朝鮮労働党は党発足70周年を記念して、実に310個もの政治スローガンを発表した。党機関紙に2ページにわたって掲載されたスローガンは、英語の翻訳で7000語を超える。
「魚の養殖の嵐を全土に吹かせろ!」「将校の妻は夫の信頼できる補佐官たれ!」「キノコ栽培を科学的に集約させて産業化し、わが国をキノコの国にしよう!」など、さまざまな趣の標語が並ぶ。その大半は、子供の食生活の向上や電力の安定供給、官僚主義の簡素化など、国全体の課題に関するものだ。
14年前に脱北して現在は韓国に暮らす男性(57)は、スローガンの愛国主義に、人々はとりたてて感動するわけではないと語る。「私たちはスローガンの雪崩に埋もれていた。忠誠心を示すために多くのスローガンを覚えたが、次第に誰の心にも響かなくなった。90年代の飢饉以降は特に無意味だった」
温室を増やせというスローガンは何十年も前からあるが、「温室を建てるビニールも温室を温める燃料も、どこにもなかった」と、男性は振り返る。
厳しい現実と、スローガンが描くバラ色の世界との格差を埋めるかのように、人々はひそかにスローガンを作り換える。90年の「千里の苦難が万里の幸福をもたらす」は、「千里の苦難の先に、次の千里の困難が待っている」。98年の「この先の道が危険でも、笑いながら進もう!」は、「勝手に笑いながら行けばいいが、私たちまで道連れにするのか」という具合だ。
「金日成(キム・イルソン)と金正日(キム・ジョンイル)は偉大な太陽」というスローガンは、「彼らはまさに太陽だ。近づき過ぎれば焼死して、離れ過ぎれば凍え死ぬ」。金ファミリーに接近すれば裕福になれるが、激しい怒りを買う危険もあるというわけだ。つい最近も、公式の場で金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の隣に並ぶ場面も多かった将軍が、意見の相違を理由に処刑されている。
勇ましい掛け声と厳し過ぎる現実の溝は、埋まりそうにない。
[2015.2.24号掲載]
シュアン・シム
「魚の養殖の嵐を全土に吹かせろ!」「将校の妻は夫の信頼できる補佐官たれ!」「キノコ栽培を科学的に集約させて産業化し、わが国をキノコの国にしよう!」など、さまざまな趣の標語が並ぶ。その大半は、子供の食生活の向上や電力の安定供給、官僚主義の簡素化など、国全体の課題に関するものだ。
14年前に脱北して現在は韓国に暮らす男性(57)は、スローガンの愛国主義に、人々はとりたてて感動するわけではないと語る。「私たちはスローガンの雪崩に埋もれていた。忠誠心を示すために多くのスローガンを覚えたが、次第に誰の心にも響かなくなった。90年代の飢饉以降は特に無意味だった」
温室を増やせというスローガンは何十年も前からあるが、「温室を建てるビニールも温室を温める燃料も、どこにもなかった」と、男性は振り返る。
厳しい現実と、スローガンが描くバラ色の世界との格差を埋めるかのように、人々はひそかにスローガンを作り換える。90年の「千里の苦難が万里の幸福をもたらす」は、「千里の苦難の先に、次の千里の困難が待っている」。98年の「この先の道が危険でも、笑いながら進もう!」は、「勝手に笑いながら行けばいいが、私たちまで道連れにするのか」という具合だ。
「金日成(キム・イルソン)と金正日(キム・ジョンイル)は偉大な太陽」というスローガンは、「彼らはまさに太陽だ。近づき過ぎれば焼死して、離れ過ぎれば凍え死ぬ」。金ファミリーに接近すれば裕福になれるが、激しい怒りを買う危険もあるというわけだ。つい最近も、公式の場で金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の隣に並ぶ場面も多かった将軍が、意見の相違を理由に処刑されている。
勇ましい掛け声と厳し過ぎる現実の溝は、埋まりそうにない。
[2015.2.24号掲載]
シュアン・シム