最初にお断りしておきますが、私としては東京大学が駒場キャンパスに設置した「教養学部英語コース(PEAK)」に関しては、それほどのワクワクは感じていません。理由は単純で、直接的には本郷や柏の学部の国際化にはならないからです。
秋入学構想の停滞に象徴されるように、東大の国際化が決して加速していない現実の中で「国際日本研究コース」あるいは「国際環境学コース」に絞った「英語での教育」というPEAKのコンセプトは、明らかに過渡的な措置だと思います。
とにかく、東大は全学がPEAKにならなくてはならないのです。全学の国際化が進まない中で、「隔離された存在」としてPEAK「だけ」を推進するのは、あくまで暫定的な話であるべきです。
例えば工学部で「東大が最先端」である領域の先進性を維持してゆくとか、世界における日本文化や日本語研究で最高の研究機関であろうとするならば、教育も研究も半分以上は英語で行い、世界から優秀な学生と研究者を集めなくては競争力を維持できません。
だからと言って、現在のPEAKを批判するつもりはありません。良い研究者を集めて、良い教育が行われているという評判を聞いていますし、仮にこのPEAKが失敗に終われば、東大の国際化は更に遅滞すると思われるからです。
このPEAKに関しては、2014年度の選考(14年4月合否発表、9月入学)に関して「辞退率が高かった」という報道がされています。事実としては、合格者の約70%が辞退し、入学したのは30%というところのようです。
報じ方のニュアンスですが、各メディアの姿勢を見てみますと「最難関が滑り止めに」(共同)、「東大、世界に蹴られる」(読売)というようにネガティブなものが多く、これではPEAKは失敗というイメージが広がってしまうおそれがあります。
冗談ではありません。全く正反対だと思います。この「70%辞退」というのは「勲章」です。大学として新しいコースの立ち上げに頑張っているとして、数字として評価されて当然であり、批判される筋合いのものではありません。
まず国際的な大学入試の世界では「併願」は当たり前です。統一試験のスコアと書類選考、そしてアポの調整が可能な面接だけという制度上、無限に併願が可能なシステムだからです。
その結果、どんな大学でも最低でも20%程度の辞退率はあります。例えば、アイビー8校の中で、比較的定員の少ないハーバード、プリンストン、イエールの3校はいずれも出願者比で倍率20倍前後という難関ですが、相互に併願が発生するために入試事務室としては併願を見越した合否判定に苦慮しているのが現状です。
何に苦労するのかというと、「併願による辞退」が起きるのを前提として、最終的に「入学する新入生集団の質と数を適正に確保」するのが大変だからです。
トップ層をどう引き止めるか、早期選考(専願の大学と併願可の大学があります)ではどのレベルまで合格を出すか、本選考では辞退を見越した合格の上乗せをどうするか、補欠はどうするか、など入試事務室の苦労は絶えないそうです。
さらにその他の大規模校、中位校などの場合は同様の苦労を通じて「毎年少しずつでも入学する集団のレベルを上げていく」ことが求められるわけです。その場合に入試事務室は「辞退」に関してどう考えるのでしょうか?
基本は「辞退者が出る」というのは「良いこと」だという理解をします。どうしてかというと、「他校」に生徒が流れたということは、「自校の現時点での入学者集団」と比較して「より上位の学生が少なくとも応募してくれた」あるいは「入学先の候補として考慮してくれた」ということだからです。
例えば、入学案内のホームページなどでは「本校合格者の標準的な併願先」ということをアピールする学校があります。その場合に、明らかに「その学校より上位」の校名が書いていることが多いのですが、それは「こんな学校に受かった学生も本校に出願していますよ。進学先として真剣に見てくれていますよ」というメッセージになるからです。
要するに「併願が当たり前」である英語圏の大学では、新設校や発展途上の学校の場合は「まず優秀層に出願してもらう」ことが大切で、最初は辞退されても仕方がないのです。毎年その中から数名でも優秀層が入学してくれば、学生の質も、従ってディスカッション形式の授業の内容も上がって行くこととなり、やがて卒業生が社会で活躍して行くことで大学の評価は上がっていく、そうした考え方をします。
東大PEAKの場合ですが、もちろん辞退理由を分析して、奨学金制度の不備であるとか、コース内容が限られているといった「問題点」を見出して改善するというのは良いことです。
ですが、辞退者が大量に出たというのは、国際的に見ればアジアにある実績ゼロの新設学科に過ぎないこのコースに、「もっと上を目指す優秀層」が大量に応募してくれたということなのです。これはコースの立ち上げ期においては成功なのです。今年もPEAKは、もうすぐ(4月15日)合否の発表を行いますが、辞退が発生することを前提に合否を出すでしょうし、それで良いのです。
これに対して、PEAK以外の東大の科類には、現状では、英語圏の優秀な学生を受け入れて教育水準を高めていく受け皿すらないわけです。そんな中で、PEAKを成功させ拡大してゆくことは急務であると思います。
秋入学構想の停滞に象徴されるように、東大の国際化が決して加速していない現実の中で「国際日本研究コース」あるいは「国際環境学コース」に絞った「英語での教育」というPEAKのコンセプトは、明らかに過渡的な措置だと思います。
とにかく、東大は全学がPEAKにならなくてはならないのです。全学の国際化が進まない中で、「隔離された存在」としてPEAK「だけ」を推進するのは、あくまで暫定的な話であるべきです。
例えば工学部で「東大が最先端」である領域の先進性を維持してゆくとか、世界における日本文化や日本語研究で最高の研究機関であろうとするならば、教育も研究も半分以上は英語で行い、世界から優秀な学生と研究者を集めなくては競争力を維持できません。
だからと言って、現在のPEAKを批判するつもりはありません。良い研究者を集めて、良い教育が行われているという評判を聞いていますし、仮にこのPEAKが失敗に終われば、東大の国際化は更に遅滞すると思われるからです。
このPEAKに関しては、2014年度の選考(14年4月合否発表、9月入学)に関して「辞退率が高かった」という報道がされています。事実としては、合格者の約70%が辞退し、入学したのは30%というところのようです。
報じ方のニュアンスですが、各メディアの姿勢を見てみますと「最難関が滑り止めに」(共同)、「東大、世界に蹴られる」(読売)というようにネガティブなものが多く、これではPEAKは失敗というイメージが広がってしまうおそれがあります。
冗談ではありません。全く正反対だと思います。この「70%辞退」というのは「勲章」です。大学として新しいコースの立ち上げに頑張っているとして、数字として評価されて当然であり、批判される筋合いのものではありません。
まず国際的な大学入試の世界では「併願」は当たり前です。統一試験のスコアと書類選考、そしてアポの調整が可能な面接だけという制度上、無限に併願が可能なシステムだからです。
その結果、どんな大学でも最低でも20%程度の辞退率はあります。例えば、アイビー8校の中で、比較的定員の少ないハーバード、プリンストン、イエールの3校はいずれも出願者比で倍率20倍前後という難関ですが、相互に併願が発生するために入試事務室としては併願を見越した合否判定に苦慮しているのが現状です。
何に苦労するのかというと、「併願による辞退」が起きるのを前提として、最終的に「入学する新入生集団の質と数を適正に確保」するのが大変だからです。
トップ層をどう引き止めるか、早期選考(専願の大学と併願可の大学があります)ではどのレベルまで合格を出すか、本選考では辞退を見越した合格の上乗せをどうするか、補欠はどうするか、など入試事務室の苦労は絶えないそうです。
さらにその他の大規模校、中位校などの場合は同様の苦労を通じて「毎年少しずつでも入学する集団のレベルを上げていく」ことが求められるわけです。その場合に入試事務室は「辞退」に関してどう考えるのでしょうか?
基本は「辞退者が出る」というのは「良いこと」だという理解をします。どうしてかというと、「他校」に生徒が流れたということは、「自校の現時点での入学者集団」と比較して「より上位の学生が少なくとも応募してくれた」あるいは「入学先の候補として考慮してくれた」ということだからです。
例えば、入学案内のホームページなどでは「本校合格者の標準的な併願先」ということをアピールする学校があります。その場合に、明らかに「その学校より上位」の校名が書いていることが多いのですが、それは「こんな学校に受かった学生も本校に出願していますよ。進学先として真剣に見てくれていますよ」というメッセージになるからです。
要するに「併願が当たり前」である英語圏の大学では、新設校や発展途上の学校の場合は「まず優秀層に出願してもらう」ことが大切で、最初は辞退されても仕方がないのです。毎年その中から数名でも優秀層が入学してくれば、学生の質も、従ってディスカッション形式の授業の内容も上がって行くこととなり、やがて卒業生が社会で活躍して行くことで大学の評価は上がっていく、そうした考え方をします。
東大PEAKの場合ですが、もちろん辞退理由を分析して、奨学金制度の不備であるとか、コース内容が限られているといった「問題点」を見出して改善するというのは良いことです。
ですが、辞退者が大量に出たというのは、国際的に見ればアジアにある実績ゼロの新設学科に過ぎないこのコースに、「もっと上を目指す優秀層」が大量に応募してくれたということなのです。これはコースの立ち上げ期においては成功なのです。今年もPEAKは、もうすぐ(4月15日)合否の発表を行いますが、辞退が発生することを前提に合否を出すでしょうし、それで良いのです。
これに対して、PEAK以外の東大の科類には、現状では、英語圏の優秀な学生を受け入れて教育水準を高めていく受け皿すらないわけです。そんな中で、PEAKを成功させ拡大してゆくことは急務であると思います。