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「時間がない!」を解消する「自分アポ」の技術

ニューズウィーク日本版 2015年10月31日 10時5分

 産業の空洞化が日本経済の問題としてよく指摘されるが、それ以上に、ビジネスパーソン1人ひとりの「スキルの空洞化」のほうが実は深刻だと、コンサルタントで日本タイムマネジメント普及協会理事長の行本明説氏は言う。

「会議が多すぎる」「会議が長すぎる」......そんな不満を抱いているビジネスパーソンは多いだろう。つい会社のせい、他人のせいにしてしまいがちだが、この会議の問題に関しても、スキルの向上なしには解決しない。行本氏によれば、会議(=他人と共同でやる仕事)を減らす努力だけでなく、「自分ひとりでやる仕事」を上手にこなす工夫が不可欠だ。

 ジョブローテーションから組織のフラット化、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)、ノー残業デーまで、日本にはびこる「間違いだらけのマネジメント」が、現場のスキルを空洞化させていると訴える行本氏。

 行本氏は新刊『ワーク・コントロール 仕事に振りまわされないための[スマートマネジメント]』(CCCメディアハウス)で、データと理論に基づいてその間違いを正し、ホワイトカラーの生産性を劇的に上げる新しいマネジメントモデルを提唱している。ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。

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『ワーク・コントロール
 ――仕事に振りまわされないための[スマートマネジメント]』
 行本明説 著
 CCCメディアハウス


※抜粋第1回:「働きやすい制度」が生産性を下げてしまう理由 はこちら
※抜粋第2回:フレックスタイム制をうまく機能させる方法 はこちら
※抜粋第3回:会議を減らすだけでは生産性が上がらない理由 はこちら

◇ ◇ ◇

「自分へのアポイント」で時間をつくり出す

[ロジック] 「自分ひとりでやる仕事」を予定する

「時間はつくるものだ!」

「忙しい、忙しい」が口癖になっていると、上司や先輩からこうたしなめられることがあります。しかし実際に、「時間をつくる」方法を伝授してくれることはめったにありません。 

「死ぬ気でがんばれ!」「やればできる!」

 たぶん、こうした根性論の域を出ないでしょう。

 そこで、時間をつくる実践的な方法をお伝えします。

 まず、質問です。あなたは、どういう仕事のために時間がほしいですか?

 繰り返し述べているように、「自分ひとりでやる仕事」と「他人と共同でやる仕事」の2つがあるわけですが、どちらの仕事の時間が足りないのでしょうか? 両方でしょうか?

 多くの人は、書類作成などの「自分ひとりでやる仕事」の時間がほしいのだと思います。「他人と共同でやる仕事」─―会議や打ち合わせ、商談――の時間がもっとほしいという人は、相当な多忙人間です。

 ところが、ほとんどの人は「自分ひとりでやる仕事」に対してずいぶん冷淡です。





 自分のスケジュール帳やスケジューラソフトを見てください。そこに記載されているのは、どんな仕事ですか? 

 きっと、会議や打ち合わせ、商談などの「他人と共同でやる仕事」ばかりでしょう。「自分ひとりでやる仕事」は、すっぽり抜け落ちていると思います。

[ノウハウ] いちばん大切な仕事を4週間先まで

 時間をつくりたければ、「自分ひとりでやる仕事」の時間を手帳やスケジューラに記入することです。つまり、他人とのアポイントを記入すると同様に、「自分へのアポイント」をとるのです。時間を創出するには、やりたいと思っている「自分ひとりでやる仕事」をスケジュールにしっかり組み込むこと以外に方法はありません。

 ただし、注意してほしいことがあります。

 それは、「自分ひとりでやる仕事」をすべて記入すると、逆に「仕事」が見えなくなるということです。仮に、すべての仕事をもれなくリストアップしようとすると、どうなるでしょう? 

「報告書と見積書の作成、経費の精算、資料整理、それに......」などと、収拾がつかなくなりませんか?

 そこで、1日のうちでいちばん大事な仕事を1つだけ記入します。これは、1日のプランニングで述べた理屈と同じです。

 たとえば、「企画書作成・×月×日15〜17時」というように、仕事の内容と実施する時間をはっきりさせればいいのです。

 目標としては、4週間先まで「自分ひとりでやる仕事」を手帳やスケジューラに記入するようにしてください。そうすれば、いまより上手に時間を管理し、仕事を処理することができるようになります。

 たとえば、面談の申し入れがあった場合、これまでは深く考えることもなく、手帳やスケジューラソフトの「空欄」にポンポン予定を入れていたと思います。

 しかし、「自分ひとりでやる仕事」があらかじめブッキングされていれば、より効率的に仕事をするために、スケジュール調整を行うようになるはずです。この習慣は、仕事のスキルを確実に向上させます。

[ツール]  時間軸が入った手帳・スケジューラソフト

 この技術をサポートするには、時間軸が明確な手帳やスケジューラソフトが必要不可欠です。また、1日単位だけでなく、1カ月(4週間)単位のスケジュールを把握できるものが望ましいでしょう。当協会では、「マンスリープランニングシート」を提供しています。

 ノウハウとして紹介したように、「1日のうちでいちばん大事な」「自分ひとりでやる仕事」を4週間先まで見通すことができれば、仕事の先見性が確実に向上します。


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