ドイツのトーマス・デメジエール内相は今週、アフガニスタン難民の大半を本国に送還する、と発表した。今年大規模な難民受け入れを表明したドイツだが、ここへ来て難民への対応は厳しくなってきている。
デメジエールは今週行った会見で、アフガニスタンの反政府勢力タリバンが支配したり、戦闘が継続している地域から逃れてきた人、帰国後にタリバンの脅威にさらされる恐れのある人は引き続き難民として扱われるが、それ以外はアフガニスタンに送還する、と語った。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年ヨーロッパには中東やアフリカからは、地中海を越えて56万人以上の難民が押し寄せている。アフガニスタンからの難民はそのうち20%以上を占める。デメジエールは「とても受け入れられない」と語った。
現在、難民申請を却下されたアフガニスタンの難民は、本国での安全が確認できないため送還されずにドイツに留まっている。英紙テレグラフによると、彼らにはドイツでの滞在は認められているものの、法的な権利は与えられず、働くことはできない。
本国にいても安全な「難民」もいる
デメジエールは、新たな人生を求めてドイツにやってきたアフガニスタン「難民」の多くは、一般に安全と見なされている首都カブールの中間層だと言う。彼らは「祖国に残って国の復興を助けるべきだ」と訴えている。
だが紛争地帯の状態を把握するのは難しい。イギリスでは今年4月、難民申請を却下されてアフガニスタンへ送還される56人が乗った飛行機が、離陸寸前で裁判所に止められる騒動もあった。アフガニスタンの難民担当相が、「国土の80%は帰国には危険だ」と証言したためだ。
アフガニスタンと同様、安全な地域と見られているバルカン半島からの難民数万人も、今年中に送還されることになっている。ドイツ政府は難民申請者の母数を減らして難民登録の処理速度を上げたい方針で、デメジエールは「今後数週間で、本国送還と自主帰国の人数は一気に増えるだろう」と予想している。
ドイツ政府が政策転換したのは、ドイツ国民の難民に対する姿勢が変わったからだ。ドイツには今年だけで150万人の難民が押し寄せるといわれ、とても支えきれないと、難民受け入れに積極的だったアンゲラ・メルケル首相に圧力がかかっている。
今週、バイエルン州首相のホルスト・ゼーホーファーはメルケルに対し、難民の受け入れを制限するよう要求した。最近の世論調査では、メルケルの支持率は過去3年で最低のレベルに下がっている。
デメジエールはさらに、隣国オーストリアが難民を夜間にドイツ国境に連れて来ていると非難した。「難民が一切の支給品も与えられず、先の見通しもないまま、夜間にドイツ国境に連れて来られているのを確認した」と、会見で明らかにした。
欧州諸国の間の難民の押し付け合いも激しくなる一方だろう。
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