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【インフォグラフィック】動画の王者ネットフリックスの圧倒的な帯域幅占有率

ニューズウィーク日本版 2015年11月26日 19時45分

 あなたにもおそらく、週末をネットフリックスに奪われてしまった経験が一度はあるだろう。『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のシリーズを一気に観たり、2年前に放映が終わった『ブレイキング・バッド』をもう一度観たり。サスペンスドラマで寝不足になり、つい酒を飲み過ぎる。週末のちょっとしたお祭りだ。

 そう、あなたには問題がある。だが心配は無用だ。あなただけでなく、そんな生活を送っている人が大量にいることをデータが示している。

 2015年現在、動画配信の世界最大手であるネットフリックス(日本上陸は2015年9月)が、北米のインターネット帯域幅の36%以上を占有している。YouTubeやiTunesなど、あとに続く8つの要素をすべて合わせても、この数字には及ばない。調査報告を発表したのは、ネットワーク機器事業を手がけるサンドバイン社。同社はウェブ業界の大手すべてに関する帯域幅の統計を毎年発表している。

 ただし、このデータが表しているのは、固定回線によるダウンストリーム(下り)帯域幅のみだ。つまり、クラウドへのアップロードなどアップストリーム(上り)は勘定に入れていない。さらに、自宅や会社のWi-Fiに焦点を合わせており、4GやLTEなどのモバイルネットワークは対象にしていない。


帯域幅占有率の上位10サービス


 ネットフリックスの映画配信やスポティファイの音楽配信など、ストリーミング・サービスの拡大は数多くの犠牲者を出してきた。ビデオレンタル会社はもちろんのこと、1曲ごと音楽を売るアップルのiTunesストアも打撃を受けた。

 それだけではない。ビットトレントにも大きな影響があった。

P2P型ファイル共有の終焉

 ビットトレントとは、ユーザー同士がサーバーを経由せずにファイルを共有するためのP2P(ピア・トゥ・ピア)プロトコルの一種。多くの使用は合法であるものの、映画やテレビ番組、音楽などのファイルを違法に無料交換しているユーザーも多いことで、悪名を馳せてきた。

 2009年までに、P2P型のファイル共有――その中でビットトレントが最も人気があった――はインターネット帯域幅の約半分を占めるようになり、(主に違法な)ファイル交換の巨大コミュニティーができあがっていた。

 しかし、2015年の現在、ビットトレントは地に伏す寸前にまで追い込まれている。帯域幅の占有率はわずか2.76%なのだ。


ビットトレントの帯域幅占有率の変遷

 月額10ドルかそこらでテレビ番組や映画、音楽をほぼ無制限に楽しめようになったおかげで、北米の消費者たちは、違法な交換から合法で手頃な価格のサービスへと乗り換えたようだ。Hulu(フールー)やスポティファイといったシンプルで使いやすいインターフェイスが利用できる今となっては、大半の人がファイルを共有しなくなったのも当然だろう。

 サンドバイン社のダン・ディースは、ウェブメディア「マッシャブル」の取材にこう答えている。「私の母は、ビットトレントの使い方は知りませんが、ネットフリックスの使い方はちゃんとわかっています」

 ネットフリックスとビットトレントのほかにも、勝者と敗者はいる。YouTubeは依然として短時間の動画ストリーミングでトップを走っているが、フェイスブックは巨大化し続けており、今後は動画配信において、この2社による主導権争いが展開されるだろう。アップルも楽観視できそうだ。iTunesでの個別楽曲のダウンロードは減少しているが、ストリーミング形式の音楽配信サービス、アップルミュージックがその減少を埋め合わせている。

 一方、一般的なウェブ閲覧を表すHTTPの帯域幅占有率は、昨年から50%近く落ち込んでいる。これは、アプリの急増が標準的なウェブページの人気に食い込んでいるためだろう。ますます多くのユーザーが、サファリやクロームなどのブラウザでコンテンツを探して見るのではなく、必要なサービスに直行するようになっている。

 とはいえ、この調査報告の結果は、現実から歪められている可能性がある。先ほど述べたように、サンドバイン社は固定回線のみに着目しており、スマートフォンなどモバイル機器による閲覧を分析していないのだ。モバイルでは、ノーカット版の映画鑑賞よりは、一般的なウェブ閲覧のほうが多い可能性が高い。

 今のところ帯域幅は、少数のプレイヤーたちに占められている。ネットフリックスとYouTubeだけで、北米のオンライン使用の50%以上を占めているのだ。しかし、ビットトレントが残してくれた教訓を忘れてはならない。この世界では、わずか数年でシェアが激変する可能性もあるということだ。






ベン・テイラー

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