今年2015年3月14日に長野~金沢間が延伸開業した北陸新幹線は、現時点では西へ延ばし福井経由で敦賀までのフル規格整備が決まっています。建設を担当する鉄道・運輸機構も、開業後実際に運行するJR西日本も「金沢~敦賀間は2022年に開業」という計画を前提に工事や準備を進めていました。
ところが、今年に入って雲行きが変わって来ました。自民党内の「与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム」の座長が、亡くなった町村信孝前衆院議長から稲田朋美政調会長に変わると共に、「福井先行開業」の声が大きくなってきたのです。目標は「2020年、オリンピックの年」に福井先行開業を実現するというのです。
この「金沢~福井間」ですが、既に様々な準備はされています。例えば、今回の金沢延伸に伴って建設された「白山車両基地」は金沢駅から福井へ向かって約10キロ西へ行ったところにありますから、この区間は既に完成しているわけです。また福井駅やその周辺も一部の高架橋などの整備は先行しています。
ですが、建設計画はあくまで「金沢~敦賀」ということで進んでいました。というのは、暫定的であれ、福井が終点になるのであれば「折り返し用の留置線」が必要になるからです。現在の計画では福井駅は「ホームが1つ」の「1面2線」という設計になっており、留置線の計画はありません。それどころか、現在その「新幹線福井駅」の構造はほぼ完成しているのです。
ホームを「2面4線」にしておけば良かったのかもしれませんが、そうなると「高速での通過」が可能となり、仮に敦賀の先も完成して大阪や京都から北陸方面に向かう新幹線ができた時に「速達型が停車しない」可能性があるわけです。福井が早々に「1面2線」の駅を作ってしまったのには、「全列車を停車させる」という「決意」を示すという事情もあったのでしょう。
このまま「留置線」がないままに「終点」としてしまうと、色々な問題が生じます。例えば22~23時台に異常気象などでダイヤが乱れた場合、下りの最終が来ていないと翌朝のダイヤの回復ができない、あるいは車両点検が必要な場合に場所がないなど、とにかく「終点駅には留置線が必要」です。そして夜間も含めて、常に予備の編成を留置しておくことが鉄則なのです。
この「留置線」ですが、福井駅の周辺で用地を検討していたのですが、適当な場所がないことから、6月1日のミーティングでは候補地として、鉄道・運輸機構サイドから福井の北15キロほどの「あわら市近辺の水田地帯でどうか」という提案があったそうです。これに対して与党自民党の議員たちからは「一歩一歩前進」だとか「技術的な問題はない」などの発言が出た、中日新聞の電子版はそう伝えています。
では、本当に問題はないのでしょうか? 実は、たくさんあります。
まず、この留置線の設置費用(概算)として、約80億円がかかるそうです。2年後に「終点でなく」なれば不要になる設備に、です。また、敦賀開業で進めていた運行管理システムの改修に相当なカネ(一部報道では数100億円?)がかかるとか、橋梁工事の日程から逆算すると2020年の福井延伸を実現するためには「ふた冬かけた試験走行・習熟運転」ができない危険があるとも言われています。
これだけでも問題なのですが、さらに大きな難問があるのです。同じ留置線でも、金沢から白山車両基地への回送は「現在の営業区間の先」ですから、10キロ離れていても本線のダイヤを妨害はしません。ところが、「あわら市近辺」つまり、福井から「金沢方面に15キロ戻った地点」に留置線を設けるとなると、本線のダイヤとの問題が出てきます。
福井新聞が他紙と共同で展開しているサイトによれば、6月1日の会合でJR西日本からは、留置線が2本の場合、福井から金沢方面に向かう新幹線は1時間に1本になるという説明があったというのです。これでは、大阪・京都・米原方面から福井に入る特急(「サンダーバード」「しらさぎ」)が1時間に3本(現在のダイヤによる)と仮定すると、福井~金沢間の新幹線は特急より本数が少なくなり接続が難しくなります。
さらに言えば、せっかく福井~東京間が新幹線で直通になっても、その1時間に1本の新幹線の輸送力のうちの「相当な部分」は大阪や京都から来て金沢・富山へ乗り継ぐ人に割り当てなくてはなりません。今は、同じことが金沢乗り換えで起きていて、その対策としては西から「サンダーバード」「しらさぎ」で来た乗客が富山まで行くための「つるぎ」というローカル新幹線特急があるわけですが、「1時間に1本」の「発着枠」が東京行きの「かがやき」になると、「つるぎ」は福井には入って来られません。
そこで、JR西日本は「3セク化される並行在来線には特急は乗り入れない」という「大原則」を破って、「福井が新幹線の終点になる」数年間は、「サンダーバード」「しらさぎ」を金沢まで乗り入れる判断もある、というようなことを言っています。これでは、費用対効果としては何のための福井延伸開業であるか分かりません。そのウラには、西から来る在来線特急の折り返し設備が福井にないので、それを作ったら、そっちにもカネがかかるという問題があると思われます。
さらに言えば、金沢と福井の間には「小松」「加賀温泉」「芦原(あわら)温泉」の3駅が建設中ですが、「1時間に1本」の枠のほとんどが速達型の「かがやき」になるのであれば、この3駅に停車する新幹線は「1日に数本」しか設定できなくなります。
与党プロジェクトチームは「7月中には結論を」出す見通しのようですが、ほぼ手詰まりになったのではないでしょうか? 金沢開業の盛り上がりを見ていると、福井が焦る気持ちも分からないではないのですが、とにかく「福井先行開業」は無理筋です。その際の80億円とか、さらにシステムに数100億円というカネがあるのであれば、米原方面延伸(まだルートは未決定)のために使うべきでしょう。
ところが、今年に入って雲行きが変わって来ました。自民党内の「与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム」の座長が、亡くなった町村信孝前衆院議長から稲田朋美政調会長に変わると共に、「福井先行開業」の声が大きくなってきたのです。目標は「2020年、オリンピックの年」に福井先行開業を実現するというのです。
この「金沢~福井間」ですが、既に様々な準備はされています。例えば、今回の金沢延伸に伴って建設された「白山車両基地」は金沢駅から福井へ向かって約10キロ西へ行ったところにありますから、この区間は既に完成しているわけです。また福井駅やその周辺も一部の高架橋などの整備は先行しています。
ですが、建設計画はあくまで「金沢~敦賀」ということで進んでいました。というのは、暫定的であれ、福井が終点になるのであれば「折り返し用の留置線」が必要になるからです。現在の計画では福井駅は「ホームが1つ」の「1面2線」という設計になっており、留置線の計画はありません。それどころか、現在その「新幹線福井駅」の構造はほぼ完成しているのです。
ホームを「2面4線」にしておけば良かったのかもしれませんが、そうなると「高速での通過」が可能となり、仮に敦賀の先も完成して大阪や京都から北陸方面に向かう新幹線ができた時に「速達型が停車しない」可能性があるわけです。福井が早々に「1面2線」の駅を作ってしまったのには、「全列車を停車させる」という「決意」を示すという事情もあったのでしょう。
このまま「留置線」がないままに「終点」としてしまうと、色々な問題が生じます。例えば22~23時台に異常気象などでダイヤが乱れた場合、下りの最終が来ていないと翌朝のダイヤの回復ができない、あるいは車両点検が必要な場合に場所がないなど、とにかく「終点駅には留置線が必要」です。そして夜間も含めて、常に予備の編成を留置しておくことが鉄則なのです。
この「留置線」ですが、福井駅の周辺で用地を検討していたのですが、適当な場所がないことから、6月1日のミーティングでは候補地として、鉄道・運輸機構サイドから福井の北15キロほどの「あわら市近辺の水田地帯でどうか」という提案があったそうです。これに対して与党自民党の議員たちからは「一歩一歩前進」だとか「技術的な問題はない」などの発言が出た、中日新聞の電子版はそう伝えています。
では、本当に問題はないのでしょうか? 実は、たくさんあります。
まず、この留置線の設置費用(概算)として、約80億円がかかるそうです。2年後に「終点でなく」なれば不要になる設備に、です。また、敦賀開業で進めていた運行管理システムの改修に相当なカネ(一部報道では数100億円?)がかかるとか、橋梁工事の日程から逆算すると2020年の福井延伸を実現するためには「ふた冬かけた試験走行・習熟運転」ができない危険があるとも言われています。
これだけでも問題なのですが、さらに大きな難問があるのです。同じ留置線でも、金沢から白山車両基地への回送は「現在の営業区間の先」ですから、10キロ離れていても本線のダイヤを妨害はしません。ところが、「あわら市近辺」つまり、福井から「金沢方面に15キロ戻った地点」に留置線を設けるとなると、本線のダイヤとの問題が出てきます。
福井新聞が他紙と共同で展開しているサイトによれば、6月1日の会合でJR西日本からは、留置線が2本の場合、福井から金沢方面に向かう新幹線は1時間に1本になるという説明があったというのです。これでは、大阪・京都・米原方面から福井に入る特急(「サンダーバード」「しらさぎ」)が1時間に3本(現在のダイヤによる)と仮定すると、福井~金沢間の新幹線は特急より本数が少なくなり接続が難しくなります。
さらに言えば、せっかく福井~東京間が新幹線で直通になっても、その1時間に1本の新幹線の輸送力のうちの「相当な部分」は大阪や京都から来て金沢・富山へ乗り継ぐ人に割り当てなくてはなりません。今は、同じことが金沢乗り換えで起きていて、その対策としては西から「サンダーバード」「しらさぎ」で来た乗客が富山まで行くための「つるぎ」というローカル新幹線特急があるわけですが、「1時間に1本」の「発着枠」が東京行きの「かがやき」になると、「つるぎ」は福井には入って来られません。
そこで、JR西日本は「3セク化される並行在来線には特急は乗り入れない」という「大原則」を破って、「福井が新幹線の終点になる」数年間は、「サンダーバード」「しらさぎ」を金沢まで乗り入れる判断もある、というようなことを言っています。これでは、費用対効果としては何のための福井延伸開業であるか分かりません。そのウラには、西から来る在来線特急の折り返し設備が福井にないので、それを作ったら、そっちにもカネがかかるという問題があると思われます。
さらに言えば、金沢と福井の間には「小松」「加賀温泉」「芦原(あわら)温泉」の3駅が建設中ですが、「1時間に1本」の枠のほとんどが速達型の「かがやき」になるのであれば、この3駅に停車する新幹線は「1日に数本」しか設定できなくなります。
与党プロジェクトチームは「7月中には結論を」出す見通しのようですが、ほぼ手詰まりになったのではないでしょうか? 金沢開業の盛り上がりを見ていると、福井が焦る気持ちも分からないではないのですが、とにかく「福井先行開業」は無理筋です。その際の80億円とか、さらにシステムに数100億円というカネがあるのであれば、米原方面延伸(まだルートは未決定)のために使うべきでしょう。