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NASA火星の大発見にも「陰謀」を疑うアメリカ人

ニューズウィーク日本版 2015年9月30日 18時16分

 火星の表面には今も水が流れている──今週初め、NASA(米航空宇宙局)が世紀の発見を発表するやいなや、さまざまな陰謀論が飛び交った。

 NASAによれば、水が流れた痕跡は既に見つかっていたものの、現在も流れている証拠が示されたのは初めて。

 それに噛みついたのが、有名な保守派のラジオ番組司会者ラッシュ・リンボーだ。自らのラジオ番組で、NASAはデータを改ざんして地球温暖化の嘘を信じ込ませようとしていると非難した。「いかさまだらけだ」とリンボー。「左派の計略のために火星で何かをでっち上げるなんて、すぐにやめさせなければいけない」

 リンボーのウェブサイトには、地球温暖化防止の啓蒙活動でノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元副米大統領の顔と、1996年のSFコメディ映画『マーズ・アタック!』に出てくる火星人の顔を合わせたコラージュ画像まで載せられている。

 NASAの発表が20世紀フォックスの新作映画『オデッセイ』(原題The Martian、意味は火星人)の封切り直前に行われたのはただの偶然なのか、という疑惑もささやかれている。『オデッセイ』は火星に取り残された宇宙飛行士の物語で、マット・デイモンが主役のマーク・ワトニーを演じる(日本は2016年2月公開予定)。映画の製作にも協力したNASAの宣伝としか思えない、というのだ。

"Under certain circumstances, liquid water has been found on Mars" - Jim Green, NASA Planetary Science Director https://t.co/MvErxberG3— NASA (@NASA) 2015, 9月 28


「特定の条件下で火星に液体の水が存在することがわかった」――NASA惑星科学ディレクターのジム・グリーン

 ヤフーニュースの取材にNASAはただの偶然だと否定したが、『オデッセイ』の広報チームはツイッターでNASAの発表を取り上げ、「人類には良いニュース、映画にとっては素晴らしいニュース」とツイートした。

.@NASA Good news for mankind. GREAT news for Watney. #MarsAnnouncement #TheMartian pic.twitter.com/HnY2gZyf1a— The Martian Movie (@MartianMovie) 2015, 9月 28


人類には良いニュース、新作映画『オデッセイ』にとっては素晴らしいニュース


 NASAは大きな秘密を隠していると言うのは、元NASAコンサルタントで2007年の全米ベストセラー『NASA秘録――秘密組織が隠蔽する宇宙の人工遺物』(邦訳・学習研究社)の共著者、リチャード・ホーグランド。火星の水なら自分の研究チームが15年も前に発見していたと言うホーグランドは以前、NASAの画像に地球外文明の痕跡が映っていると本誌に語ったことがある。NASAは地球人のパニックを避けるために、情報を小出しにしているのだという。

 ホーグランドの研究チームはすでに調査を開始した。「(NASAは)情報の出し方が遅すぎる」と、ホーグランドの同僚であるロビン・ファルコフは言う。「本当は事態がどれだけ進んでいるか、わかったものではない」

 アポロの月着陸以来、NASAの大きな発表には陰謀論が付きまとうようになった。火星探査による数々の発見も例外ではない。9月初めにも、火星表面のある画像に「宙に浮くスプーン」が写っていると騒ぎになったばかり(NASAは岩だと否定)。

 ソーシャルメディアに設けられたNASAの科学者が質問に答えるコーナーでも、陰謀を疑う投稿がいくつか取り上げられた。しかし、次の質問にはNASAの科学者は答えなかった。「もし地球外生命体を発見したらNASAはどのように発表するのか」

 答えられない理由でもあったのだろうか──?

マックス・カトナー

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