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クラウドファンディングの次の一手は「オープンイノベーション」

ニューズウィーク日本版 2015年3月31日 11時50分

外部の新発想やユーザーの意見を商品開発に取り込む新たな手法

 ビジネスのアイデアを公開し、その内容に賛同した一般の人たちから資金を提供してもらうクラウドファンディング。銀行などに頼らない資金集めの方法として認知されているが、企画から製品化に至るまでの新しい商品開発のあり方を提示したことでも注目を集めている。資金を提供する賛同者を募ると同時に、マーケティングとしての機能も併せ持っているためだ。

 さらに、その機能を進化させ、外部の新しい発想やユーザーから寄せられたアイデアを商品開発のプロセスに反映させる「オープンイノベーション」が、今世界的なイノベーションの新たな手法として確立されつつある。

 例えばイノベーション先進国のアメリカでは、大手企業とベンチャー企業がパートナーシップを組み、双方の技術や人材を共有して商品やビジネスモデルを開発することがあたりまえになってきている。またアンケートなどを通じてユーザーから商品に関する意見を取り入れ、商品名やデザインの決定に反映させる「オープンイノベーション」専門のサイトも登場している。

 日本国内ではこれまで、商品が発売されるまで社外には情報を出さない「クローズドイノベーション」が主流だった。しかし最近になって、この「オープンイノベーション」を実践する動きが出てきた。

 そのひとつが、今年2月に人材総合サービス会社のリクルートキャリアが開設した「はたらき方」を革新するサービスを提案するサイト「カクシン」だ。サイト上では、開発中の商品やサービスの実例が紹介され、メルマガで会員登録したユーザーが、ちょうどフェイスブックの「いいね!」のように「ほしい!」ボタンをクリックする。この「ほしい!」の数が多くなると製品化が後押しされる仕組みだ。

 紹介されている商品のうち「ほしい!」が最も多くクリックされているのが『ケースキャン』(http://kakushin.works/products/000001)。一般的な名刺入れよりもひとまわり大きいマシンに名刺を入れると、名刺に記載された情報がデータ化され、ワイヤレスでパソコンやスマホなどの端末に転送される。取引先でもらった名刺を入れるだけで、その後エクセルに情報を打ち込むといった管理作業がすべて不要になる。

 また、スマホのGPS機能と連携して営業マンの日報作成作業を簡略化する、ワークログを利用した営業支援アプリは、自分の行動記録から訪問先の企業が自動的に推定され、挨拶や商談といった訪問目的の項目を選ぶことで日報ができてしまう仕組みだ。

 「カクシン」が紹介するのはいずれも、「はたらき方」を革新する、をコンセプトに企画された商品やアプリで、現在サイトには5000を超える「ほしい!」の声が集まっている。今後はユーザーが参加できる座談会の場を設けるなど、様々な形式でアイデアを募っていく。また紹介したプロジェクトに対して、企業側から参加のアプローチも寄せられている。

 「オープンイノベーション」によって、メーカーは商品の発売以前の段階でユーザーの細かいニーズを商品開発に反映させることができる。イノベーションを加速させるこの新しいプラットフォームが、日本でも主流になる日は近いのではないだろうか。

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