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生涯未婚率は職業によってこんなに違う

ニューズウィーク日本版 2015年9月1日 17時0分

 日本では未婚化が進んでいるが、その指標としてよく使われるのが生涯未婚率。文字通り生涯未婚にとどまる者の割合だが、通常は50歳時点の未婚率で代替されている。50歳以降に結婚する人は少ないからだ。

 5歳刻みの官庁統計から計算する場合、40代後半と50代前半の未婚率を平均する。この手法による生涯未婚率は、1950年では1.4%だったが、2010年では15.1%にまで上がっている(総務省『国勢調査』)。東京では20.3%、50歳人口の5人に1人が未婚だ。都市部では、結婚して家庭生活に煩わされたくないという人が多いからだろう。

 実はこの生涯未婚率、職業によって大きく違っている。2012年の『就業構造基本調査』(総務省)のデータをもとに、職業別の生涯未婚率を男女別に計算してみた。<図1>は、横軸に男性、縦軸に女性の生涯未婚率をとった座標上に、54の職業を配置したグラフだ。



 最も右上の音楽家・舞台芸術家の生涯未婚率は、男性が36.0%、女性が50.0%と共に非常に高い。芸術家・デザイナー、著述家・記者・編集者といった芸術・創作系の職業も、生涯未婚率が高くなっている。仕事へのコミットメントの度合いが高く、生活も不規則(不安定)になりがちだからだろう。一方、教員は男女とも生涯未婚率が低い。教員は職場結婚が多い職種でもある。

 斜線より上にあるのは女性の生涯未婚率が男性より高い職業で、芸術職、技術職、事務職が多い。収入が比較的高く、女性が自立した生活を送れる。とくに医師は男女差が大きく、男性が2.8%なのに、女性は35.9%にもなる。高収入に加えて、激務ゆえに家事・育児との両立が困難なためかもしれない。右下は男性の生涯未婚率が高いゾーンだが、少数の例外を除くとサービス職や労務職が多くなっている。

 生涯未婚率の職業差もさることながら、男女でその構造が異なっているのが興味深い。<図1>から察すると、女性の生涯未婚率は年収とプラスの相関関係にあり、男性はその逆になっているとみられる。年収と生涯未婚率はどのような関連にあるのだろうか。<図2>は、正社員男女の年収別の生涯未婚率を出し、折れ線グラフにしたものだ。



 男性では高収入層ほど生涯未婚率が低いが、女性は右上がりのグラフになっていて、年収が1000万を超えると未婚率が一気に4割にまで跳ね上がる。<図2>のグラフのXの字が先程の仮説を証明している。

 いざ結婚となれば、収入、学歴、職業といった現実的な条件が考慮されるのは当然のことだ。男性の場合、家族を養う経済力が求められるが、女性は反対に、あまり稼ぐと敬遠されるのかもしれない。

 女性の場合、「結婚している(夫の扶養下にある)から年収が低い」、「結婚していない(自立している)から年収が高い」という逆の因果関係も考えられる。しかし男性の場合は、収入の多寡が未婚率、つまり結婚できるかどうかに大きく関わっていると考えていいだろう。

「男は仕事、女は家庭」、「男性が一家を養うべし」という性別役割分業観は、昔に比べて薄れているといわれる。世論調査のデータでみても、そのような意識の変化は見てとれる。しかしこうした建前論は別として、統計データからは旧来のジェンダー観がいまだに根強いことが見えてくる。

(資料:総務省『就業構造基本調査(2012年)』)

<筆者の舞田敏彦氏は武蔵野大学講師(教育学)。公式ブログは「データえっせい」>

舞田敏彦

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