2016年の大統領選に向けて共和党からの出馬表明が相次いでいます。現時点で公式に出馬表明をしているのが6人前後、さらに有力視されている候補まで入れると10人強という数を見ると「ずいぶん多い」という印象になるのは分かります。ところでこれは「乱立」、つまり候補が多すぎて党全体としては不利になるような状況なのでしょうか。
違うと思います。
まず、候補者はどんなに多くても、最終的には2016年夏の党大会までには一本化されるのです。それは間違いありません。また、過去に熾烈な予備選を戦ったケースは民主・共和両党ともに色々なケースがありますが、遺恨とか怨念が残るようなこともないのです。ですから、候補が多いことで内部分裂や票の分散が起きるということは基本的には考えなくていいのです。
それにしても、今回は確かに数が多いのは事実です。また、ここへ来て俗に言う「保守系」の立候補が増えています。さすがに、ここまで増えると「予備選を勝ち抜いて党の代表候補になる」のは難しいわけで、それでも立候補するというのは、どうしてなのでしょう?
まず、共和党全体としては「勝機あり」と見ている、それが今回の立候補ラッシュの背景にはあると思います。民主党の候補はヒラリー・クリントン氏でほぼ一本化されています。そしてヒラリーという人は、有権者の認知度は抜群ですし、現時点での世論調査では共和党の各候補を圧倒しているのは事実です。
ですが、そのヒラリーの「勢い」にかげりが出てきているのも事実です。例えば、現在のところは、夫のビル・クリントン氏が主宰している「クリントン・イニシアティブ」の問題が話題になっています。この国際NGOは「ロシアなどを含めた外国政府からの献金」も幅広く受け取っていることから、妻のヒラリーが国務長官時代に「献金を受け取った国には外交面で配慮をしていたのでは?」という疑惑が大きく取り上げられているのです。
この問題、そして以前あった「個人のメールアドレスを公務使用していた」疑惑など、共和党としては「ヒラリーは疑惑だらけ」というイメージが一定程度定着したと見ており、攻勢に出ているというわけです。
では、どうして候補がゾロゾロ出てくると、党全体として「攻勢」になるのでしょう? それは簡単な理屈です。要するにニュースに取り上げられるからです。ですから、この時期には適度な間隔を置いて、1人また1人というように次々に立候補声明をしていけば、その都度話題が盛り上がるわけです。
例えば、最も支持率が高く「本命視」されているジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事などは、まだ正式な立候補宣言はしていませんが、話題性を作るタイミングをはかっているだけで、予備選の初期に主戦場となるアイオワ州などで、既に遊説を開始しています。
立候補宣言が一巡したら、今度は予備選前からどんどんお互いの論戦が始まります。やがてTV討論になっていくわけですが、ここではお互いに政策論争だけでなく、中傷合戦など泥仕合的なものも出てきます。ですが、それも盛り上がりの一つであり、話題性が出てくれば党の選挙運動全体の勢いになるのです。
ちなみに、この時点まで各候補は必死になって運動資金を集めてプールします。そして、12月末からの予備選・党員集会へ向けての選挙戦本番(投票は年明け以降)になると、TVでのCMを投入して激しい戦いに突入していきます。以降は、支持率が取れればカネが集まり、反対に負けが込むとカネも細ってきて順次「退場」になっていくというシステムです。
そんなわけで、この「予備選までまだ7カ月」という現段階では、各候補共にどんどん「レースに飛び込んで行く時期」ということになります。
実は、この「大統領選レース」に多くの政治家が飛び込んでいくのには、もう一つ理由があります。それは「最後の1人」になれなくても「副大統領候補」になるという可能性です。
例えば今回の共和党の予備選では、ジェブ・ブッシュ氏が軸になることが考えられます。その場合、保守系の候補たちとしては、もちろんこれからの序盤戦では「ジェブ氏は真正保守ではない」ということで価値観論争を挑んでいくでしょう。ですが、仮にジェブ氏という中道派が逃げ切った場合には、今度は「共和党の保守票を棄権させない」ために「ランニング・メイト(=一緒に選挙戦を走る副大統領候補)」は「保守派が指名される」という可能性があるわけで、その期待感があるのは否定できません。
例えば、同じブッシュ家の過去の大統領たちは、例えば父親のジョージ・H・W・ブッシュの場合は宗教保守派のダン・クエールを、そして兄のジョージ・W・ブッシュの場合は軍事タカ派のディック・チェイニーをそれぞれ副大統領候補に指名しています。二度あることは三度あるというわけで、例えば今回名乗りを上げたハッカビー氏などには、そうした計算はあるでしょう。
また元HP会長のカーリー・フィオリーナ氏や、アフリカ系の医師であるベン・カーソン氏といった候補についても、それぞれ女性票や有色人種票を獲得するパワーを買われて、最終的には「副大統領候補」に指名される可能性があるわけです。
いずれにしても、現在の共和党に大統領候補が「ひしめいている」状況は、党としてヒラリーとの対決に「ヤル気満々」ということだと思います。これは、「乱立」というニュアンスとは程遠いと言えるでしょう。
違うと思います。
まず、候補者はどんなに多くても、最終的には2016年夏の党大会までには一本化されるのです。それは間違いありません。また、過去に熾烈な予備選を戦ったケースは民主・共和両党ともに色々なケースがありますが、遺恨とか怨念が残るようなこともないのです。ですから、候補が多いことで内部分裂や票の分散が起きるということは基本的には考えなくていいのです。
それにしても、今回は確かに数が多いのは事実です。また、ここへ来て俗に言う「保守系」の立候補が増えています。さすがに、ここまで増えると「予備選を勝ち抜いて党の代表候補になる」のは難しいわけで、それでも立候補するというのは、どうしてなのでしょう?
まず、共和党全体としては「勝機あり」と見ている、それが今回の立候補ラッシュの背景にはあると思います。民主党の候補はヒラリー・クリントン氏でほぼ一本化されています。そしてヒラリーという人は、有権者の認知度は抜群ですし、現時点での世論調査では共和党の各候補を圧倒しているのは事実です。
ですが、そのヒラリーの「勢い」にかげりが出てきているのも事実です。例えば、現在のところは、夫のビル・クリントン氏が主宰している「クリントン・イニシアティブ」の問題が話題になっています。この国際NGOは「ロシアなどを含めた外国政府からの献金」も幅広く受け取っていることから、妻のヒラリーが国務長官時代に「献金を受け取った国には外交面で配慮をしていたのでは?」という疑惑が大きく取り上げられているのです。
この問題、そして以前あった「個人のメールアドレスを公務使用していた」疑惑など、共和党としては「ヒラリーは疑惑だらけ」というイメージが一定程度定着したと見ており、攻勢に出ているというわけです。
では、どうして候補がゾロゾロ出てくると、党全体として「攻勢」になるのでしょう? それは簡単な理屈です。要するにニュースに取り上げられるからです。ですから、この時期には適度な間隔を置いて、1人また1人というように次々に立候補声明をしていけば、その都度話題が盛り上がるわけです。
例えば、最も支持率が高く「本命視」されているジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事などは、まだ正式な立候補宣言はしていませんが、話題性を作るタイミングをはかっているだけで、予備選の初期に主戦場となるアイオワ州などで、既に遊説を開始しています。
立候補宣言が一巡したら、今度は予備選前からどんどんお互いの論戦が始まります。やがてTV討論になっていくわけですが、ここではお互いに政策論争だけでなく、中傷合戦など泥仕合的なものも出てきます。ですが、それも盛り上がりの一つであり、話題性が出てくれば党の選挙運動全体の勢いになるのです。
ちなみに、この時点まで各候補は必死になって運動資金を集めてプールします。そして、12月末からの予備選・党員集会へ向けての選挙戦本番(投票は年明け以降)になると、TVでのCMを投入して激しい戦いに突入していきます。以降は、支持率が取れればカネが集まり、反対に負けが込むとカネも細ってきて順次「退場」になっていくというシステムです。
そんなわけで、この「予備選までまだ7カ月」という現段階では、各候補共にどんどん「レースに飛び込んで行く時期」ということになります。
実は、この「大統領選レース」に多くの政治家が飛び込んでいくのには、もう一つ理由があります。それは「最後の1人」になれなくても「副大統領候補」になるという可能性です。
例えば今回の共和党の予備選では、ジェブ・ブッシュ氏が軸になることが考えられます。その場合、保守系の候補たちとしては、もちろんこれからの序盤戦では「ジェブ氏は真正保守ではない」ということで価値観論争を挑んでいくでしょう。ですが、仮にジェブ氏という中道派が逃げ切った場合には、今度は「共和党の保守票を棄権させない」ために「ランニング・メイト(=一緒に選挙戦を走る副大統領候補)」は「保守派が指名される」という可能性があるわけで、その期待感があるのは否定できません。
例えば、同じブッシュ家の過去の大統領たちは、例えば父親のジョージ・H・W・ブッシュの場合は宗教保守派のダン・クエールを、そして兄のジョージ・W・ブッシュの場合は軍事タカ派のディック・チェイニーをそれぞれ副大統領候補に指名しています。二度あることは三度あるというわけで、例えば今回名乗りを上げたハッカビー氏などには、そうした計算はあるでしょう。
また元HP会長のカーリー・フィオリーナ氏や、アフリカ系の医師であるベン・カーソン氏といった候補についても、それぞれ女性票や有色人種票を獲得するパワーを買われて、最終的には「副大統領候補」に指名される可能性があるわけです。
いずれにしても、現在の共和党に大統領候補が「ひしめいている」状況は、党としてヒラリーとの対決に「ヤル気満々」ということだと思います。これは、「乱立」というニュアンスとは程遠いと言えるでしょう。