イスラム過激派にも人気、トヨタ「ハイラックス」の評判

　トヨタは今週、世界各地で人気の小型ピックアップトラック「ハイラックス」の新型モデルを発表した。10年ぶりのフルモデルチェンジとあって外観は一新され、パワーもハイテク装備もレベルアップした。しかしオーストラリアの荒野からシリアの戦場まで、その頑丈さが幅広く支持されているハイラックスだけに、トヨタのカーデザイナーは女性ドライバーの使用は想定していないようだ。そしてその選択はおそらく間違っていない。



シリアのアサド政権と戦う自由シリア軍の兵士たち（4月23日）　© Khalil Ashawi-REUTERS
 


　ハイラックスを高く評価するもう１つの大事な顧客は、中東の武装勢力だ。シリアの内戦では、アサド独裁政権と戦うＩＳＩＳと自由シリア軍の双方がハイラックスを使って攻防戦を繰り広げた。安くて頑丈で信頼性の高いハイラックスは、本物の軍用車が手に入らない武装勢力にとっては部隊や重機関銃を運べる優れ物だ。



車列を作って進むリビアの反乱軍「デルナ・イスラム青年評議会」（2014年10月）　© REUTERS
 



　中東の戦場では、対空用の高射砲を搭載できる同じトヨタの「ランドクルーザー」とよく一緒に使われている。この２台があれば、戦闘員を運びながら地上戦にもヘリコプター攻撃にも対応できる１部隊ができあがる。



荷台に対空ミサイルを装備したアルカイダ系過激派組織「ヌスラ戦線」の車両（2014年11月）　© Abdalrhman Ismail-REUTERS
 


　アフガニスタンでは紛争中に、トヨタのトラックの人気があまりに高いため、中国製の偽造車が出回った程だ。地元のユーザーは、武装勢力でないことを示すために、カナダの国旗のシールをトラックに貼るようになった。「ハイラックスのブランドイメージから、今ではカナダの国旗が高品質のシンボルになっている」と、軍事関係者は話している。



アルヌスラ戦線の兵士。武装勢力数人で移動でき、機関銃の銃座として使える（2014年12月）　© Khalil Ashawi- REUTERS
 


　中東でトヨタのトラックの評価が高いのは、高温での使用に耐えることに加え、サービス網が充実していることがある。新品、中古品を問わず、純正パーツが簡単に安く手に入る。エジプト辺境では、80年代のランドクルーザーがいまだに遊牧民ベドウィンの間で普及している。羊飼いは、荷台の側面のフックに加工製品や家畜をぶら下げるという実用的な使い方もしている。



ISISに制圧されたイラク・ラマディから避難する住民たち。ハイラックスは中東の市民にも人気だ（5月15日）　© REUTERS
 


　今回のフルモデルチェンジで第８世代となる2016年型ハイラックスは、その頑丈さを維持しつつ、車内設備の快適さが追加されている。ダッシュボードにはタッチスクリーンを採用し、ピックアップトラックとしてはめずらしく後方カメラを搭載した。

　さらに実用的な機能では、積載重量が１トンに増やされている。これなら羊飼いも武装勢力も納得できるお買い得商品だ。

アンジェロ・ヤング