクライナとモルドバ、グルジアの3カ国は昨年、EUとの関係を強化する連合協定に調印したが、ロシアとの領土紛争を抱えている限り、NATOやEU加盟への道は険しい。
もっともロシア側は、協定締結がアブハジアと南オセチアの併合に向けた布石だという臆測を一蹴している。政府系のシンクタンクである独立国家共同体研究所のウラジーミル・エフセーエフによれば、ロシア当局は政治的な緊張関係が続くグルジアを刺激したくないと考えているという。両国間には「既に問題が存在する」と彼は言う。「これ以上関係を悪化させる必要はない」
[2015.3. 3号掲載]
ダン・ペレシュク
ターゲットは、90年代前半にグルジアから実質的な分離独立を果たしたアブハジア自治共和国と南オセチア自治州だ。ロシアは08年、国際社会の反対を押し切って両地域の独立を一方的に承認。通貨ルーブルの使用を認め、安全保障や政治面で支援してきたが、ここにきて実効支配を一段と強めようとしている。
ロシアは昨年11月、アブハジアと軍事面や経済面の連携を深める協定を結び、先週には南オセチアとも包括的な協定を締結。親欧米路線を取るグルジア政府は、ロシアが両地域の併合に踏み切る兆しではないかと不安を募らせている。米外交政策研究所のマイケル・セシールも、ロシアの支配権を強化する一連の協定は「併合に非常に近い」と指摘する。
ウクライナ問題をめぐる欧米からの経済制裁と原油価格の暴落によって、ロシア財政は火の車だ。にもかかわらず、このタイミングで両地域への経済支援を強化する背景には、旧ソ連圏の国々が欧州陣営に取り込まれるのを阻止するという長期的な戦略を最優先する判断があったとみられる。
ウクライナ東部の親ロシア派勢力をたきつけたり、ロシア系住民が多いモルドバ東部の沿ドニエストル地域の独立運動を支援しているのも、その一環だろう。ウクライナとモルドバ、グルジアの3カ国は昨年、EUとの関係を強化する連合協定に調印したが、ロシアとの領土紛争を抱えている限り、NATOやEU加盟への道は険しい。
もっともロシア側は、協定締結がアブハジアと南オセチアの併合に向けた布石だという臆測を一蹴している。政府系のシンクタンクである独立国家共同体研究所のウラジーミル・エフセーエフによれば、ロシア当局は政治的な緊張関係が続くグルジアを刺激したくないと考えているという。両国間には「既に問題が存在する」と彼は言う。「これ以上関係を悪化させる必要はない」
[2015.3. 3号掲載]
ダン・ペレシュク