民主党予備選ではヒラリー・クリントン候補の支持率がジリジリ下がってきています。「メール・スキャンダル」が長期化する中で、「何か隠している」とか「信用できない」といったイメージが拡散しているからです。
その一方で、支持率を上げているのがバーニー・サンダース候補です。「自称社会主義者」であり、「無所属議員ながら民主党と統一会派を組んでいる」という変わり種の政治家なのですが、来年の年明け早々に党員集会のあるアイオワ州での支持率は、ヒラリー候補42%、サンダース候補24%とかなり接近して来ています。
さらに、同じように来年早々に予備選のあるニューハンプシャー州では、何とサンダース候補42%、ヒラリー候補34%と支持率が逆転しています(いずれも複数調査の平均値)。
では、このバーニー・サンダース候補とは、どんな政治家なのでしょうか? そして、その政策はどんなものなのでしょうか?
この人は、1941年生まれの74歳。出身はニューヨークのブルックリンで、名門シカゴ大学を卒業しています。若いときは、ローカル左翼政党の反戦運動家でしたが、後にバーモント州最大の都市であるバーリントン(州都ではありません)の市長を4期16年、その後は連邦下院議員を8期16年やった後に上院に転じて現在は2期目です。
その政策ですが、
(1)全国の最低賃金を15ドルにする。まず政府が率先して実施。
(2)公立大学の授業料を無料化。
(3)全国一律の官営医療保険制度の創設。
(4)全米で、全労働者の病欠の有給化(家族ケア、長期療養も含む)。
(5)リーマン・ショック再発防止のための、厳格な金融業界への規制。
(6)金権選挙撲滅のための政治資金規制。
(7)徹底した温暖化対策。
(8)不法移民の合法化。同時に国境における「壁」建設には反対。
(9)賃金の男女平等。
という内容で、極めて具体的です。では、実現可能かというと、財源に関しても、全国レベルの合意形成という点でも現実味はありません。ですが、リベラルの言いたいこと「そのものズバリ」を政策として出してきているのは間違いないわけで、そこに支持が集まるわけです。
例えば共和党の側ではトランプ候補が「移民は追放」とか「イラクを再占領」などと言って喝采を浴びているわけですが、サンダースの「最低賃金15ドル」とか「公立大学はタダ」というのも「夢のようなプラン」だが「実行は困難」という点で似通っていると言えます。そして、こうした主張が「受ける」というのは「オバマ政権という中道現実路線」に対する「アンチ」だということもソックリです。
このサンダース候補の主張は、ある意味で「占拠デモ("Occupy Wall Street!")」の流れを継承しているとも言えるわけですが、2011年に始まったこの「占拠デモ」も、2010年の選挙でブームを起こした「茶会」も、いずれも「オバマへのアンチ」として出てきました。その意味で、サンダースの主張というのは「オバマ政権に対する左派の不満」を言語化したものと言っていいでしょう。
実現の可能性に根拠がないこと、他の人が言わないような単純な極論を主張して「スッキリ」させてくれるという点では、右派のトランプ候補、左派のサンダース候補は「双璧」であり、正に左右対称と言っていいと思います。
大統領選挙に関して、最近の共和党は「保守でなくては予備選に勝てないが、保守に過ぎると本選では勝てない」という矛盾を抱えていると言われます。また、民主党の方も「リベラルでなくては予備選に勝てないが、リベラルに過ぎると本選に勝てない」という矛盾を抱えており、例えば1972年の選挙におけるマクガバン候補の惨敗などを考えると、民主党の方が本家とも言えます。
こうした現象は、特に予備選の初期に見られることが多く、今回はまさにそのケースです。では、どうして予備選の初期には「極端な候補」が先行するのでしょうか?
一つには、投票日まで1年以上ある現時点で予備選に熱心になれる人は、ある意味で「政治好き」とか「ニュース中毒(アメリカにはそういう言い方があります)」なわけで、そうした人は右か左のハッキリしたイデオロギーを掲げていることが多いということがあります。要するに、選挙戦の初期段階から積極的に立場を表明する人は、有権者も「極端」ということです。
二つ目には、どんな大統領でも政権末期には現実主義に傾くのは仕方がないところです。ですから、それに不満で、「新しい時代」を待望する心理というのは、自然と左右の極論になっていくのだというメカニズムもあると思われます。
そうだとしても、中道候補が先行して、極端な候補が「後からブームを作ってそのまま逃げ切る」より、最初に極端で非現実的な候補がパッと先行して、やがて本格的な候補が出てくる方が健全な選挙戦と言えるでしょう。その意味では民主党も共和党も、本格候補たちが出揃って巻き返して来る「予備戦第2章」のスタートが待たれます。
その一方で、支持率を上げているのがバーニー・サンダース候補です。「自称社会主義者」であり、「無所属議員ながら民主党と統一会派を組んでいる」という変わり種の政治家なのですが、来年の年明け早々に党員集会のあるアイオワ州での支持率は、ヒラリー候補42%、サンダース候補24%とかなり接近して来ています。
さらに、同じように来年早々に予備選のあるニューハンプシャー州では、何とサンダース候補42%、ヒラリー候補34%と支持率が逆転しています(いずれも複数調査の平均値)。
では、このバーニー・サンダース候補とは、どんな政治家なのでしょうか? そして、その政策はどんなものなのでしょうか?
この人は、1941年生まれの74歳。出身はニューヨークのブルックリンで、名門シカゴ大学を卒業しています。若いときは、ローカル左翼政党の反戦運動家でしたが、後にバーモント州最大の都市であるバーリントン(州都ではありません)の市長を4期16年、その後は連邦下院議員を8期16年やった後に上院に転じて現在は2期目です。
その政策ですが、
(1)全国の最低賃金を15ドルにする。まず政府が率先して実施。
(2)公立大学の授業料を無料化。
(3)全国一律の官営医療保険制度の創設。
(4)全米で、全労働者の病欠の有給化(家族ケア、長期療養も含む)。
(5)リーマン・ショック再発防止のための、厳格な金融業界への規制。
(6)金権選挙撲滅のための政治資金規制。
(7)徹底した温暖化対策。
(8)不法移民の合法化。同時に国境における「壁」建設には反対。
(9)賃金の男女平等。
という内容で、極めて具体的です。では、実現可能かというと、財源に関しても、全国レベルの合意形成という点でも現実味はありません。ですが、リベラルの言いたいこと「そのものズバリ」を政策として出してきているのは間違いないわけで、そこに支持が集まるわけです。
例えば共和党の側ではトランプ候補が「移民は追放」とか「イラクを再占領」などと言って喝采を浴びているわけですが、サンダースの「最低賃金15ドル」とか「公立大学はタダ」というのも「夢のようなプラン」だが「実行は困難」という点で似通っていると言えます。そして、こうした主張が「受ける」というのは「オバマ政権という中道現実路線」に対する「アンチ」だということもソックリです。
このサンダース候補の主張は、ある意味で「占拠デモ("Occupy Wall Street!")」の流れを継承しているとも言えるわけですが、2011年に始まったこの「占拠デモ」も、2010年の選挙でブームを起こした「茶会」も、いずれも「オバマへのアンチ」として出てきました。その意味で、サンダースの主張というのは「オバマ政権に対する左派の不満」を言語化したものと言っていいでしょう。
実現の可能性に根拠がないこと、他の人が言わないような単純な極論を主張して「スッキリ」させてくれるという点では、右派のトランプ候補、左派のサンダース候補は「双璧」であり、正に左右対称と言っていいと思います。
大統領選挙に関して、最近の共和党は「保守でなくては予備選に勝てないが、保守に過ぎると本選では勝てない」という矛盾を抱えていると言われます。また、民主党の方も「リベラルでなくては予備選に勝てないが、リベラルに過ぎると本選に勝てない」という矛盾を抱えており、例えば1972年の選挙におけるマクガバン候補の惨敗などを考えると、民主党の方が本家とも言えます。
こうした現象は、特に予備選の初期に見られることが多く、今回はまさにそのケースです。では、どうして予備選の初期には「極端な候補」が先行するのでしょうか?
一つには、投票日まで1年以上ある現時点で予備選に熱心になれる人は、ある意味で「政治好き」とか「ニュース中毒(アメリカにはそういう言い方があります)」なわけで、そうした人は右か左のハッキリしたイデオロギーを掲げていることが多いということがあります。要するに、選挙戦の初期段階から積極的に立場を表明する人は、有権者も「極端」ということです。
二つ目には、どんな大統領でも政権末期には現実主義に傾くのは仕方がないところです。ですから、それに不満で、「新しい時代」を待望する心理というのは、自然と左右の極論になっていくのだというメカニズムもあると思われます。
そうだとしても、中道候補が先行して、極端な候補が「後からブームを作ってそのまま逃げ切る」より、最初に極端で非現実的な候補がパッと先行して、やがて本格的な候補が出てくる方が健全な選挙戦と言えるでしょう。その意味では民主党も共和党も、本格候補たちが出揃って巻き返して来る「予備戦第2章」のスタートが待たれます。